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036 私の街に足りない、唯一のもの

もし自分の街の市長さんにばったり会ったら、伝えようと思っていることがある。

「この街はすごく素敵だけど、1つだけ足りないものがあります。
イケてる図書館です。この街にイケてる図書館を作ってください。」

頭の中では何度も練習したけれど、そんな場面は一向にやって来ない。

想像力を掻き立てられる図書館が大好きだ。
広さと静けさに包まれて、あてもなく自分の好きを探し、考えたこともないようなインスピレーションを受けるところ。ワクワクしながらたくさんの本を両手いっぱい抱えて帰る、私にとってショッピングセンターよりも、ずっと魅力的な場所だ。

しかし私の街のそれは、それとは違う。なんというか地味で、本がイキイキしていない。図書館が生まれ変わったら、この街の人はもっと文化的で夢のある人生が送れるかもしれないのに。

そこで私は、電車に乗って隣りの街の図書館まで行くようになったのである。
そこには、1日いても飽きないような無数の本があり、無数の回路がある。
行くごとに新しい本が入ってきていて、司書さんが陳列を変え、
「これ、とっても面白いから読んで!」と本と目があうのだ。

吹き抜けの高い天井は想像力を膨らませてくれる。建築会社がデザインした館内は、シンプルで複雑で、まるで人の脳内を表しているよう。座ってみたくなるような椅子もたくさんあって、毎回どこで読むのかさえもワクワクさせてくれるのだ。

電車に乗って帰ることだし借りる本は最小限にとどめたい。
だけど結局10冊以上お持ち帰りすることになって、「あぁ、今日も司書さんにやられたなぁ」と私は何故か負けた気持ちになって図書館をあとにするのだ。


ここまで書くと、私の図書館愛がやっと伝わるのではないだろうか。

さて、この素敵な隣り街の図書館で私はこれから定期的に父と会うことになりそうだ。父の歴史研究のお手伝いをすることになった。父の夢を手伝わせてもらう。

子どもたちが巣立ったら、ものすごく素敵な図書館の近くに引っ越して老後を迎えるのもいいなぁ。教会のような、神聖な図書館に通いたい。

そうならないためにも、市長さん。
この街にとびきり素敵な図書館を作ってください。


おわり


↑ 私と父とのお話はこちら ☺︎

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