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羨ましかった人が、結婚した

昨日私は、新しいベージュのワンピースに、珍しくヒールのあるパンプスで表参道を歩いた。1つ年下の従姉妹の結婚式だった。

小さい頃とっても仲が良かった私たちは、周りの大人にことあるごとに比べられ続け、いつしか目も合わせられない関係になっていった。でも私はその十数年の溝を埋められたと思えるくらい、〈温かくて確かなもの〉をあの日取り戻すことができた。

18年間保育士として同じ保育園で働き続けてきた彼女。彼女が1年目に担当した0歳児の子たちの写真が余興のスライドで流れ、「わ〜懐かしいな〜」と彼女は目を細めたかと思うと、次の瞬間驚きで声を上げた。現在高校3年生になるその子たちの写真と0歳児の写真がすりかわったからだ。「先生、僕たちは今大学受験に向けて頑張っています!」とメッセージが流れると、彼女はハンカチで顔を覆っていて、私も涙でそれ以上私は彼女を見ることができなかった。

隣りで、彼女の両親はそれを穏やかに見ていた。
その日、私は彼女の両親の隣りの席次だった。

私にとって叔父と叔母にあたる2人には、小さい頃本当にお世話になった。その2人の穏やかな喜びに満ちた顔が、私には何より嬉しくて、新郎新婦の写真よりも私は叔父と叔母の嬉しそうな顔ばかり撮っていた。

そんな叔父と叔母にビールを注いでもらったビールは格別な瞬間だった。
「ゆうちゃんにビールを注ぐなんて不思議だなぁ」と言われたけど、本当にその通り。お互いに20年前で記憶が止まっている。2人は未だに私が小学生くらいに、私は2人が40代くらいで止まっているのだ。「もう私も38歳だよ」と言って笑って2人に注いでもらった。なんだかその時、止まっていた時計の針がやっと動いたように感じた。
そして、叔母に私は「実はね・・・」とずっと思ってきたことを伝えた。

私ね、小さい頃、ずっとおばちゃんたちの親子が羨ましかったの。親子で好きな音楽の話をしたり、一緒に洋服を選びに行ったり。出かける時に、おばちゃんがいつも玄関までお見送りしているのも、羨ましかったよ。

私は小さな子みたいに、おばちゃんに話しかけた。
「そっかぁそうだったんだね」とおばちゃんは言ってくれた。

小さな私は、それが言えたことで、ずっとついていた嘘をやっと打ち明けたかのような、ホッとした気持ちになって少し泣きそうになった。私はずっと「うらやましい」って言えなかったんだ。


「ずっとうらやましかった彼女が、結婚した。」


私は、それを言えるようになったことが、とっても嬉しい。

帰り道、私はヒールで表参道を喜びで、走って帰った。


おわり



彼女と私の話はこちら^^

エッセイ「本音はいつだって温かい」
本音って、まるで子どもみたい。純粋で、弱くて、まっすぐで。でも、何より温かい。言おうとすると、目の奥が熱くなるもの。恥ずかしくなるもの。そんな本音にたどりつけた日の、私の話をお届けします。


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