おばあちゃん、あのね。
おばあちゃんが目覚めなくなって11ヶ月が経った
自宅で倒れてそのまま病院で眠っている
倒れたその日、
親族12人が病院の待合室に走って集まって
おばあちゃんの名前を呼び続けた
あれから交代でお見舞いに行き
眠っているおばあちゃんの足をさすったり、
声をかけたりして
それぞれのおばあちゃんとの時間を過ごしている
私の幼少期、両親は共働きで
とても忙しかったから
習い事の送迎も、平日の夕飯も
お世話になることも多かった
おばあちゃんはいつも
レストランに出てくるみたいなご馳走を作ってくれて
私はいつもそれを「おばあちゃん、あのね」と
今日の出来事を話しながら
夢中になって食べていた
おばあちゃんが台所に立って
どんなものも作ってしまうのが魔法のようで
そのエプロン姿が大好きだった
私には、そんなおばあちゃんちで
幼少期よく過ごしていた従姉妹がいる。
1つ年が違う従姉妹と私は、
顔を合わせては周りの大人に比べられて、
お互いに変に意識するようになってしまった
私は彼女が羨ましかった
私より背が高くて
いつも流行りの服を着ていて
ダンスを習っていて
いつも自由だったから
彼女は私のことが羨ましかった
私は勉強ができて
私はピアノが上手くて
私はお利口だったから
いつしか私たちは
交わることができなくなって 大人になっていった
おばあちゃんは私たちのことをどちらも
とても可愛がってくれたし
比べたりすることもなかった
そんな従姉妹と、11ヶ月前のあの日
数年振りに再会して彼女の車に乗せてもらって
私たちは一緒に泣いた
さらに彼女はその後
私が住んでいる街に引っ越してきた
そして先日、
秋に予定している結婚式に来て欲しいと
招待状を私に持ってきてくれたのだ
その時初めて一緒に食事をして
私たちはお互いに今までのこと
これからのことを話して褒めあった
それはお互いが大人になったからなせる技
であったかもしれないが
これはおばあちゃんが引き寄せてくれた
必然であったと思った
おばあちゃんはきっと
私たちがこうして笑って食事をする姿を
ずっと みたかったはずだ。
だから私はまた、病院へ行って
おばあちゃんにそのことを話しに行く
「おばあちゃん、あのね。」
おわり
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