以前他の投稿サイトで載せてた短編小説?みたいな物

書く事ないなーって思った時に、いろんな人にいくつか単語を頂いて、それを題材に短めの文章を書いてみたやつをこちらにも。
他にも何個か書いたやつがあるので、それもぼちぼち載せていこうかと思う。

【2tトラック】


末筆ながら、貴殿の今後益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。 

もう何度目か数えるのも疲れた。
確かなのは、また仕事を探さなきゃならないという事だけ。
その旨を長年支えてきてくれた彼女に連絡したら「もう待てない」と一言だけメールが来てそれから音信不通になった。
両親とは疾うに絶縁してるから今から報告するのも煩わしい。
「また面接落ちたんだがwつらw」 ネットで呟いても、誰も反応してくれない。
こんなにたくさんの人間が何の変哲も無い自分の事を呟いているのに、俺の呟きにはどうやら興味が無いらしい。

面接に手応えがあったから、今度こそはちゃんとした仕事に就いて、今まで俺を支えてくれた人達に恩返しして。
そんで彼女と一緒になって毎日しっかり働きながら、ささやかな幸せを……もうどうでもいい。
何だこれは。

提出した書類だって何度も何度も書き直して、面接だって今の俺の全てをキチンと伝えられたと思ってる。 やりたい仕事を選ばないで、勤務の条件も範囲を広げて。 いや、もういい。落ちた事実だけが手元にある。 それ以外何も持ち合わせて無い。

血の気が引く。

テレビの音や外の音がどんどん遠退いて自分の心臓だけやけに早く響いて聞こえる。
明日から生きていけるのか。
誰も支えてくれない、一から自己分析をする体力も気力もない。
時間もない。 1秒1秒、絶望に向かって歩みを進めている。
そして立ち上がる。
足が玄関に向かう。
今日そういえば木曜か。
燃えるゴミ出すの忘れてんな。
靴を履いて外に出る。
どこへ向かうでもなく歩く。

家の鍵閉めたっけ?ガスの元栓は?

 家から少し離れた場所にある大きな交差点が見えてくる。 歩行者用の信号機が青く点滅していて、間も無く赤に変わるだろうというところで横断歩道に足を踏み入れる。
信号が赤になると遠くの方からエンジン音とともに2tトラックが猛スピードで走ってくる。
このままあの金属の塊に跳ね飛ばされて、俺という存在を終わらせてしまった方が世界のためなのではないか?
クラクションの音が耳をつんざく。
これでいいんだ。もう何でもいいから早く終わらせてくれ。

その瞬間、誰かに服を引っ張られた気がした。
後ろに尻餅をついて目の前を猛スピードでトラックが通り過ぎる。

服を引っ張った誰かは「俺」だ。
死にたくない、怖い、死にたくない、情けない、死にたくない、笑えてくる。
死ぬ勇気すら俺にはない。 

一つだけ悟る。

世界は、俺に興味がない。


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