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銀行にもできる市場創造

2021年の銀行法改正により、銀行が様々なビジネスを営めるようになりました。いわゆる銀行業高度化等会社いうやつです。

えぇ、つまり銀行による他業界への殴り込み!

日々、他行動向をチェックする本部勤務の現役バンカーの私は知ってます。

確かに・・・
銀行データを使った広告ビジネスや

SMBCデジタルマーケティングより

あるいは農業や電気事業への参入など

日経新聞ネット検索の見出しより

事例はたくさんあります。

・・・しかし!
人様の業界に入る前に、やるべきことがあるんじゃないか!?

というのが、この記事の趣旨。

銀行における市場創造。
まだまだできることあるんじゃないか?
考えてみました。


■市場創造には2種類ある

ゼロイチ型市場創造

市場創造と聞くと、
 ①今までにない商品・サービスをもって
 ②潜在的な顧客ニーズを掘り起こし
 ③新たな需要を創りだす
というバチボコ高難易度な『ゼロイチ型市場創造』をイメージしますよね。


契機起点の市場創造

しかし、市場創造には現実的かつ確実性が高い、もう一つの考え方があります。
それは、
 ①顧客に何らかの契機をもたらすことで
 ②今ある商品・サービスの価値を気づかせ
 ③新たな需要を創りだす
という『契機起点の市場創造』です。

銀行には、この『契機起点の市場創造』の理解者が圧倒的に少ないんです!

ということで、次は実際にあった銀行のしょうもない市場創造のエピソードを紹介しますね。

■市場創造を提案してボコられた話

害獣用のワナを製造するA社を担当してたときのお話。

山林の減少⇒害獣の減少⇒害獣用ワナの需要減少。そんな中、A社から売上げ強化の相談がありました。

こんな話になると、俄然しゃしゃり出てくるのが本部のエリートコンサル部隊の皆様。

まずは、担当者である私の提案。

A社の製品には、高い品質と独自性あり。
あくまで害獣用ワナで売上を立てるべき。
ワナ需要減少という課題の原因は『害獣用ワナを使うハードルの高さ』と判断。
害獣用ワナを使うには免許が必要なので、みんな害獣用ワナの使用を諦めていた。
以上のことから、
 ①わな猟免許取得の教育事業を開始
 ②害獣用ワナを使える人を増やし
 ③A社の製品の購入者を増やす
という作戦を立案。

本部のエリート軍団の第一声がコレ⤵

「何の話してんの?」

「A社の売上げ強化の…」という私の言葉をさえぎり

エリート「A社は製造業だよ。君ね、せいぞうぎょう。分かるー!?」

若かりし私ピエン(涙)

対するエリート軍団の提案がコレ⤵

A社の金属加工技術を他製品に転用し、今(当時)アツいスリープテック市場に参入!A社が特殊加工したスプリング(ばね)を施したベッドを開発!

・・・なぜベッド???

スプリングという若干ニッチなところを攻めているのが何とも絶妙。

お取引先にこんなしょっぱい市場創造を提案するくらいだから、自分の銀行での市場創造もバチクソ難易度高いことをやろうとします。

■金融サービスの市場創造の一例

金融サービスでも、もっと現実的かつ複合的に収益を得られる『契機起点の市場創造』ができるのではないか?

例えば、投資信託を毎月積み立てる積立NISA。

銀行は、家計に余裕がある顧客を他行と奪い合っています。

ここで、契機起点の市場創造するなら『積み立てる金額分だけ節約サポート』
 ①節約指導により家計を改善
 ②月間収支の余裕資金を生み出し
 ③積み立て需要を創造

具体的な節約方法として、

  • 複数ローンの返済負担を減らすため、銀行ローンで一本化

  • 過剰な保険契約を減らすため、保険の見直し

  • スマホ代を減らすため、格安スマホ事業者と提携し販売代理

  • 教育費を抑えるため、地域のコスパ高い塾を紹介(紹介手数料

などを行うことで、幅広くクロスセルが可能になります。

■結局はカッコつけたいだけ

・・・と、まぁ銀行員なら誰でも思いつきそうな積立NISAの契機起点の市場創造

しかし、実際に組織だってやってる銀行はありません。

なぜなら、お客さんに「節約しましょ」なんて言うのはカッコ悪いから。

銀行の企画会議で散々言われる言葉たち。
「それは銀行の仕事じゃない」
「そういうのは他社に任せとけばいい」
「銀行っぽくない」

銀行の仕事って何?
任せるって何目線?
銀行っぽさって何?

銀行の目の前には、いくつも稼げる方法があるのに、自らその可能性を捨てる。
そんな世界観で事業を営むのが銀行スタイルなのです☆

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