名前 #4
以前彼と会った時に制作していた
短編小説がついに出版されたらしい
「依頼されたはいいものの面倒くさい」
と言いながら考えていた姿を見ていたので、
どんなものなのかずっと気になっていた
本屋さんに立ち寄ると
新作コーナーに置かれていて
すぐに目についた
彼には内緒で購入した。
内容は相手に名前を呼ばれることで自分は存在する
というようなフィクション小説だった。
凄く素敵で一瞬で読み終わってしまった。
本当はワクワクで買いにいったが
偶然を装って
「たまたま本屋さんで見つけました」と
写真付きで彼にLINEをした。
「恥ずかしい」と彼から返信がきた。
知っている人が書いた小説を読む感覚が初めてで
読んでいる間なんだかずっとソワソワしていた
これは偶然だが
私は一度も直接彼の名前を呼んであげたことがない
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