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ざっくりフランス北部の旅

2010年3月にフランス一周の旅に出ました。今回は「ざっくり南仏の旅」に続く後編は、ロワール地方、モン・サン・ミシェル、パリという強行軍「ざっくりフランス北部の旅」です。

ロワール地方

アルルからローヌ川沿いをひたすら北上し、リヨンから今度は西に流れるロワール川に沿って、「フランスの庭園」と讃えられるロワール地方を目指す。ずっとブドウ畑か麦畑かなんかの畑が続くのをバスの中から延々眺めていた。

のどかな景色ばっかり。

ブールージュのサン=テチエンヌ大聖堂に立ち寄る。側面の無数の尖塔に飛び梁が架けられ、見事な構成美を見せている。内部の天井はどこまでも高く、荘厳な雰囲気。まさにゴチックという感じで、なかなか感銘を受けた。

サン・テチエンヌ大聖堂の側面

さらにロワール地方を西進し、ロワール古城のひとつ、シュノンソー城に到着。
シュノンソー城。アンリ2世の愛妾ディアーヌ・ド・ポワチエと正室カトリーヌ・ド・メディシスの確執の舞台として知られる。アンリ2世は正室カトリーヌではなく自身より20歳年上のディアーヌを寵愛し、このシュノンソー城を与えたが、アンリ2世が騎馬試合で不慮の死を遂げると、正室カトリーヌはディアーヌをこの城から追い出し、代わって城の主となる。まあことの顛末からしても、血で血を洗うフランスの大内乱ユグノー戦争期に辣腕を振るった摂政カトリーヌ・ド・メディチの印象からしても、どうにもカトリーヌに分が悪い。肖像画も作者の悪意が感じられぬでもない。ディアーヌのかつての寝室に自分の肖像画を掲げたとか、ディアーヌの庭園の反対側にカトリーヌの庭園を造ったとか、どうにも出来すぎな気がするが、実際肖像画が掲げられ、左右の庭園で美を競ってるんだから納得するしかない。

シュノンソー城
シュノンソー城内の部屋

しかしこの居城、橋の上に建てられている。私なら安心して眠ることもできん。石造りの建物に、水の上なんて寒いだろう。あでやかに装飾された壁面のタペストリーや床とベッドの間に置かれた台座も、寒さ対策の意味もあるとか。
あと北に100キロでパリだが、ここで北西部のモン・サン・ミシェルに向かう。

モン・サン・ミシェル

はるばる北西部のモン・サン・ミシェルにやってきた。友人に写真を見せたところがっかりしていたが、当時は島を架ける道路に砂州が堆積してしまって、ほとんど陸続きのようになってしまっていた(2014年に新たな橋がかけられ孤島に戻った)。それでも荘厳な姿には変わりない。

モン・サン・ミシェル

もちろん神聖な修道院なのだが、高い城壁や大砲なんていうのも見ると、相当な要塞でもあったのだろう。

モン・サン・ミシェルの城壁


モン・サン・ミシェルの歩道

南仏とロワール地方の田舎に慣れてしまっていた私は、突然日本人の観光客の群れに巻き込まれて驚いた。なにせ日本人にとってはパリに次ぐ観光地だと、当時のガイドブックには書いてあった。歩道の両脇には切れ目なくお土産屋さんが並んでいる。

大天使ミカエルの像

モン・サン・ミシェル(聖ミカエルの山)なんだから当然大天使ミカエルを崇めている。山頂の修道院に入ると、ミカエルの像があるのだが、フランスの街の守護神は、たいてい聖ミカエルであり、フランスの大聖堂や修道院をめぐっていて、どれだけ大天使ミカエルの像を見たことか。

モン・サン・ミシェルの山頂は瞑想の場になっている

観光客の喧騒を抜け出て、山頂の修道院に入ると、瞑想の場である列柱廊がある。束の間、現代の喧騒を忘れさせてくれた。こんな岩山の頂上なのに、不思議な場所だ。
モン・サン・ミシェルを見るためだけにフランスの北西部を訪れた。最後はパリを残すのみである。

パリ

パリ、永遠の都。セーヌ川の中州・シテ島のように「たゆたえども沈まず」を市標とし、ローマ時代から革命や蜂起、占領など動揺しながらも、あこがれの街として繁栄してきた。

だが個人的には、19世紀にナポレオン3世の統治下で整備されたこの街は、「壮麗なテーマパーク」のように思えた。ルーブル宮、サンジェリゼ通り、凱旋門、エッフェル塔、アンヴァリッド…どれも既視感がある。「はじめてのルーブルはなんてことはなかったわ」とは宇多田ヒカルの歌詞だが、まあ初のパリの印象はそんなものかな。「お前パリの隅々まで行ったのかよ」と言われるかもしれないが、北はモンマルトルの丘、南はソルボンヌ、リュクサンブール公園、モンパルナス墓地、南端のアレジアのホテルまで、2日間歩きに歩いた感想がそれ。

シャンゼリゼ通り
凱旋門

いやでも、ルーブル美術館の規模と作品群には参った。ダヴィンチやミケランジェロ、ダヴィッドやドラクロアなどの超有名な作品に圧倒されていて、ふと振り向けばアングルの『グランド・オダリスク』と、こんな贅沢はあるのかというほどの体験だった。

ルーブル美術館館内
アングル『グランド・オダリスク』

やっぱり、パリのノートルダム大聖堂は素晴らしかったな。旅も終わりだけど、どの都市も、大聖堂や修道院の壮麗さと敬虔を呼び起こす雰囲気には感銘を受けた。パリのノートルダムは2019年に火災に遭ってしまった。残念だけれど、当時の雰囲気のまま再建されたらうれしい。

ノートルダム大聖堂のステンドグラス

おしまい。

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