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発達障害の私が逮捕された話⑥

前回の記事では、裁判所での体験についてお伝えしました。今回は、弁護士との面会やその後の展開について詳しくお話しします。


「126番、面会」


警官に連れられ面会室に入りました。そこには弁護士のSさんとYさんが待っていました。面会室の冷たい雰囲気が、私の緊張感をさらに高めます。


「さて、引き続き勾留ということになったわけですが、これからの動きを決めようと思います」 S弁護士が口を開きました。
その一言一言が、私の未来を左右するように思えてなりませんでした。


「まず、この用紙に謝罪文を書いてください。それを受け取ったのちに、検事に被害者の連絡先を教えてもらい、直接連絡して被害者と会います」


私はこの手続きについて何も知らなかった。説明を聞きながら、胸が締め付けられるような感覚が広がっていきます。
ここでの一つ一つの判断が、私の運命を決めるのだという重みがのしかかってきました。


暴行事件などで被害届が提出される前に示談する話は聞いたことがありましたが、被害届提出後でも示談交渉ができるとは知らなかった。それが今後の展開に大きく影響するというのです。私は無意識に拳を握りしめていました。


「ただし、被害者が連絡先を教えるのを拒否すれば、検事は我々に連絡先を教えてくれません。また、示談が成立しても、起訴するかどうかは検察の判断です。示談が成立しても起訴される場合があります」


ずっと暗闇の中にいた私に、一筋の希望の光が見えた気がしました。その光はかすかで不確かでありながら、私の心に一瞬の安堵をもたらしました。しかし、同時にその光が消える恐れも感じ、不安が押し寄せてきます。私の未来は、まだ闇の中にあるのかもしれない。


この日、弁護士から用紙をもらいましたが、時間が遅かったため謝罪文の作成は翌日に行うことにしました。


翌日は休日で、警察の取り調べもない日。夜にまた弁護士が来ること以外は、静かな一日が訪れる予定でした。


取り調べもない日、丸一日留置所の部屋で過ごしました。そして夜。


「126番、面会」


そう言われ、面会室に行きました。そこには、いつもの弁護士二人が待っていました。


「お母さんと連絡をとりました。菓子折りを購入するなど、もう既に動いていましたよ。」


その瞬間、胸が締め付けられるような感覚に襲われました。自分の行動がどれほど多くの人に迷惑をかけたのか、改めて痛感したのです。



ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。



心の中で何度も繰り返しました。被害者にも、その家族にも、そして自分の家族にも。全ての人に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。


自分がどんな表情をしていたのかはわかりません。ただ、二人の弁護士の眼差しは優しく、まるで子供を見るような目でした。面会室はそんな優しい雰囲気に包まれていました。


その時、初めて感じました。自分が背負っている重荷を少しでも分かち合おうとしてくれる人がいることの有難さを。


「謝罪文を受け取りましたので、これから被害者との接触を試みますね。また明日か明後日、来ます。」


「よろしくお願いします。」


今回担当していただいた弁護士はほぼ毎日来てくださっていました。それが私にとって心の支えでした。不安な日々の中で、彼らはまるで手を引いて引っ張ってくれるような存在でした。


面会室から戻ると、ふと安堵感が広がりました。絶望の淵に立たされていた私にとって、彼らの存在は一筋の希望の光でした。まだ先の見えない暗闇の中にいましたが、その光が道を照らしてくれるように感じました。


その日はなんだかよく眠れた気がします。


次回は、弁護士がどのように示談交渉を進め、その結果がどのように私の運命を左右したのかをお伝えします。

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