私の「売り」は何か 「脇役専門。上手に空気になります」が大ヒット
私は若いころに俳優として活動していた時期があった。
当時は、売れない事を所属事務所のせいにしていた。小さく劣悪な事務所だったから営業力はないと気づいて自分で自分を売り込むことにした。
自分を売る営業担当として、自分という「商品」を売るためにはどうしたら良いのかと考えた。すると見えたのは自分には大した「売り」が無い事に気づいた。
敢えて挙げれば器用なこと。後はカリスマ性もなく、顔が良い訳でもなく、悪役をやるほどアクも強くない。どうでもいい存在なのだ。
これを「強み」に反転してみた。
アクの無さ、目立たなさを逆手にとって「脇役専門。上手に空気になります」と売り出してみた。これが大ヒット。
俳優を志すものの多くは自己顕示欲があり、画面にたくさん映り爪痕を残そうとする。
しかし、制作サイドからすると邪魔でしかたない。
ミステリードラマで、ただの通行人なのに真犯人みたいな芝居をされては困るというもの。
それを完全に気配を消し、背景に徹することができる俳優は重宝されるものです。
また作品全体を視ることで、自身のポジションであるとか、何を求められているのかを知ることでスタッフとしての依頼も多くあり「スタッフも出来て、ちょこちょこ出演もできる俳優」は人気「商品」となります。
また目立たないことで、ひとりで何役もすることが出来、コスト削減にも貢献。
こうしてクレジットに名前も出ないけど、俳優業で暮らしていけるくらいの収入はありました。これは当時の事務所の言いなりでは無理だったと思う。
自分を視て、チームを視て、会社全体を視ることのメリットはかなりある。
それを理解していただく努力を惜しむことは、宝の入った袋に穴をあけるのと変わらないと思える。