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ネグレクトが子どもに与える影響 〜アカゲザルの子育ての実験〜

アカゲザルの子育ての実験のお話です。

これは心理学者のハリー・ハーロットいう人の実験です。
1950年代に米国のウィスコンシン大学で行われた実験だそうです。

実験の目的は孤立や別離、ネグレクトが子どもに与える影響ですね。
ネグレクトっていうのは子どもを無視することですよね。子どもに関わらないっていう。
それが子どもに与える影響を調査したい。
これは人間でやることができないので、アカゲザルで行ったわけですね。

結果は、
愛着の形成が子どもの成長や発達において、命に関わるほど重要な問題であることが分かりました。

アカゲザルの子どもは母親がいないと、ほとんど育たないで死んじゃうんです。
いくらミルクをあげたりしても、母親がいないと死んでしまうそうです。
しかし母猿の代わりに猿の人形を与えると、子猿は人形に抱きついて、どうにか育つことができるんだそうです。
抱っこしてつかまれる存在が生存のために栄養と同じくらい必要だってことが分かったんですね。

さらにこの実験の内容を説明しますと、実験では柔らかい布で出来た人形、ソフトマザーと名付けました。
それからから固い針金で出来た人形、ハードマザーです。
それを両方つくったんですね。
どちらにも子猿はつかまれるようにしたんですけれども、そしてまたハードマザーにはミルクが飲めるように哺乳装置を取り付けたにもかかわらず、子ザルが圧倒的に長い時間を過ごしたのは、ソフトマザーの方だったんです。

小猿は柔らかい感触を持った、居心地の良いスキンシップを必要としていた。
お母さんに抱かれている、そういう感触が子猿を死から救っていくということがわかったんです。

実はこの実験、散々非難されましたから、二度と行われていませんけれども、こういうことなんですね。

さらに、母猿に育てられなかった子猿は、なんとかミルクを飲んで成長したんですけれども、大人になってから性的な営みでつまずいたり、子ザルが生まれても育てようとしないことも分かった。

母親による養育は、単に心理的に止まらないで、生理的な営みでも子どもの発達に関わっていて、それが欠けることは社会生活や子育てに必要な能力の発達を不十分なものにしてしまうことがわかったんです。

これはある程度人間にも言えるかなっていうふうに思います。

これは大変な実験でしたけれども、私たちに多くの示唆を教えてくれています。

(2020年12月講演会より#3)


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