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外遊びが楽しくて、なかなか家に入らない1歳半の子

このお話は、あるお母さんが私に知らせてくれた、体験談です。

ここでの細かい状況の説明と、その時お母さんがどんなふうに思ったかとか、どういうふうにしたら解決したか、皆さんにも参考になるかなと思って、本人の了解を得て、ここに紹介したいと思います。

"ある日、1歳半の息子とお友達のお母さんとお子さんたちと一緒にお買い物に行って、帰りはそのお友達の車で、家まで送ってもらいました。

そのまま降りてバイバイするはずだったのですが、そのお友達の小学生の子も車から降りて、一緒に鬼ごっこをはじめちゃったんです。
普段もよく遊んでる仲で、鬼ごっこして遊ぶのがすごく大好きで。
そしたら、その1歳半の息子が大興奮しちゃったんです。
で、走り回って走り回って止まらない。それで小学校のお兄ちゃんも一生懸命追いかけて楽しく遊んだんです。時間にすると5分くらいなんですが。"

で、その喜んで遊んでる姿を見てお母さんが思ったのは、

"今日は家の中でちょっと遊んだだけで、外にいる間はベビーカーに乗ったり、お買い物カートに乗ったり、車に乗ったりした時間がとても長くて、自分の足と体を使って遊ぶってことがなかったな"

って、気がついたと。
遊びたい気持ちがすごくわかって、やっと遊べるって。
それが分かって嬉しかったんだな、って思いました、っていうね。

この気づきが、すごく大事ですね。

"5分ほどはしゃいで、何とかその友達の家族とはバイバイできたんだけれども、その後も、まだ家の中に入りたくないって外遊びが終わらないんです。
「いやだ。家に入らない。」
だんだんも寒くなってきているし、暗くなってきている。
玄関の前で「寒いから家に入ろうよ」「お家で遊ぼう」「明日また外で遊ぼう」って言い続けたんだけど、やっぱり家に入らない。

で、家から出て来たパパが「あと1分ルール」って言って、あと1分て約束したんだけど、子どもは言うこと聞かない。
私は「早く夕飯を作らなきゃいけないのに」と頭をよぎって、なんとか家に入ってもらおうと思って、あの手この手をやりました。

例えば、ドアの鍵が大好きだから開け閉めして遊ぼうとか、玄関のホウキが大好きだからホウキで一緒にお掃除しようとか、お家で絵本を読もうとか、台所の鍋で遊ぼうとか・・。
色々誘っても聞こえていない様子で、このやりとりが10分位続きました。"

お母さんは頑張りましたね。

"そうこうしているうちに、庭の方に走り出した息子を追いかけて行ったら、地面に敷き詰めてある石で、石遊びが始まって、私の手に小さな石を何回も載せて、山盛りになったところをジャーっとひっくり返す。

それを、何度も何度も繰り返しているうちに、防犯灯も消えて、目の前にいる子どもの顔すら見え難いほどに真っ暗になっちゃった。
それでも本人は楽しんでジャーってやってる。

しばらくして
「寒いね。抱っこしてお家に入る?」って聞いたら抱きついてきた。
私は立ち上がって家に入っても抵抗しない。
「ああ、満足したんだな。」

さっきまで「夕飯をつくらなくちゃ」っと頭がいっぱいになっていたんだけれども、私は一緒に石で遊んで楽しかったし、ご飯はこれから作ればいいんじゃないかなって、自分でも気がつき。
おそらく時間にして10分ぐらい。

この後、お家に入って2人で手を洗って夕飯を作り、その間パパが子ども見ていてくれたので、いつもより少し遅めの夕食を楽しみました。"

って言うんですね。

このお母さんは今、親子育にも参加してくださってる方なんですけど、随分努力してますよね。
お母さんもいろいろ自分でも迷い、それから、イライラしてくる自分の気持ちもしっかりここに表現されていて。
でも、お母さんは、結局は子どもに付き合って、子どもが満足して自分でやめるって言う時まで付き合えたのね。
これ、すごいですね。
なかなかこれが難しい。

でも、そこをお母さんがやれたら、子どもは自分でやめるという自分の選択が出来たので、この子は伸びていくと思いますよ。

このあと、このお母さんの感想の中で、

"叱らないとか見守るって、こういうことなんだってその時思ったけれども、それをやり続けるっていうのは、とても簡単ではないですね。"

と言っています。
そして"この時のパパの登場は、とても重要だと実感しました"って。

お母さん1人じゃ、本当にすべて、あれもこれもやらなきゃいけないから、だんだんイライラした気持ちが募ってきちゃうね。
そこに、パパや家族や友達や誰か、おじいちゃんおばあちゃんでもいいですね、そういう人が間に入ると、お母さんが救われるんですね。
それがすごく良い体験になっています。

子どもにどう伝えるかって、例えば、お母さんがイライラしていることに気づけても、そんな自分から抜けだせないまま、子どもに伝えると怒るってことになる。
イライラしながら子どもに何か言わなくてはいけないとき、感情の方が伝わってしまって、怒るってことになりがちですね。

相手が大人なら、一旦距離を置いて、少し時間が経ってから伝えるんだけれども、相手が子どもの場合は、そんな余裕がなくなっちゃう。
もう四六時中いるってこともあるでしょうしね。
ずっと子どもたちと付き合ってますので、一旦距離を置くということが難しいという場合もあるわよね。

でも、このお母さんは、そんな自分から抜け出すための心がけとして、

"今私は、この子と信頼関係を築いているんだと呟きます"

って。
それを呟くと、ちょっとイライラした気持ちが収まるとか。

感情的に口走っちゃった後には、必ず後悔する。
だって、子どもは嬉しい顔をしないものね、叱られてね。
あの悲しい顔をしたり、寂しい顔をしていると、それを見ただけで、しまったと思うんですね。

で、

"パパが協力してくれるっていう風になったときに、そのイライラのモードから抜け出せる、これが自分にとってはすごく助かったな"

"こうやってパパが手伝ってくれる時はいいけれども、1人で頑張ってるということを考えると、本当に大変だな、泣けちゃいます"

って感想を書いてくださいました。
ありがとうございます。

子どもはとにかく、楽しくて遊びたくて、それが子どもの世界なので。
遊ぶ楽しさを知った子どもの姿ですよね。これがね。
だけど大人は、大人の都合の方にどうしても引っ張ってしまいがち、子どもの遊びを止めてしまいがち。

そうするとあとで、どんなことが起きてくるかなんですよ。
その場はとにかく泣いて収まったとしても。

子どもが、もう嫌だ嫌だって言いながら、怒ってそこでバタバタして、家の中に連れ込まれてバタバタして。
でもちょっとすれば、ほとぼりが冷めて、まぁそのまま静かになっちゃうところがあると思いますけれども、それを積み重ねていくと、後々どうなっちゃうかっていうことなんですね。

(2020年11月講演会より#3)


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