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一生涯を決定づける、乳幼児期の愛着関係とは

愛着関係とは、乳幼児が特定の養育者との間に形成する情緒的な絆のことです。
 
これは乳幼児が何か不安や怖いと感じた時に、迷わず親の懐に飛び込んでいける関係ですね。
これが赤ちゃんの時から形成されます。
 
お母さんは赤ちゃんに一所懸命に関わって、大事に育てようと思っていらっしゃる。
でも赤ちゃんっていうのは一日中つきあわなきゃいけないよね。24時間だよ。その大変さを育てている人は分かるわよね。だって気が抜けないもの。
 
そういう大変な状況のときに、この子に愛着関係を伝えるということ、いっぱい話しかけたり優しい言葉をかけたり、なにか求めて泣いたりするときは抱っこするとか、そういう関係を作ること。
子どもが親の後を追ったり、求めたり泣いたり探し求めたら、すごく愛着を求めているんです。
そんな時は抱っこや頬ずりしたり、子どもの思いを読み取って寄り添うなどして、子どもが安心して嬉しくなる愛着関係を形成することです。
 
この間、ある事例ですけども。
下の子の赤ちゃんね、まだ9ヶ月ぐらい。ちょっと座れるようにはなってますけど、お風呂から上がって、上にこれから3歳になろうとするお姉ちゃんがいる。
2人をお風呂に入れたお母さんが、赤ちゃんを先に出して、そこに座らせておいて、次にお姉ちゃんがタオルで体を拭きながら外へ出てきて。お母さんはまだお風呂場にいたんですね。
お姉ちゃんが「ママ」って呼んだらしいんですよ。お母さんはすぐに出て行けないので、「ちょっと待って」って言ってる間に、お姉ちゃんが赤ちゃんをボーンと突き飛ばしたんです。よくありますよね。
 
そうしたら、お母さんが「何するの、赤ちゃんをつき飛ばすなんて。何やっているのあなたは!」と言って、お母さんがその子を突き飛ばしてしまったんですよ。カーッとなっちゃってね。
お母さんもね、2人も育てていると本当に余裕がない。もう目一杯。夕方お風呂に入る頃には、お母さんはもうクタクタ。子どももおなかすいていると思うと・・・・。
 
そのお母さんから相談を受けたときに、私が言ったのは、
上の子が突き飛ばす気持ちになっているのは、赤ちゃんとお母さんとは常に一緒にいる、抱っこされているのに、今まで抱っこされていた自分の席がないわけです。下が生まれると。
 
だから上の子は、「お母さん、私のことをもっと見つめて。抱っこして」って気持ちがいっぱいあるわけ。だからこの赤ちゃんが憎らしくなる。そういう感情もありますよね。
 
まあ、私はその場所にいないから、もっといろんな状況があるかもしれないけれども、そういうことが考えられるとすると、それは上の子は愛着関係を求めているんですよ。
だから私がよく言うのは、赤ちゃんを抱えているお母さんは、オッパイあげたり、おむつ換えたり、抱っこしないと寝ないとか、色々あって赤ちゃんを抱っこしている時間が多いでしょ。それを見ている上の子は、寂しいですよね。
 
だって、さっきの理論で言えば外在ですからね。外側に置かれちゃってるんですから、寂しいですよ。
だから、例えば赤ちゃんが泣いたときも、上の子を先に対応する。
「赤ちゃんが泣きだしちゃったけど、 一緒に行ってくれる?」とか「おむつ替えなきゃいけないけど、持ってきてくれるかなー」とか、そういうお母さんの期待を子どもに与えながら、子どもが持って来てくれたら、「ありがとう、助かったわ」って言えるでしょ。上の子は嬉しくなるよね。人の役に立って、褒められて。
 
そういう関係を作ることで、この愛着関係っていうのをしっかりと育てていかなきゃいけないんだけど、これがなかなか難しい。
 
愛着関係っていうのは、子どもの発達に合わせて、人生の間、ずーっと一生続く大事なことなんです。この愛着関係が育ってないと、大人になってから大変なんです。
 
子どもの時代もそうですけども、自分は人に愛されて、この人のそばにいれば大丈夫、お母さんに育てられなかった人もいますが、「この人の傍にいれば私は大丈夫」って思った子どもはその関係で育ちます。
 
ねむの木学園っていう、宮城まり子さんが、自分の私財を擲って肢体不自由で知的障害、そして普通の家庭で育てられなかった、そういう何重もの障害をもっている子どもたちのために施設を作って、その子たちを育てました。
 
まり子お母さんは必死で50人の子どもたちの世話をしました。
一人一人の心に届くような、このまり子さんの努力に、みんなも、まりこお母さん、まりこお母さんという風にして、本当の自分のお母さんじゃないですが「大事にしてくれる」という愛着関係が育ち、本当に子どもたちは心が安定して、素晴らしい絵を書きました。
その絵の芸術性は、多くの人に評価されています。
多くの子どもたちが、何十人もの子どもたちが、ねむの木学園ではそういう風にしましたが、この愛着関係が、その後の人生に大きく影響するということがわかるとおもいます。
 
愛着関係は、子どもの発達に合わせて対象が変化してゆきます。
最初は身近な大人との関係でしかありませんが、学童期には友人関係となり、親じゃなくなります。
その先は思春期から大人にかけては恋人関係ができてくるでしょ。それから夫婦関係に変わってきますよ。一生涯そういうふうに愛着関係がしっかりあるということが、その人の人生の土台をつくって、支えているんですよ。
 
この乳幼児期に最初の愛着関係が育つのですから、この時期が本当に大事なのですよ。
 
愛着関係が形成されなかった人は、人間関係がうまくいきません。
人と付き合うのが嫌だとか、引きこもったりしてしまいます。
今、日本には引きこもりが150万人くらいいますが、愛着関係の形成不全の結果だと、私は思います。

(2020年2月目白講演会より#4)

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