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素材の味を活かすことと、出汁を効かせることは必ずしも同じではないと言う話

これは個人的な見解なので、異論は認めます。

家庭料理において、「素材の味を活かす」ことと「出汁を効かせる」ことは、必ずしも同じではないと思うのです。

なぜそんなことを言うかと言うと、昔々息子がまだ乳児で、そろそろ離乳食かなと言うタイミングで、区の離乳食教室に参加した時のことです。
管理栄養士の先生に

赤ちゃんの舌は敏感なので、調味料などの濃い味ではなく出汁を効かせて素材の味を活かした離乳食を食べさせて下さい

と(大筋で)言われたんです。

当時は食育の勉強もしていなかったし、食に関して特に知識も無かったので「あぁ、そうか、出汁が大事なのね」と先生に言われた事を後生大事に守って、睡眠不足でも体調不良でも「離乳食には鰹節と昆布で出汁を取らなきゃ…」と半ば強制的にくる日もくる日も出汁を引いていました。
(もちろん小分け冷凍なども活用していました)

出汁を「効かせて」素材の味を「活かす」

この事に疑問を持ち始めたのは、離乳食から幼児食にステップアップしようかと言う頃です。

離乳食に関しては、常に「出汁」「だし」「ダシ」「出汁で煮る」「だしでのばす」「出汁で」とうるさかった育児雑誌や育児サイトが、幼児食になると急にケチャップだのカレーだのバターだのクリームだのと、突然洋食づいて来たのです。

確かに内臓機能が発達して油分や塩分を摂取した時の負担が少しずつ減ってきている頃だとは思うんですが、それにしても「え、今までの出汁使えプレッシャーはなんだったの?」となりました。

それから、紆余曲折あって食育インストラクターの勉強をする中で、出汁について調べていると出汁って本当に素晴らしいなと思うのと同時に、「鰹節と昆布の出汁」はハレのものであって、ケの食事には必要では無いと考えるようになりました。

また、出汁について調べている間に「出汁は料理屋が素材の良し悪しに(あまり)左右されずに、ある程度一定の品質を保つためのベースとして発展してきた」との説(諸説あり)を見たのですが、私にはその説がストンと腑に落ちたのです。

自然の素材、特に野菜や果物や魚は同じ生産者さんのものでも、1つとして全く同じものはありません。大きさも違えば、甘味やうま味の量も少しずつ違います。その素材の差を埋めるためにお店では鰹節と昆布のあわせ出汁を使って素材の味を補ったのでしょう。

…と言うことは。

素材の本来の味を活かすには、むしろ出汁でうま味を補ったりマスキングせず、それぞれの素材の持つうま味や甘味や酸味や苦味を感じられる調理方法や調味料の組合せをするべきなのでは?と思い至った次第です。

そんな折に浜内千波さんの『だしのいらない「うま味」レシピ』と言う本と出会いました。

この本では、野菜に含まれる「グルタミン酸」のうま味とお肉や魚に含まれる「イノシン酸」のうま味を組み合わせることで、だしを使わずにシンプルで美味しいお料理が作れると紹介されています。

当時、毎日毎食のケの食事に「鰹節と昆布の出汁」を使う事に疑問を抱いてはいたものの、ではだしを使わずにどうしたら良いのかわからずにいたのですが、この本と出会って霧が晴れるような気持ちになりました。

そして、その頃、たまたま見ていたTV番組で分とく山の野崎洋光さんが豚汁の作り方をご紹介しており、「豚汁に出汁は使いません。素材の味が十分入っているので、美味しくなり過ぎちゃうんです」とおっしゃっていて

「やっぱり鰹節と昆布の出汁は毎日のケの食事に無理に使わなくてもいいんだ!家庭料理は美味し過ぎなくていいんだ!」

そう思うと、何だか肩の力が抜けて、気持ちが軽くなりました。

それからはレシピを作る時にも、その素材が持つそのものの味をなるべく活かすように、過度にうま味を足し過ぎないようシンプルで単純な配合のレシピにするよう心がけています。

Twitterやnoteで公開しているレシピが、どれも材料が少なく、シンプルな配合になっているのはこのためです。

いくら美味しいレシピだとしても、少なくとも自分が、無理なく毎日作れるレシピでないと、人に伝えたり勧める価値はないと思うのです。


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