おかえりなさい

つい先月まで一人の時間はほとんどなかった。ほぼ毎日彼女と会ってご飯に行ったり遊んだりしていた。

しかし順調に進んだかに見えていた三ヵ月目、ついにガタがきた。それは僕のほうだった。クリスマスの二日のホテルやデート更にご飯代を全部出し、1月の下旬も彼女は誕生日なので同じことをした。

結果は当たり前だが金欠。

2月は1万以内でやりくりしている。彼女は二月中にも旅行やスノボに行きたいと言っていたが金欠だというと、「いつも金ないじゃん。」と言われた。僕は怒りというよりもそれなりに落ち込んだ。たしかに向こうはお金は全然出すと言ってくれたが彼女ができて調子に乗って結果自己破産したのは僕だ（男性諸君はくれぐれも気を付けてほしい）。

しかしそれでも僕は一生懸命バイトして彼女に使ったことをなんだか忘れられたような気がして悲しかった。よくよくそのあと聞くと僕と彼女の金銭感覚はだいぶ違うことに気づいた。彼女はバイト代に毎月2万円も両親からお小遣いをもらっていて旅行を行くときもプラスでその都度お金をもらっていた。そりゃ二か月で3回旅行に行ってもノーダメージなわけである。

なかなか難しい問題なので彼女にはゆっくりと理解してもらわなければならない。そんなこともあり最近は家にいることが増えた。すると前よりも考えることが色んな方向にとても増えた、いや戻ったというべきなのだろうか。

前までは色んなところに気が向いていた。こうすると生意気に見えてしまうのではないか、今こうしたらウザがられてしまうのではないか、あいつのあの所作が鼻につくなどとばかり毎日考えていた。しかし彼女ができてからそれはかなり減った。なぜならそういった恨みつらみ、妬み嫉みや自意識過剰などを簡単に超えてしまうほどの幸福感に満ち溢れていたからだった。毎日が目まいがするほど楽しかったからだ。

人は結婚すると丸くなるとか付き合うと人が変わるといわれる。確かに守るべきものがあるから自分の好き勝手にできないから変わるというのは確かにあるかもしれない。実際毎週聞いてるオードリーのラジオでもパーソナリティーの二人は結婚して危ない橋をわたるようなハラハラするような中学生感、部室感は消えたので僕もてっきり乗り越えたものだと思ってた。

僕も地元の友達から「付き合い始めてから変わった、人間になってきてる」なんて冗談交じりではありつつも言われた。でもそれは違った。一人の時間が増えるとまたあいつの金持ちアピールがどうのこうのなんて考えている。

根本としては何も変わっちゃいなかった。それほどに僕をゆがめた高校生活は本当に影響を及ぼしていることにも驚きでもあるが。

でもその中で少し安心している僕もいた。なぜならたりない僕も絶対にこの先必要になるはずだから。すごく周りの目ばかりを気にして、ああゆう言葉が、ああゆう視線などの所作の一つ一つに気を配っていた僕だからこそ似たような人がいたときに寄り添ってあげたい。考え方なんて違うから本当はどう思っているのかわからないけど、少しでも楽になってくれれば万々歳だ。だから変わることは確かにいいことだけど変わる前の自分は絶対になかったことになんかしてはいけない。

さあ、お金ないって失望されたくないからバイトしなくちゃな。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　     2020.2.15