「文」と「文章」について

今回は、文章についてのお話です。国語の授業では小学校低学年でも文章を読むことが求められますが、英語の授業では文を単位とすることが多く、文章を一つの単位と意識することは必ずしも多いとはいえません。

まず確認しておきたいのは、文をただ並べても文章にはならないということです。文章には文章としてのまとまりが必要です。文章としてのまとまりを支えているのは、文と文とのつながりです。文章としてのまとまりとは、文章全体で首尾一貫した展開になっていることで、「統括性」といいます。文と文とのつながりを「結束性」といいます。英語などの西洋の文章作法では、パラグラフという単位での統括性とパラグラフ相互の結束性が重視されます。これは読み手への配慮の現れとされています。日本語の文章作法では結束性はそれなりに意識されますが、統括性は必ずしもパラグラフ単位では保たれません。

文章を読み書くという観点から考えてみましょう。日本語にも段落という単位はありますが、形式段落と意味段落の2種類があるとされているところからわかるように、一定の内容の区切りによって改行されているわけではありません。実際、日本語の読み手も段落を理解の際の単位とは考えていないようです。ところが英語では上で述べたようにパラグラフを内容的なまとまりを持った単位としています。つまり、英語ではパラグラフは意味段落として機能しているのです。日本語を母語として日本語で生活している私たちが英語による読み書きを学ぶ時には、英語のこのパラグラフの仕組みに習熟し、パラグラフを理解したり表現するようにならなければなりません。

日本語に統括性を持った単位としてパラグラフを形成している文章がないのかと言われれば、決してそんなことはありません。学術論文はパラグラフを単位としていますし、そこまで高度な学術性はなくても、最近の説明文や論説文など、論理的な展開が必要な文章ではパラグラフを持つ文章が少なくありません。このため、英語のパラグラフに触れる前に日本語でパラグラフを学ぶということもことばの学びのなかに組み込みたいところです。200字くらいでひとつのパラグラフをまとめる作文から始めていくのです。現行の国語の学習指導要領では創作も重視されています。物語文の創作は語彙力を高め、ことばの働きを理解するうえで効果的であり、作家志望でない一般の人も経験すべき学習活動です。しかし、社会生活で求められるのは論理的で明快な文章ですから、こうした文章の理解・表現のためにはパラグラフの学習は重要であり、これが英語の文章理解・文章表現の基盤となるのです。

パラグラフという単位の重要性から見えてくることは、文は断片に過ぎないということです。英語の文法を学び始めた時点では、ひとまず文を単位とした文レベルの学習を進めていくわけですが、その先には文章レベルの学習があるわけです。そして、英語の文レベルの学習と並行して、上で述べた日本語によるパラグラフの学習を進めていけばより効果的な学びが得られるのです。

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