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「音読」について

声に出して学ぶ

今回は「声出し」についてのお話です。現在の受験英語で軽視されがちなのが、和文英訳と今回の音声による学習です。理由は「そんなの入試に出ないから」です。これは妙な話で、スポーツであれば実戦練習以外の練習やトレーニングをしないことがありえないことに気づくのに、受験勉強になると実戦練習を唯一絶対のものと考える傾向があります。

訳読と音読

今回は英語に話を絞ります。外国語としての英語を声に出すことは学習上いくつかの利点があります。そのうちの最大のものは英語を語順に従って読む習慣が身につくことです。日本の英文読解の学習は訳読から始まりました。前にも述べたとおりで訳読そのものは否定すべきではありません。しかし、「訳読不可分」から「訳読分離」へと、取り組み方を見直す必要があります。

日本の英文訳読は漢文訓読の伝統を踏まえたものでした。昭和の時代まではbe about to doを漢文の「将+V」と結びつけて覚えている人も多く、「まさニVセントス」という読み方を、英文を訳す時にも流用していたようです。さすがに現代では返り点を流用した「英文訓読」は姿を消しましたが、江戸時代末期からのこの習慣はいまだに完全に抜けきれていない状況にあり、英文理解の際に返り読みが生じてしまうことがよくあるようです。

ここで重要なことは、「読むこと」と「訳すこと」を明確に区別することです。読む時にはできる限り語順に即して読み進めていくべきです(実際には複雑な構造の文では、やむを得ず後戻りする場合もあります)。読んだあとでどのような日本語で表現したらよいかを考えるできで、この段階で日本語の語順を意識する、という段階に至ることになります。「読むこと」と「訳すこと」との区別をせずに、いきなりどこから訳そうかと目をキョロキョロさせている人もいます。このやりかたが英語を速く正確に読むときの制約になってしまうのです。

「読むこと」と「訳すこと」との区別を体感的に実践するために、声に出して音読することで語順に沿わざるをえない状況にもっていきます。音読に慣れてくると1分間に80語くらいのスピードで読めるところまでは比較的簡単にいけます。黙読であってもこのスピードで読め理解できれば、大学入試で時間が足りないということはまずありません。いわゆる「速読」とはこの「音読並みのスピード」を超えた読みを指します。

リズムに合わせて声出すモード

音読と言っても棒読みでは意味がありません。リズムに乗せて読まなければなりません。これはまず文法構造を意識し、その分析ができていなければなりません。文法構造の分析に基づいて音読することは、括弧や矢印やS, V, Oなどの記号によって行っていた分析を自動化させることにつながります。つまり、音読により文法構造の分析が早くできるようになり、やがて記号を書き込まなくても読めるようになっていくのです。これが意味の分析にも及ぶと音読がさらにメリハリのあるものになります。逆に言えば、単調な音読をメリハリのある音読に深化させるには、文章の深い理解が求められるのです。これが表現読みと呼ばれる方法です。表現読みは国語学習で従来から用いられているものですが、これは外国語学習にこそ必要だと言えます。ふだん日常生活で触れることのない言語の音声だからこそ学習者自ら声の出し方に注意を払うことが重要です。これによって文を構文、意味、音韻の三位一体で記憶に取り込むことが可能になります。これが黙読のときにも文章理解に役立つのです。

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