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FAQ:辞書について

Q:よく「電子辞書より紙の辞書のほうがいい」と聞きますが本当ですか?

A:まず、人の話の聞き方が断片的すぎます。あいまいな話を聞いたときには質問することも大切です。というのも、もし、この質問で引用したような問いに答えるとしたら「ノー」と答えざるを得ません。現在の電子辞書は紙の辞書と同一の内容だからです。

紙の辞書の長所は電源が不要であることです。短所は字が小さいことと、重いことです。電子辞書の長所は複数の辞書を持ち運べることです。短所は値段が高いことと、操作が難しいことです。

紙の辞書はABC順に見出し語が配列され、印刷されているので、アルファベットさえ覚えれば、使えるようになります。これに対して、電子辞書はメーカーや機種によって少しずつ操作方法が違うため、操作方法を覚えないと性能を十二分に生かすことができません。このため、紙の辞書では教室で一斉に「引き方」を学ぶことができますが、電子辞書ではそうもいかないことがあります。デジタルネイティブな生徒たちと比べて、昭和生まれの先生の中にはいわゆる「機械音痴」の方も少なからずいらっしゃいます。

「紙の辞書がいい」という言説の根源には上の段落に示した事実があります。自分でも使いこなせず、機械音痴の先生にも使い方を教えてもらえないような電子辞書ならば、使わないほうがマシというわけです。

では、電子辞書は無用の長物なのでしょうか?これも「ノー」です。電子辞書には、複数の辞書を一括検索できること、用例検索ができること、単語の音声が再生できることの3つのメリットがあります。複数の辞書を引き比べることによる学習効果は大きく、語法を多くの用例の観察から学ぶことも意義のあることです。発音記号が読めなくても発音が分かることも学習効率を高めてくれます。(発音記号は読めないよりも読める方が圧倒的にいいですが、この話はまた改めて)

電子辞書はコンテンツの総額で比べれば紙の辞書よりも安いと思います。電源は乾電池しか使えない機種でもエネループなどを使えばそれほど不経済ではないはずです。あとは、豊富な機能を使いこなせるかどうかにかかってきます。

そうそう、忘れていました。とても大事なことをお話しするのを忘れていました。紙で出版されている辞書のうち、電子化されているものはごく一部です。紙でしか手に入らない素晴らしい辞書がたくさんあります。現在絶版となっている『ヴィスタ英和辞典』(三省堂)のような辞書もあります(古本で手に入ります)。結局のところ、紙の辞書を引くことは、現在でも必要なスキルと言わざるを得ません

それから、小中学生などの若い学習者の方では、初めて手にした辞書が電子辞書ということもあると思います。そういう方も、紙の辞書を一度見て、手に取ることをお勧めします。電子辞書のコンテンツの正体がどういうものなのかを物理的に捉えておくことで、辞書から得られる知識がどのようなものなのかがわかってきます。

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