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語彙、語彙、語彙

今回は英語の語彙学習についてのお話です。語彙の学習も文法の学習も基本的な違いはないのですが、語彙学習のほうがとりあえず丸暗記をしておくことが多くなるという違いがあります。

英語を学び始めてしばらくの間は単語の綴り、発音、品詞、意味(初めは訳語ですね)をひたすら暗記していかなければなりません。言語知識は知らなければ使えないので当然のことです。単語帳(単語集でも単語カードでもなく、単語帳です)を作ったりするのもまずは覚えなければ始まらないという理由によるものです。発音については単語帳とは別に「発音記号ノート」を作るとよいということは以前お話ししました。これは単語だけでなく熟語についても同様です(発音記号ノートには書き込みませんが)。

丸暗記の具体的な方法ですが、単語集を使うことも考えられますが、大学受験の勉強のように文章を読むことに主眼が置かれている場合は、文や文章に出てきた単語を文や文章の中で覚えていくことが中心になります。誰かに添削してもらえる環境であれば、例文集と単語集を組み合わせた学習も効果的です。例文の一部の語を単語集の単語に置き換え意味が通る別の文にして、全文を和訳するという学習です。これは一種のパタン・プラクティスです。

こうした丸暗記を続けてある程度語彙が増えてくると、似た単語で混乱することなどが出てきます。そこで語彙知識の整理が必要になります。その方法の一つは語形成を学ぶことです。語の仕組みを理解して、主要な接頭辞と接尾辞を覚えることです。語感の部分が現代英語で使われる独立語ではなくギリシャ・ラテン語に由来する語根であることもあります。いわゆる語源による語彙学習というのはこの段階で始めて意味を持ちます。次に類義語や基本語の意味をしっかりと理解するようにします。これは辞書の読み込みやこうした点に特化した読み物的な単語集などを活用していきます。熟語のうちの句動詞などは基本語の意味を理解することによって整理することができます。

発音やアクセントについても発音記号ノートである程度綴り字と発音の対応関係がつかめてきたら整理していきます。どの綴りがどのような発音をするのかを理解していくのです。日本語では大半の仮名が1字1音(「は」「へ」が2通り発音があり「お/を」「じ/ぢ」「ず/づ」「おお/おう」「ええ/えい」が同じ発音)ですから、日本語だと意識しないところですが、英語では綴り字と発音が1対1対応ではないので注意を払わねばなりません。アクセントも原則を理解しておくとよいのですが、やや抽象的な規則です。いつもお話ししているように抽象度の高い原理の理解が合わない人もいるわけで、そういう人はアクセントの規則を無理に理解することもありません。このアクセント規則には例外がありますが、この例外現象を理解するには先ほど述べた語形成の知識が必要です。

語彙知識の整理ができたら口慣らしです。語を発音し文を発音し、例文の「声出し」の要領で文ごと覚えていくようにします。特に句動詞は声に出してリズムで覚えることが大切です。語彙学習も原理の理解と記憶への定着という二つの柱があるというのは文法学習と同じですが、文法と違うのはいかなる場合も原理の理解から学習を始めるのは困難であるという点です。そして文法の場合以上に丸暗記だけで自在に語彙が使えるようになる人が多い傾向があります。もちろんこれには個人差がありますから「文法は理解、語彙は暗記」と決めてかかるのは問題です。程度の差こそあれ、どちらも両方必要な場合が多いのです。

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