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題名読書感想文:34 鼻と和洋折衷

 題名だけチラ見して感想を書いているのに読書を標榜している。それが題名読書感想文でございます。

 今回のテーマは「組合せ」です。様々なものは組み合わせによって成り立っています。組合せで成り立ってるものなんて、もうその辺に目を向ければいくらでも見つかるくらいございます。何なら我々の身体だって様々なものが組み合わさってできている。

 題名も組み合わせで出来上がっているものが大半です。ただし、組み合わせにもいろいろありまして、自然なものから不自然なものまでズラッと存在している。自然な組み合わせの題名はもちろん世に溢れておりますけれども、逆に敢えて不自然な組み合わせにする題名も存在します。今回、取り扱うのは後者でございます。

 なぜ敢えて不自然な組み合わせを持ってくるのか。目立つからだと思います。普段やらないような組み合わせを持ってくることで見た人に「ん?」と思わせる。そんな題名をいくつか選んでみました。

 まずは「能にアクセス」です。

 日本の伝統芸能であり、バリバリ和風の「能」の後ろに、日本語としてはどう考えても新参者で、ハイカラよりもハイカラと言っていい「アクセス」がくっつくという独特な組み合わせでございます。

 もっと「能」にぴったりな、「アクセス」に代わる純和風っぽい言葉をくっつけることだってできたはずなんです。しかし、この本は「アクセス」を持ってきたわけです。約20年前の書籍ではございますが、組み合わせが特殊過ぎて慣れてないせいか今でも面食らう和洋折衷です。

 ちなみに、このアクセスシリーズは他にも「狂言」「歌舞伎」「落語」「文楽」と、様々な伝統芸能にアクセスしております。

 和洋折衷でもうひとつ、「今こそシェイクスピア 能シェイクスピア十三曲」がございます。

 シェイクスピアと言えばイギリス文学に燦然と輝くビッグネームでございまして、英語圏では誰も避けて通れないほど多大な影響を与えている人物でございます。

 そんなイギリスなイメージが強いシェイクスピアでございますから、「今こそシェイクスピア」との前フリで英文学と思わせておいて、「能シェイクスピア」なる新しい言葉で奇襲をかけてくるわけです。

 とは言え、今や歌舞伎が「ジブリ」をやる世の中でございますから、能がシェイクスピアをやったって何もおかしくはないわけです。何だったら、文楽が「スターウォーズ」に手を出してもいいでしょうし、狂言が「踊るマハラジャ」をしたって構わない。伝統芸能も様々なものを取り入れて生き残りを画策する時期にきているのかもしれません。

 続いての組み合わせは「タングステンおじさん」です。

 タングステンは元素の名前でございまして、金属としても知られています。過去には電球のフィラメントとして利用されていた他、最近では鉛の代替品としてタングステンが注目されているようです。鉛のように野生動物を汚染しないことが理由だそうです。

 そして、タングステンおじさんなんです。タングステンオンリーだと元素って感じが強いですけれども、おじさんをくっつけると、なんかたちまち都市伝説っぽくなりますね。ターボばあちゃんみたいな、人だか妖怪だかよく分からない、特殊な存在に見えてしまう。タングステンだってまさかおじさんと組み合わされるとは思わなかったでしょう。

 よくよく考えると、これもある意味では和洋折衷でございますね。ただ異なる言語圏から生まれたふたつの言葉を組み合せているからミスマッチな感じがするかと申しますと、当然ながらそんなことはございません。日本語同士を組み合わせたって不自然な印象を受ける言葉はいくらだって生み出せますし、それを敢えて題名に持ってくる本は存在します。

 例えば「鉱物のお菓子」です。

 この題名を見て思い出したことがあるんです。その昔に聞いた「自分より遠いものを食べた方がいい」という謎の教えです。

 これは要するに、人に近い生き物、例えば牛とか豚とかばかり食べてないで、魚とか野菜とか、そういうものを食べましょうよと、そういう考えのようです。油断すると肉ばかり食べてしまう人への戒めみたいなものでしょうか。

 この教えの弱点として、「じゃあ砂を飲んだり岩をしゃぶったりするのがベストなのか」みたいなツッコミがございます。でも、そんな鉱物をお菓子と組み合わせているのが上記題名です。鉱物自体は塩などごく一部を除けば食べ物というイメージが極めて薄いため、これまた一見するとミスマッチという印象を受けます。

 アマゾンの著書説明を読む限り、鉱物を模したお菓子の作り方が載っているようです。つまり、黒曜石をアメ代わりにペロペロして空腹を満たすような猛者の本ではないみたいですね。

 今回のラストはこちら、「鼻と人間関係」です。

 鼻も人間関係も日常生活では当たり前のように出てくる言葉ではございますが、組み合わせることによってこんなにも不思議な題名になってしまいます。「ありそうでなかった」でもありません。下手したらこの本が最初で最後になる可能性もございます。

 同時に思うわけです。意識はしていなかったけど、確かに鼻は人間関係に影響を与え続けているかもしれないなと。顔についている以上、見た目にはどうしたって関係してきますし、においを嗅ぐという独特な機能もくっついています。鼻息が出れば鼻水や鼻血も出しますし、鼻毛だって生えている。思ったよりいろいろやっています。人間関係に関係しないわけがない気がしてきませんか。

 鼻の偉大さも分かるのが題名読書感想文だと判明したところで今回はこれまでといたします。

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