3本の釘を並べる仕事

　友人がずっと疑問に思っているそうです。

　その昔、友人は真面目なテレビ局の真面目なテレビ番組を見ていました。その番組は中学生か高校生か、とにかく真面目そうな学生が何らかの主張をするという内容だったそうです。そんなとある真面目そうな女子生徒の主張は友人にとって非常に印象深かったようなんです。

　その女子生徒は冒頭でこう言いました。「世の中には3本の釘を並べる仕事がある」。

　友人の記憶だと、世間一般にある仕事をなかなかできない人がそんな仕事をしているという内容だったんだそうです。ただし、決してその事実を批判する主張ではない。「こんな仕事しか割り当てられていない」と憤るような感じではなく、「こんな素晴らしい仕事をしている人がいる」という感じだったそうです。

　しかし、友人の記憶はここで途切れます。理由は明確です。3本の釘を並べる仕事がある。このインパクトが強すぎて、あとの話が全く頭に入って来なかったからです。結果として、友人の頭の中には「世の中には3本の釘を並べる仕事がある」という情報だけが残りました。

　問題はここからです。友人が釘を並べる仕事の存在を知ったのはまだ子供でした。それから数十年、友人は様々な仕事を見聞きし、友人自身もいくつかの仕事に従事してきました。ですが、3本の釘を並べる仕事には一度も出会っていないんです。釘を並べる仕事に近そうな職業さえ見つからない。言われてみれば、私も釘を並べて飯を食っている人の話は聞いたことがない。釘を3本並べるだけでどうやって収入に繋がるのか想像もできません。

　友人が見た番組は夢か幻だったのでしょうか。女子生徒の発言を何か誤解した可能性もあります。ただ、もし友人の記憶が事実だったとしたら、少なくとも当時は3本の釘を並べる仕事が存在していた。一体どうやって利益を上げ、釘を並べる収入はどれくらいなのか、友人から話を聞いた私もすごく気になっています。

　ご存じの方はご一報くだされば幸いです。