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家っぽくない家がよくなってきました

 知らない人が家に来ることもあると思うんです。大体は、あれを買いませんか、こんな契約しませんか、一緒に祈りませんか、みたいな方です。

 皆さん仕事でやられているとは思うんですけれども、来れれた側としては基本的にいい印象は抱いていないと思うんです。知らない人からいきなり必死にお願いされても、と考えるのは仕方がないと思います。

 私もまたそう考えるタイプの人間です。その上、人との交渉が苦手で、断るのにものすごくエネルギーがいる。結局「すいません」を連発して帰ってもらうという、断ってんだか謝ってんだか分からない方法論を確立するに至ります。それでも、ドアを閉めた時にはグッタリです。せっかく山崎製パンのイチゴスペシャルを食べようとしていたのに、なんかそんな気力もなくなっていまう。

 それを繰り返した結果として、インターホンを押されてもドアスコープから見えたのが知人でも宅配業者でもなければ居留守を使うようになりました。嘘をついているわけですから、もちろんいい気持ちはしませんけれども、ドアを開ければグッタリするような出来事が待っている。向こうも居留守を使われるのは慣れてるだろうし、と自分を納得させるようになりました。

 何年か前にネットニュースで、インターホンを鳴らされても出ない人が増えているとの記事を見ましたが、自然の流れだと思います。特に一人暮らしともなれば、何のアポもなくインターホンを鳴らすなんて宅配業者を除けばほとんど変なセールスです。宅配業者ならば返事がなければ不在連絡票を入れていきますから、改めて配達日時を指定すればいい。そりゃあ、いきなりインターホンを押されても出なくなるはずです。

 そのせいか、個人宅にいきなり訪問するタイプのセールスが減ってきたように思います。ただし、その手のセールスは未だに儲かるのか、なかなかゼロにはなりません。

 そこそこちゃんとした住宅地のアパートにいた頃は結構な頻度でピンポンピンポン押されました。住宅地一帯を絨毯爆撃的に片っ端からピンポンしているセールスマンがいて、たまたま私の住んでいるアパートがその爆撃範囲に入っていたようです。ですから、ピンポンをされては部屋で息を殺して居留守を使う日々が続いていました。

 そうかと思えば、全然ピンポンされない家に住んでいたこともあります。前の家で散々ピンポンされてきたため、いつでもピンポンされる覚悟でいたのですが、1年経っても2年経っても知らないセールスマンからピンポンされません。一体どういうことなのでしょうか。

 今から考えればの話なんですが、理由は立地と外観だと思います。まず立地なんですが、当時の家は住宅地からちょっと外れており、周囲にはお店やオフィス、あとは学校なんかが多い場所にありました。住宅地をまとめて絨毯爆撃なんて戦略のセールスマンからターゲットにされづらい立地だったわけです。

 そして外観です。住んでた人間が言うのも何なのですが、あんまり集合住宅っぽくないんです。確かにドアはいっぱいついている大きな建物ではありますし、管理会社の看板も設置されてはいるんですけれども、その外見はマンションやアパートというよりは倉庫というか工場というか変電所というか、とにかく人が暮らしてそうには見えない。でも、ドアを開ければそこにはちゃんと人が静かに暮らしていける部屋があるんです。そんなところにセールスマンがピンポンする気にはなかなかならないというか、「ここには人は住んでいないな」と普通にスルーしている可能性もあります。

 私としては突然のピンポンがないのは非常に素晴らしい環境でございますので、転居を考えるたびに集合住宅っぽくない外観の集合住宅を探すわけなんですが、これがなかなかないんです。「え、これ人が住めるの」と思ってドアを開けるとバリバリ暮らしやすい空間が広がっている、というのが理想なんですが、そんな訳の分からない羊頭狗肉式建築をわざわざ採用する人間なんてなかなかいらっしゃいません。よほど特殊な希望なのか、大手物件検索サイトでも「外観が家っぽくない家」なんて検索条件はどこも用意していません。というか、私が住んでいたその家っぽくない家だって、狙ってやったわけじゃないでしょうし。

 もし、自分の家を建てる機会があったら、一応は考えてみたいとすら思っています。訪問セールスが近寄らないくらい家っぽくない家の建設を。

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