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独特なレジ係

 オンライン決済やセルフレジが増えてはいますが、まだまだレジ係は健在で、至るところでお世話になっています。たくさんの方が従事されているということは、言い換えると割と独特な方と出会うということでもあります。

 例えば、私がよく使っているスーパーに一時期いた女性のレジ係は、非常に大人しい印象の方でした。常に真顔で、声が小さいせいか「いらっしゃいませ」の挨拶も「せ」しか聞こえない。接客としてはよろしくない特徴ではございますが、そんな感じなのに動作は非常にテキパキなんです。早いのに丁寧で正確。客を次々にさばいていきます。

 首から上はやる気ゼロに見えるのに、首から下はやる気に満ち溢れている。頭部のやる気をギュッギュッと絞って胴体に押し込んだかのようです。何がどうして女性はそうなったのか知りませんが、レジでの仕事ぶりが認められてか今ではレジの教育係や商品の発注など、別の仕事をしているのを見かけます。相変わらず、首から下だけやる気がみなぎっているような動きです。

 別のスーパーで出会ったレジ係の女性もまた印象深かったです。こちらの女性は打って変わって非常にハキハキとしゃべる方なんですけれども、どこか不安げに目を泳がせている。レジを始めたばかりの方なのだろうなと、何となく察しました。

 女性は商品のバーコードをレジに読み込ませながら金額を言っていきます。お店でそういう決まりになっているのでしょう。それ自体は問題ないんですが、女性の言う値段が全部違うんです。単純に見間違えているのか、嚙み過ぎて違う値段に聞こえるのか、原因は分かりませんが、もう本当に全問不正解なんです。さすがに「大丈夫かな」と思った私、商品の値段を確認し、合計金額を計算しました。女性は合計金額もしっかり間違えて私におっしゃいましたが、レジの画面に出た金額はちゃんと正しい金額でした。機械は偉大です。

 その後、女性は仕事にもなれ、今ではちゃんと正確な値段を読み上げてレジを操作しています。客としては安心感が段違いですが、個人的にはあの値段を100%間違える接客が見られなくなって、ちょっとだけ淋しい気もします。多分、女性の成長を淋しがる唯一の人類だと思います。何の価値もない希少性だと自負しております。

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