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霊界の肛門

 死んだらどうなるのか。意識はどこへ行くのか。なくなるのか、なくならないのか。ものすごく気になるけど、生きている間は確認ができません。だから死後の世界――ここではとりあえず霊界と書きますけれども――についての話は現在に至るまでいろんな人が口々に言い、「本当かよ」と疑いつつもつい耳を傾けてしまうんだと思います。

 霊界の話でまず問題なのが、本当かどうか分からない点です。嘘がつき放題なわけですね。仮に本当だとしても、更なる問題点が出てきます。どれだけ語ろうにも、それはあくまで霊界の一部分しか言えていないという点です。そのせいもあってか、ネットに溢れている霊界の話は、語る人によって全然違うものになっている。

 「群盲象を評す」という言葉があります。目の見えない人たちがそれぞれに象を触った。しかし、象は人に比べてデカい上に、触った場所によって感触が全然違います。耳を触った人、鼻を触った人、足を触った人、尻尾を触った人。みんな自身の体験に基づいて正確に話しているにもかかわらず、全然違うことを言う。同じものに触れても、人によって感想が全く違う場合があるという教訓です。

 霊界がどれだけ大きいのかは知りませんが、象よりは遥かにデカいでしょう。つまり、本当に霊界を見た人が10人いたとしても、10人の感想が互いに激しく食い違っていたとしても何ら不思議ではないことになります。霊界を巨大な生命体に例えるならば、Aさんは霊界の耳しか見ていないかもしれませんし、Bさんは霊界の喉ぼとけばかりグリグリしてたかもしれない。霊界の髪の毛をサワサワしてるうちに現世へ舞い戻ったCさんのような人だっているでしょうし、せっかく霊界を訪れたのに至近距離で霊界の肛門をガン見しているうちに蘇生されてしまったDさんがいたっておかしくはない。

 本当に霊界へ行ったのならば、それぞれの体験がそれぞれに事実なんです。だから、彼らは貴重な体験を他の人に語るでしょうし、その話に耳を傾ける人は出てくるでしょう。私だって気になります。特に霊界の肛門をガン見したDさんの話は最低でも3回は聞いてみたい。どうして霊界の肛門に辿り着いたのか、霊界の肛門はどんな感じなのか、霊界の肛門からは何が出てくるのか。

 肛門は例えだっつってんのに何をひとりで盛り上がっているのか。バカなマッチポンプにも程があります。

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