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M-1グランプリ2023予選動画感想 3回戦11月7日その2

 M-1予選の時期になると、備忘録的な感じで感想を書き、書いたら書いたで勿体なくなってネットに載せるという癖が毎年蘇ります。そして、今年も蘇らせてしまいました。よろしくお願いいたします。

 今回はM-1グランプリ2023年の11月7日に開催された予選3回戦動画に登場した芸人の感想となります。なかなかのボリュームとなっておりますが、よろしければどうぞご覧ください。


1.シシガシラ/トニーチョ/めっちゃ最高ズ

1-1.シシガシラ

 初めての同窓会に行ってみるネタです。
 「若くしてハゲきったが、そのタイミングで上京しているためバレてない」「ようやく同級生が頭髪的に追いついてきたので同窓会に参加できる」「でも、重ねてきたハゲ歴は隠さなければならない」という、常日頃からハゲネタを考え抜いてきた人でもなければ思いつかないような特殊システムを自然と導入しております。終盤ではハゲ歴と芸歴との相性の悪さも露呈させるなど隙がありません。頭髪周囲の言葉選びも卓越しており、直接的ではないがしっかり意味が伝わり、なおかつ面白い単語を見つけ出し、効果的に使う技術に長けています。

1-2.トニーチョ

 ボディービルの大会の掛け声をギター演奏に合わせてみるネタです。
 音楽と動きがメイン武器となっておりまして、構成的にはオーソドックスです。音楽に合わせて散々やったあとでツッコむため、必然的にノリツッコミが多い形となっています。

1-3.めっちゃ最高ズ

 高収入の会社に面接へ行くネタです。
 明るくてアクションが多いキャラクターのボケが相方を振り回す形が基本となっています。ボケほどではないですが、ツッコミもアクションが多めで、コントでなければありえない光景を表現しにかかっています。

2.超平和万博/コダマペンギン/燃ゆるレジーナ

2-1.超平和万博

 単語の前に逆をつけるネタです。
 独自ルールを組み込んでうまくいったりいかなかったりする形となっています。「逆」は単語ならば何でもつけられるため汎用性が高く、見た目ほど制限があまりないルールでもあります。ただ、本来は逆が存在しないものにもくっついてしまうため、「どう逆なのか」をうまく説明する必要がございますし、観客が腑に落ちるような「逆」を短時間で説明しきる必要があるため、自由度の高さが逆に難しくなるルールとも言えます。

2-2.コダマペンギン

 サウナ好きを自称するも、とがり方が極端なネタです。
 サウナのために遠くまで行く熱量はあるものの、それ以外はサウナ好きとしては基本的に緩く、そのギャップを相方がとにかく支持する形となっています。サウナに関すること全部にこだわりが強いと思いきやそうではなく、それを相方がツッコむかと思えばそうではない。このふたつの裏切りが軸として働いています。

2-3.燃ゆるレジーナ

 3本目の腕を移植するための予約をしたネタです。
 あらかじめ決められたキャラクターに沿って話を進める形となっておりまして、奇妙な状況に陥ってもキャラクターから外れず淡々と進行してゆきます。構成としては基本的に「その目的にその手段」でございまして、電話を取るために腕を移植しようとし、その病院を予約するためにホットペッパービューティーを使う、などなど、やろうとしていることに対して手段が日常的過ぎており、その落差によるウケを狙っているものと思われます。

3.プノまろ/ハナイチゴ/ダイタク

3-1.プノまろ

 犬を飼えないが小動物は飼える賃貸で、小動物を集めてうまいこと犬っぽくするネタです。
 奇妙な現象を理詰めで作り上げて、その理屈のおかしさを楽しんでもらう形となっています。ボケが奇妙な現象の説明に終始し、ツッコミは基本的に問いかけや納得、たまに現象を一言で表現するなど、ボケの説明をサポートする役割を主に担っています。

3-2.ハナイチゴ

 カラオケ合コンをするネタです。
 ツッコミが全てフルスロットルで叫ぶという極端なものでございますけれども、連発されると慣れてくるため、それを計算にいれたものと考えられます。叫んでいる割には内容がやたら冷静だったり、叫びを利用したツッコミだったり、だんだん相方に寄り添ったりと、ツッコみ方が似てしまう分だけ内容で変化をつけています。

3-3.ダイタク

 相方の悪い噂を本人にぶつけてみるも否定したため、じゃあその悪い噂は自分のことかと納得するネタです。
 一卵性双生児ならではのネタでございまして、だいぶひねったシステムになっています。明らかにおかしなことをさも当然のように進める形はこれまでも様々な芸人がやってきた形ですが、そもそも「双子ならではのシステム」が珍しい上に、更にひねっていますから、必然的に独自性の高いネタとなっています。

4.スタミナパン/インテイク/ステゴンダ

4-1.スタミナパン

 そのままの姿でキャバ嬢になってみるネタです。
 「相方がいくらツッコんでも自分の都合のいい風にしか聞こえない」を最後までやるという、独特なスタイルとなっています。穏やかなでご機嫌なボケと冷静で不機嫌なツッコミの対比もあって、見れば見るほどネタに引き込まれてゆきます。ツッコミが怒る原因が誰の目にも見て取れるため、後半へ行けば行くほど強めのツッコミがウケるようになっています。

4-2.インテイク

 家で鍋パーティーやりたいひとが、断固やりたくない人を誘うネタです。
 断固やりたくない人が手を変え品を変え鍋パーティーを拒否する形となっております。序盤は鍋パーティーの嫌なところを「あるある」的な面から突いていき、後半では演説を始めて空気を換え、観客を勝手に仲間認定してゆきます。全体的に本気で嫌がっている感じがちゃんと出ており、嫌がる理由に納得の余地がある上、分かりやすい表現で、もちろん笑えるように加工されている。かなりの話術です。

4-3.ステゴンダ

 ギャップのある女性をやってみるネタです。
 ギャップを笑いにするという、王道的な行為に真正面から挑んだ形となっています。コントを進めながら、ギャップをオチに持ってくることを繰り返す、オーソドックスな構成となっています。

5.ストレス/マリオネットブラザーズ/無尽蔵

5-1.ストレス

 芸能人と付き合おうとするネタです。
 オーソドックスなコント漫才かと思いきや、終盤でいきなりR-1いじりに舵を切り出す流れです。ただ、何の脈絡もなくいじりだしたかと言えばそうでもなく、お笑い芸人のあるあるを入れたり、お笑いに強いアイドルを入れたりと伏線的な要素は散りばめられていますし、そもそもテーマ自体が芸能界がらみで、R-1に近いものを用意しています。いきなりいじったように見えて、不自然ないじりにならないよう気を遣ってあります。

5-2.マリオネットブラザーズ

 ちょっと前に時間を戻してミスを帳消しにしようとするネタです。
 逆再生されることを前提にボケのくだりが作られている点は特異的です。そのためか、逆再生を前面に出した形となっており、巻き戻す地点を変えるなどして変化を出そうとしています。

5-3.無尽蔵

 トランプの開発会議をやってみるネタです。
 ボケがひたすらコントに徹し、その外側からツッコミがあれこれ言う形となっています。練られたストーリーを見せるタイプのネタでございまして、自然に現れた人物を伏線に活用したり、ライバルのカードゲームを効果的に絡ませたりと、お話として面白い形に仕上がっています。

6.軟水/そいつどいつ/ミスター大冒険。

6-1.軟水

 喧嘩の最中に別ゲームを繰り広げて、そちらの勝敗でどちらが謝るか決まるネタです。
 ひとつのネタでふたつの現象が同時進行している特殊な形でございます、このような形ですと大体、どちらかがメインになるわけですが、このネタの場合は指を使ったゲームがメインとなっており、会話は勝敗が決するところ以外、サブ的役割を担っています。しかし、完全にサブというわけではなく、おばさんに関する話を伏線に用いるなど、ちゃんとした笑いどころを作るために活用しています。

6-2.そいつどいつ

 刑事ドラマの突入場面をやるネタです。
 性別の平等を非常に重視する人がいざコントに入ったら不平等な描写をしまくる形なっています。いわゆる「火中の栗を拾う」ようなテーマを用いることで笑わせるタイプとなっており、敢えて極端な描写に終始しているのはウケ狙いの目的ももちろんありますけれども、批判を防ぐ効果もあるものと考えられます。ツッコミの発言を中心に配慮した発言も散見され、危ないテーマをなるべく安全に用いようという姿勢が見て取れます。

6-3.ミスター大冒険。

 結婚式の練習をするネタです。
 ツッコミよりもその後の観客に向けた謝罪がオチになっているスタイルとなっており、それでオーソドックスなコントを最後まで駆け抜ける形となっております。似たようなセリフを繰り返すため、ツッコミがどっしりとしたキャラクターでありながらたまに激しい動きをしたり、ボケがツッコミのモノマネをし始めたりして、単調さを防ごうと試みています。

7.おミュータンツ/マンタの子/ゼロカラン

7-1.おミュータンツ

 人が握ったおにぎりを食べられない人がピクニックをやってみるネタです。
 「人が握ったおにぎりが食べられるように、握った人が人間を捨てる」という発想の転換から、あとは人ならぬ何かが超常現象的なことを巻き起こしてゆく形となっています。全体的に緊迫感が漂いがちな描写となりますが、ツッコミが日常的な言葉でソフトに例えたり、おにぎりの中身は普通だったりと、緊迫感を抑えつつ描写との落差でウケを狙っています。

7-2.マンタの子

 キャバクラの犬版の話を延々するネタです。
 ふたりとも同じテンションで淡々と語るスタイルで、ボケとツッコミの概念が薄くなっています。直立不動で会話も変化に乏しいため、言葉遣いや構成などのいわゆる台本の力で勝負する形です。テーマとしては実際にあるものを組み合わせてそのミスマッチ感を楽しんでもらえる、オーソドックスなものとなっています。

7-3.ゼロカラン

 パワハラ先輩の引っ越しを手伝うネタです。
 引っ越しで後輩がいろいろやらかしまくり、先輩がツッコむという、オーソドックスな形となっています。終盤で多少のどんでん返しがあり、変化をつけております。

8.ラパルフェ/とらふぐ/おちもり

8-1.ラパルフェ

 ドラマ「VIVANT」のキャラクターであれこれするネタです。
 舞台袖からドラマのキャラクターに扮しており、ドラマの設定に沿いつつも、現実の大会や観客、大会MCなどをいじることに終始しています。ドラマのキャラクターがお笑いをいじるという意外性で勝負している形です。

8-2.とらふぐ

 抜けてた関西弁をとり戻そうとするも、そもそも育ちが違っていたネタです。
 関西弁の再教育をしているうちに、育ちの違いや出身ならではの嫌なところなど、新たな要素を次々と追加していき、徐々に盛り上げていく形となっています。要素の追加も自然な流れでなされており、盛り上がりに付与しています。

8-3.おちもり

 似たような意味の言葉を重複させるネタです。
 ボケが意味の似た言葉を連続で言い、そこをツッコんでいく形が基本となっています。理屈っぽいほうが連続で言う側を担当し、不自然な言葉遣いに自然さをつけようとしています。

 今回の感想は以上になります。ではまた。

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