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キングオブコント2022 各ネタ感想

 M-1予選動画の感想文をここ2ヶ月くらい書いていたせいか、すっかり感想癖がついてしまいまして、キングオブコント2022も楽しみつつ感想を何となくメモしてしまいました。せっかくなのでメモを書き直して載せてみたいと思います。

 基本的には個人の感想でありまして、当然ながら見る人の好みによってネタの印象は変わってくるでしょうけれども、見方のひとつとしてお楽しみくだされば幸いです。では参ります。

1.クロコップ

 ケイダッシュステージ所属のコンビ。2013年結成。キングオブコントには4度の準々決勝進出ののち決勝へ。格闘技やゲームをもとにしたネタを得意としています。
 「あっちむいてほい」にカードゲームを組み合わせたオリジナルのゲームで勝負するネタです。
 オリジナルゲームの場合は基本的にネタ中での観客への素早く確実なルール認知が必要となってきます。この組の場合は、「あっちむいてほい」と「カードゲーム」という、もともと存在しているゲームを分かりやすく活用することで、素早く確実なルール認知に成功しています。その一環からか、笑いどころもハッキリと分かりやすくなっていて、どこがどうおかしいかすぐ分かるようになっています。

2.ネルソンズ

 吉本興業所属のトリオ。2010年結成。キングオブコント2019年にも決勝進出。2名はレスリング経験があり、バラエティなどでしばしばそれを活用しています。
 結婚式で元カレが登場するネタです。
 オーソドックスなネタを本来のイメージとは異なる結論へ持っていく形になっています。具体的には、花嫁を連れ去ろうとする男性よりも結婚しようとする男性のほうに観客の応援が向くようにするところです。冒頭の緊迫した場面の中で、花婿の絶妙な演技がこのネタを笑いやすい方向へ持って行けたように思います。2次会という指摘が最もよくハマった笑いどころではないかと。

3.かが屋

 マセキ芸能社所属のコンビ。2015年結成。2019年にはキングオブコント決勝進出経験がある他、賀屋さんはR-1でも決勝の経験があります。マセキ期待の若手コント師です。
 相手に気に入られようと食事中にこっそりSMをするネタです。
 最低限の説明で場面を表現するのが非常に上手なコンビらしく、今回も特殊な場面を余計な説明なく表現していきました。足踏みするように似たようなくだりを繰り返すことなく、スムーズにストーリーを進行していて、ストレスなく見られました。

4.いぬ

 吉本興業所属のコンビ。2010年結成。今回のキングオブコントが初めての決勝進出。ラグビー部の同級生コンビで、身体を張ったネタが多いのが特徴です。
 筋トレのコーチと生徒が奇妙な夢を見るというネタです。
 筋トレ中にキスをするという繰り返しを、明らかなバカバカしさでどうにかして観客の飽きを防ぎ、場合によっては繰り返しだからこそ起きる笑いを目指したものと考えられます。キスという分かりやすいものを何度も繰り返したところは、笑いを増幅させる要素ではあるんですけれども、審査員に指摘されたように安易だったり単調だったりという印象を与える危険性があるとも言えます。

5.ロングコートダディ

 吉本興業所属のコンビ。2009年結成。キングオブコントとM-1で1回ずつ決勝経験ありと、コントと漫才のどちらでも結果を残しています。
 番組における料理人の登場シーンでわちゃわちゃやるネタです。
 一見すると同じことを何度も繰り返し、その場で足踏みをしているように話が進まない形式なんですが、繰り返す部分を増やす、例えば帽子だけだったのが「全然」というセリフだったり、ゲートでしゃがむ行為だったり、登場時のセリフ変更だったり、そういうものを付け加えたり取り去ったりと調整をすることで繰り返し感を薄めています。ボケのとぼけたキャラクターも効いています。

6.や団

 SMA所属のトリオ。2007年結成。SMAの初期から所属するベテラン芸人です。
 友人らにドッキリで死んだふりをするも、友人のひとりが豹変して死体を埋めようとするネタです。
 急に死体処理のプロに変貌した友人とドッキリがいつ終了するのかという2本柱を話の牽引力として効果的に使っています。先が分からないというのはストーリーを楽しむ上で重要な要素であると共に、お笑いという視点でも観客の予想がつかないため裏切りの笑いが起きやすくなります。中盤から終盤にかけてはずっと深刻な場面のはずなんですけれども、「ドッキリをしかけている」と知っているために笑える余地を維持し、リアルな死体処理を見せられても観客がひかないようにできています。また、仲のいい友達3人でバーベキューに来たという何気ない設定が、急に死体処理のプロに変化する場面のおかしさを引き立たせています。とにかくストーリーがよくできています。

7.コットン

 吉本興業所属のコンビ。2012年結成。こちらもコントと漫才のどちらでも賞レースでは上のほうまで食い込んでいます。
 浮気の証拠隠滅を生業としている人のネタです。
 オリジナルの商売を登場させ、具体的な言動を見せてゆくことによってリアリティを増していきつつ、笑いを見せていくネタです。仕事のすごさをひたすら見せてゆくだけであり、ツッコミはほぼ感心している状況なんですが、ボケが扮する仕事人の極端なプロ根性を的確に笑いへとつなげています。需要がありそうな商売だったのもいいですし、便利なスプレーが市場に出回らない理論も完結で納得できる形に仕上がっていることからも、細部まで設定を作り込んでいると分かります。

8.ビスケットブラザーズ

 吉本興業所属のコンビ。2011年結成。2019年頃から頭角を現し、キングオブコント2019では決勝進出。以降は関西の賞レースで優勝を繰り返しています。
 山の中で野犬に襲われていると、変な人が助けに来るネタです。
 ご存じの通り、変な人が変な格好で出てくるなんて数多のネタでやられているわけなんですが、この組の場合は出オチで終わらせず最後までやり抜きました。その理由はいろいろあるでしょうけれども、個人的には格好から山の中にいたことまで全ての理由がきちんと決まっていてそれを笑いのネタにしていたことや、無駄のない的確なセリフやツッコミのタイミングが非常に出来上がっている点が大きかったように思います。

9.ニッポンの社長

 吉本興業所属のコンビ。2013年結成。こちらも最近になって賞レースを制覇するようになってきています。
 博士が少年へロボットに乗るよう説得するも、大体何かあって乗る話がナシになるネタです。
 暗転を挟んで同じ見せ方のオチを繰り返す形式のネタです。審査員が触れたこともあって、暗転が取りざたされていたりいなかったりするようですが、確かに暗転はどうしてもそこそこの時間が取られますし、ただ単に暗くなっている間は観客の視点から見れば舞台上で何も起きていないも同然ですから、多いとどうしても気になってしまうのではないかと考えられます。場面を区切ったり舞台上の立ち位置等を変えるのには便利だとは思うんですが。あとは、重厚なストーリーもののコントが3本くらい続き、それが連続してウケてきたので、同じことの繰り返し感が目立った可能性はあります。もちろん、そういう笑いが効果的な場合もありますし、今回のネタでは繰り返すたびに変化はつけているんですが、限界はあるでしょうし。

10.最高の人間

 人力舎所属のピン芸人ふたりによるユニット。2022年結成。岡野さんはコンビ時代にキングオブコントの決勝進出経験が2回ある他、R-1でも1度決勝に進出しています。吉住さんは2020年にTHE Wを制覇、R-1では2度の決勝進出を果たしています。
 テーマパークの園長が研修をするも、特定のキャラクターを演じる部下によって園の秘密が明らかにされていくネタです。
 感情豊かな部下と妙に冷静な園長とのコントラストがうまく回っていたネタだと思います。こちらでも審査員が暗転について触れられていました。この組のネタで感じたこととしては、暗転は良くも悪くもそれまでの流れを一旦は断ち切ってしまうため、せっかくのいい流れがリセットされてしまう危険性があるという点です。もっとも、このネタの場合は同じものを繰り返すためではなく、過去の思い出を走馬灯のように次々と出していく演出として暗転を用いたわけで、思い出の一つひとつに笑いどころを用意し、それなりに持ちこたえた感はあったんですけれども、暗転によって見る側の集中力が切れかけた可能性はございます。

11.や団(2度目)

 天気を外した気象予報士と、予報が外れたことで酷い目に遭った男性とのいざこざを描いたネタです。
 場面選びの秀逸さが光ると共に、面白い設定にあぐらをかかず、しっかりとストーリーを練っていったネタだと思いました。天気を外した気象予報士のところにやってくる危ない男から始まり、その男がなぜ憤っているのかが語られ、気象予報士と一緒にいた人が何者なのかが明らかにされ、という風に、隠し玉のような新事実が次々と明らかにされて飽きさせません。更に、ヤバい人がもうひとりいたという意外性がとどめをさしにきます。よくできています。

12.コットン(2度目)

 出会ったばかりの男女カップルなんですが、女性が急にタバコを吸い始めるところからストーリーが動いていくネタです。
 序盤、何気ないタバコの吸い方で笑いが出るのは、冒頭の数十秒でふたりのキャラクターが観客に説明しきれているからこそだと思いました。あとはもう、ひたすら煙草にこだわった展開となっていきます。煙草だけと言えばそうなんですが、途中でプロポーズをするところを筆頭にストーリーはちゃんと進行していますし、煙草でできることをストーリーへ効果的に絡めていて、最後の煙の指輪がその典型だと思います。最終決戦の中では最も日常にありそうなネタだったため、若干退屈に思われる可能性はあるでしょうが、その辺りは見る人の好みの範囲内であって、ネタのクオリティの問題ではないと思われます。

13.ビスケットブラザーズ(2度目)

 女性ふたりの何気ない会話から始まるも、仲が良かった友人がいきなり男性に変わるネタでした。
 目の前で女装をやめるということはネタ中にまだあるとは思うんですが、こういう活用法を見つけたというか、整合性がなくなるから普通は絶対にやらないような使い方をやってのける手腕が光ります。男性を紹介するという発言をフリにするところも非常にうまくいっています。それだけで気を抜かず、中途半端に女装して男性と女性のどちらを担っているのか分からなくしたり、実はそれで女性と仲良くなることに成功していたりと、観客の予想を上回るような事態を作り出しています。また、会話ひとつとっても意外性のあるやり取りをコンスタントに出していくのが非常にうまく、全体的に高水準な仕上がりとなっていることがうかがえます。

 今回の感想は以上です。ではまた。

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