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ラバーガールのコントは他に比べて最初の笑いまでが早いのか調査しました

 出典として貼りつけようとした動画がいつの間にか公開終了になってしまったので、うろ覚えで書いてしまいますけれども、2022年3月18日に放送されたタカアンドトシMCのテレビ番組「ジンギス談!」にて、ゲストにラバーガールが出ていたんです。ラバーガールと言えば淡々と話を進めてゆくコントで定評がありまして、キングオブコントでは2度の決勝進出経験があります。

 話は、彼らがtiktokで人気を集めているというところから始まったと思います。なぜtiktokで好評を博しているかを問われ、彼らはこう答えていたと記憶しています。「もともと自分たちのコントは最初の笑いまでが早い」。つまり、コントが始まってから最初に笑いを取るまでの時間が、他の芸人がするコントよりも早いわけです。そのため、tiktokのようなショートムービーと相性が良かったのだろうと彼らは分析していました。

 果たして、本当にそうなのでしょうか。とりあえず、簡単にでも確かめてみることにしました。幸いにしてラバーガールはYouTubeチャンネルがあり、そこでネタを公開しています。ですので、「ラバーガール Official YouTube Channel」と「第2ラバーガールChannel」で2022年12月2日現在公開されている動画のうち、劇場で行われているコントにしぼってコントの開始から最初の笑いどころまでのタイムを測定しました。

 動画のうち、明転してネタが始まった時点から一番最初に意図的な笑いを取りにいった時点までの時間を測定しました。「意図的な笑いを取りにいった時点」は私の主観で決めているため、その辺の正確性はご了承くださればと思います。とりあえず、「何となく参考になればいいかな」くらいに考えてくだされば幸いです。また、時間の測定はYouTubeの動画に出ている時間を目視で確認する方法を取りましたので、±1秒程度はズレているかもしれません。ちなみに、ネタ開始直後に変な格好で笑わせる、いわゆる「出オチ」は一番最初の笑いに含めておりません。

 そんなアバウトな測定法で作られた一覧が以下の通りです。

タイトル:ウケまでの時間(秒)
ファミリー向け物件:12
作家:9
世界にはばたく日本人:44
WAKE UP OHMIZU:122
絵日記:23
タクシー:38
ポスト:7
別れなさい:6
フェスを配信で観る:13
大水は人気者:70
引っ越し:18
FP:12
パワーポイント:41
おそ水さん:21
サイクルショップ:22
ラーメン系YouTuber:16
聞いてくれよ:35
家庭教師:8
携帯ショップ:7
ワンダフルレース:16
サウナ:16
ピザ:17
喫茶店で絶対儲かる話を教えてる人:27
ナゾトレ:30
ハチャメチャホテルにいらっしゃ~い:48
出張の飯:32
再会:32
「なんや、この定食屋!」:44
浮気調査:15
将棋教室:18
猫カフェ:21
台湾土産:17
子供服売り場:15
振り込め詐欺:16
ソファー:16
居酒屋面接:13

 ネタの数は36で、平均は約25.472秒。つまり25秒少々で最初の笑いどころが来る形になっています。果たしてこれは早いのでしょうか。

 とりあえず、他の芸人のコントと比べてみようと思いました。私が知っている中で、YouTubeに劇場でやったコントをたっぷり載せているのは誰か、と考えた結果、真っ先に出てきたのがラーメンズでした。とりあえず、ラーメンズのネタも同じように調べました。ネタの数が100本と多いので一覧は省略しますが、平均は47.45秒でした。ただし、ラーメンズのネタはどこまで意図的な笑いなのか判断が難しい箇所があるため、違う人が測定した場合、平均値が少々ズレる可能性がございます。

 しかし、最初の笑いまでの時間はラバーガールが約25.472秒に対してラーメンズが47.45秒と大きな差がございます。これは確かに、ラバーガールのコントが他の芸人のコントよりも最初の笑いどころが早いという証拠になり得る結果です。

 ちなみに、ラバーガールのネタは最初の笑いどころが早いという話を受けて、MCのタカアンドトシは「それは漫才みたいだ」というニュアンスの発言をしてみました。確かに、漫才はコントと異なり、「はいどうもー」なんて言いながら舞台に現れてセンターマイクの前へ来ると挨拶もそこそこにツカミで笑いを取ってるイメージです。つまり、最初の笑いまでの時間はコントより漫才のほうが早い傾向にあるのかもしれない。じゃあ、最初の笑いまでが早いラバーガールのコントは他の芸人がやる漫才に比べてどうなのか。それも調べてみました。

 調査の対処にしたのはM-1グランプリ2022年予選1回戦TOP3の動画です。舞台袖から現れた瞬間から計測を開始し、最初の笑いまでの時間を測りました。ちなみに、測定した芸人はプロかフリーに限定しました。その結果、測定したのは149組で、平均は約21.906秒でした。さすがに漫才は最初の笑いがラバーガールよりも早いですが、しかしその差は4秒にも満たないという微妙なところです。これだけ平均の差が少ないと、同じM-1のネタでも最初の笑いまでの時間がラバーガールのコントより遅いものが結構出てくるわけです。こんな状況で「M-1の漫才はラバーガールのコントに比べて最初までの笑いが確実に早い」と言っていいのでしょうか。

 それを判断するため、t検定を使ってみることにしました。本当にザックリと説明しますと、t検定を使うことにより、ふたつのカテゴリーの差が明確にあるのかどうかを概ね判断できるようになります。つまり、M-1の漫才は、ラバーガールのコントよりも最初の笑いどころまでの時間が明確に短い傾向があるかどうかが大体判断できる。

 早速、エクセルをポチポチいじって計算してみました。t検定をエクセルで計算する方法については以下のページを参考にしました。

 その結果が下の表です。ちなみに「変数1」がラバーガールのコント、「変数2」がM-1グランプリ1回戦予選の漫才です。

 上の表のうち、「t境界値両側」よりも「t」の数値が小さく、また「P(T<=t) 両側」が有意水準である0.05よりも上回っていますので有意差は確認できず、ふたつのデータは同じ傾向にあると判断されます。ええ、何を書いてんだって憤りたくなるくらいの文章であることは十二分に承知しております。

 もっとザックリ言い表すならば、ラバーガールのコントとM-1の漫才、どちらも最初の笑いまでの時間は大体同じ傾向だと判断できるわけで、つまりタカアンドトシの指摘「ラバーガールのコントは漫才みたいだ」は正しかったということになります。また、これは即ち、ラーメンズのコントは漫才とも明らかに差がある、要はラーメンズのコントはM-1の漫才に比べて最初の笑いまで時間がかかる傾向にあるということでもあります。

 そもそもどうしてコントは漫才に比べて最初の笑いまでの時間が明らかに遅いのでしょうか。いろいろ理由はあるでしょうが、大きな原因は「コントはどうしても序盤に状況説明を入れなければいけない」という点でしょう。コントはとある場面を切り抜いた劇です。ですから、そのコントはどの時代のどの場所が舞台で、芸人はどういう役をしているのか、冒頭である程度説明する必要がある。漫才は違います。例外はありますが、基本的に漫才師として舞台に現れます。観客にどの場面のどんな役をするのかなんて説明する必要はない。ですから、状況説明なしにいきなりツカミのギャグで笑いを誘ったりできるわけです。

 しかし、ラバーガールの場合は状況説明をほとんどしないまま、開始十数秒でボケたりするわけです。時にはボケながら状況説明をする時もある。だからこそ、タカアンドトシは「ラバーガールのコントは漫才みたいだ」という感想に至ったのでしょう。そういう意味ではラバーガールは独特というか、一種の器用さを持ったコンビなのかもしれませんね。

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