見出し画像

油断できない世の中で油断していた話

 皆さんご存じの通り、何が起きるか分からないのが世の常です。油断してると思わぬアクシデントに巻き込まれたりしますが、油断しなくても思わぬアクシデントに巻き込まれたりする。じゃあ油断してても一緒じゃんと思って油断してると、油断していたためにより深刻なアクシデントに巻き込まれたりする。どうしたらいいんだと叫びたくなります。

 とある住宅地の細い道をジョギングしていた時のことです。たまに車とすれ違うんですが、何しろ住宅地の細い道ですので、皆さん速度を落として運転しているんです。そして、これまた皆さんご存じの通り、ゆっくり動いている車ですと、中の人の様子を確認するのもたやすい。

 社用車と思しき白い車とすれ違った時も、ドライバーの様子を確認できたんです。だから、ドライバーの動きが気になったんです。ドライバーは左手でハンドルを握っているのはいいんですが、右手はこちらに向かって手を振っているんです。その振っている手だって顔の横でございまして、明らかにこちらへ分かるような位置で挨拶してくるじゃありませんか。

 私はすれ違いざまに手を振り返そうとしたんですが、その0.2秒前に気づいたんです。ドライバーは手を振っているのではなく、自分の頬を触っているだけだと。もう手を振るかのように頬をこすっているんです。

 人間、そんなに頬をこすることがあるのか。どうしてそんなに頬をこすっているのか。小顔にしようと頑張っているのか。遠ざかる車を背に私は心の中でツッコミましたけれども、そもそも誰がツッコんでんだという話です。手を振っていると勘違いしたのは百歩譲って仕方がないとして、反射的に手を振り返そうとするのに至っては何を考えてんだと言わざるを得ません。知り合いでも何でもないのは最初から分かっていたはずなのに。油断しているにも程があります。

 これが5歳の頃の出来事とかならいいのですが、すっかり大人になってからの出来事なんです。というか、昨年末の話です。知らない人だろうが手を振られたから思わず振り返すなんて、大人のやることとは思えません。間違いなく精神が子供で止まっている。だから、あんなに油断できたんです。

 精神年齢とやらはどうすれば年を取ってくれるのか。常々考えているんですが、全く分かりません。何もしなくても勝手に増えてゆく身体年齢を見習ってほしいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?