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お尻ケアの自然人類学

 トイレで大きいほうをするたびにお尻をケアしなきゃいけないのはよくよく考えれば地味に手間です。そして、そんなことをしている生物を私は人間しか知りません。

 そもそもどうしてそんなことをしなきゃいけないかというと、不潔というのももちろんそうなのですが、何よりもまずお尻がかぶれるからです。まだ自分でお尻をケアできない赤ちゃんですと、オムツが外せませんし、それゆえに放置されるとお尻が大変なことになる。

 では、どうしてお尻をケアしないとかぶれるのか。いろんな理由がありますが、大きいほうに含まれる消化酵素が原因のようです。消化酵素とは胃や腸に入ってきた食べ物を消化する物質のことで、大きいほうをするとそれと一緒に消化酵素も体外に排出される。

 胃や腸といった消化管の内側は消化酵素が平気なようにできています。そうしないと食べ物を消化するたびに内臓がボロボロになっちゃいますから当たり前と言えば当たり前です。一方、お尻は消化酵素に耐性がない。つまり、大きいほうによるかぶれはお尻がライトに消化されているということですか。恐ろしい。いつも以上にお尻をケアしたくてたまらなく情報ですね。

 しかし、ケアをしないと大きいほうをするたびにお尻がライトに消化されるなんて人間はなんて不便な生き物でしょうか。どうして人間だけお尻のケアが必要なんでしょうか。

 軽く検索をかけてみましたら、人間が2足歩行をし始めたせいだとの記事を発見しました。2足歩行の結果、体重が2本の足に集中、その結果としてお尻の筋肉も発達し、肛門を隠すほど大きくなってしまったというのです。

 更に、2足歩行になった結果として肛門が下向きになったため、出口が緩いとドバドバ出てしまう構造になってしまいました。そのため、肛門は常日頃からキュッと締めておく形になりまして、これもまたケアが必要な原因となっているようです。

 その他の生物は人間ほど2足歩行マニアではないため、未だにお尻のケアが必要ないんです。例えば、犬や猫のような生粋の4足歩行マニアは肛門が横を向いているため、人間ほどキュッとさせる必要がない。何なら、大きいほうを出す時は一瞬だけではありますが直腸も外に出してるんです。人間がそんなことしたら脱肛と判断されて即肛門科行きですけれども、4足歩行マニアにとってはそれが正常なんですね。

 ということはです。人類は2足歩行になった時から、お尻のケアを運命づけられたということでしょう。トイレの歴史は当然のように古く、遺跡という遺跡に存在しています。

 また、それと合わせてお尻ケア用品も遺跡から出ているようです。紙の他に布や樹皮、ロープや石など、取れりゃ何でもいいのかよという重厚なラインナップです。

 ただ、どの段階から人がお尻をケアし始めたのかに関しては、ちょっと調べたくらいでは分かりませんでした。ここからは想像に任せるしかないようです。

 人間がどのようにして4足歩行から2足歩行になったのかは諸説あるようです。何かのきっかけで2足歩行に目覚めたのか、じわじわと2足歩行の頻度を上げていったのかも分からない。ですから、どの段階で人間はお尻のケアが必要になったのかもまだ全然分かってないと考えるのが自然でしょう。

 2足歩行になったため両手が使えるようになり、手での作業を始め、道具が使われるになったのは間違いないようです。しかし、人間がどのタイミングでお尻のケアが必要な身体になったのか不明ですから、どのタイミングでお尻ケアをするようになったのかも当然ながら不明です。

 お尻のかぶれに悩んだ時期もあったと思うんです。そして、誰かがお尻のケアを思いついた。最初は手だったかもしれませんし、スタートからその辺のものをケアの道具として使っていたのかもしれない。逆に思いつかず、お尻のかぶれに悩まされた人間もいたでしょう。ひょっとしたらそんな人間は滅んでしまったのかもしれない。だってそうでしょう。獲物を捕まえる時も危険から逃げる時も、いくらかぶれてムズムズするからっていちいちお尻を振ったり腰をくねらせたりしていては生き延びられるはずがありません。我らの祖先がお尻のケアに目覚めたタイミングはいつなのか。それを知るには人類の歴史を奥の奥まで詳細に掘り下げる必要があるのでしょう。唯一の方法と言ってもいい。

 ふざけた理由でうっかり自然人類学の扉を叩いてしまうところでした。危ない危ない。

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