健康法がUFOを呼ぶか

 一時期、ジョギングをしていると後ろ歩きをしている人が目についたものです。大体が中高年で、みんな散歩をする時の格好をしていました。最初は特殊な趣味を楽しむ方々だと思ってたんですが、その割には数が多い。それである日、ネットで調べたらそういう健康法があると知りました。一部で流行していた健康法だったんです。

 そんな流行のさなか、関東近県の某所に行った時の話です。とある集合住宅の前に広場がありました。そこはちょうどグラウンドのように一周数百メートルの楕円形を描いた道ができていまして、恐らくご近所の方々でしょう、そこをグルグルとウォーキングしている方々が結構いらっしゃったんです。

 しかし、その中に後ろ歩き派の人も混じっていたんです。比率にして前歩きが7、後ろ歩きが3でしょうか。そして、前歩きにも後ろ歩きにも時計回り派と反時計回り派が存在していた。はたから見るとなかなかの混沌です。遠い宇宙の果てからUFOを呼ぼうとしているのか、はたまた地中に潜む悪魔を召喚しようとしているのか。そんな感じの集団に見えてくるんです。

 そんな後ろ歩き健康法の一団もやがて数を減らしてゆき、今では全く見かけなくなりました。気になってネットで検索してみますと、ブームが終焉を迎えたとする記事を発見しました。理由にはいくつかあるようですが、最大の要因は「後ろ向きで歩くと転んで危ないから」だったそうです。

 後ろ歩きは通常の歩行に比べて危ないなんて人類の共通認識だと思っていたんですが、その危険性に気づかない人がいたということでしょうか。いや、さすがにそうではないでしょう。後ろ歩きが通常の歩行より危険だとは認識していたが、予想以上に危険だったのでしょう。そりゃそうです。ひっくり返った拍子に頭でも打てば下手すりゃ危険がデンジャーです。

 健康法はしばしば危険と隣り合わせのようです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?