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M-1グランプリ2023予選動画感想 3回戦10月31日その2

 M-1予選の時期になると、備忘録的な感じで感想を書き、書いたら書いたで勿体なくなってネットに載せるという癖が毎年蘇ります。そして、今年も蘇らせてしまいました。よろしくお願いいたします。

 今回はM-1グランプリ2023年の10月31日に開催された予選3回戦動画に登場した芸人の感想となります。なかなかのボリュームとなっておりますが、よろしければどうぞご覧ください。


1.ぺ/シモリュウ/ウイスキーカノン

1-1.ぺ

 高校の先輩と恋するネタです。
 ふたりとも敢えて極端で、時に意味不明な言動に終始しており、コント内では事実上ツッコミ不在の状態で最後まで行っています。テーマ自体はオーソドックスです。

1-2.シモリュウ

 ダイビングに行って金目のものを発見するネタです。
 海に潜り、金目のものを見つけ、仲間割れするを繰り返す構成となっています。かなり多くのものをその身で表現する必要があるネタですけれども、無駄のない動きで分かりやすく表現しきっています。

1-3.ウイスキーカノン

 バイト中に腹が立つことを話すと、話すテンポで相方が快感を覚えるネタです。
 ありがちな話題を前フリにして、話のテンポに焦点を置いたネタへ徐々に持って行くという独特なシステムのネタとなっています。独特ゆえ、まずはチュートリアル的なものを自然な感じで見せ、あとは基礎→応用と発展させていく見せ方となっており、独自システムを用いたネタの王道ルートとは言えます。

2.フミ/イノシカチョウ/チェリー大作戦

2-1.フミ

 手術する医者と患者のネタです。
 手術のシミュレーションをしてみるも、不穏な結果が垣間見え、相方がストップをかける。これを数回繰り返す形となっています。

2-2.イノシカチョウ

 刑事ドラマの取り調べをするネタです。
 「隠し事があると大きな声で否定する」というシステムを利用して、下着泥棒を取り調べようとするも、途中から刑事自身の秘密もボロボロ出てくる形になっています。「隠し事があると大きな声で否定する」がネタのメインのため、丁寧に前フリを用意しているのが印象的です。

2-3.チェリー大作戦

 探偵が犯人を言い当てる場面をやってみるネタです。
 探偵ドラマのベタな場面をベースに、「ネタ中にやるコントが憧れの場面すぎて緊張してしまう」という独自システムを組み込んでいます。そのため、なかなか探偵役に入り込めない相方に変わって場を繋いだり相方の緊張をほぐしたりと、探偵コントではなかなかみない笑いを誘発させています。その理由として、独自システムに入るまでの過程が自然で必然性がある点も大きいと思われます。

3.ツートライブ/ダブルヒガシ

3-1.ツートライブ

 参加しているライングループの名前が大体痛いネタです。
 ライングループの名前を軸に、ダブルブッキングしたり、格好つけたり、グループの妙な特性を説明したりしていく形となっています。今まであまりネタとして扱われてこなかったテーマに様々な要素をつぎ込みつつも分かりやすく仕上げているのが特徴です。

3-2.ダブルヒガシ

 バッティングセンターでプロを目指すネタです。
 超人的な野球能力を持っているのにスカウトの存在に気づいた途端、急に緊張して訳の分からないことをやり始める流れになっています。ただ、闇雲に超人的な能力を登場させているわけではなく、ツカミでバッティングセンターに通い詰めることを示唆し、超人的な能力に必然性を与えている上、ツカミとしてキチンとウケも取っているなど、小技がかなり効いています。

4.バッテリィズ/ザ・布団/空前メテオ

4-1.バッテリィズ

 車の運転免許を取るにあたり、運転に必要な知識を伝授するネタです。
 これまでも長きにわたりネタにされ続けてきた、教習所試験の理不尽な問題や教わるけど実際にはまずやらない行為などをいじる形ではございますが、いじっている人がアホのため、「言ってることは分かるけどどこかアホ」という独特な形になっています。冒頭の、軽トラのツカミでさりげなくアホっぽさを出してフリにしてあったり、「理解できないこと」が怒鳴る必然性にちゃんと繋がっていたりと、アホで短気ないじりが笑えるようになるお膳立てがきちんとなされています。

4-2.ザ・布団

 「30まで童貞な人は魔法使いになる」という話から、魔法についてあれこれ話すネタです。
 魔法についてのベタな話をすると「魔法詳しいな」と言われ、しまいには魔法使い、すなわち童貞だと言われる流れとなっており、1回戦のネタに手を入れたものと考えられます。基本的な注目点は1回戦と同じで、展開を少し広げた形になっています。

4-3.空前メテオ

 「犬は多種で猫は1種類しかいない」と主張し、その理由を語ってゆくネタです。
 間違った理詰めで笑わせる形となっており、最終的には猫を含めた万物が犬であるかのように主張するところで落ち着きます。ネタの性質上、間違ったところへなるべく分かりやすく簡潔に導く必要がありまして、この組の場合はビール腹やラーメンなど、身近な単語を経由させることで実現させようとしています。

5.ポートワシントン/釈迦虎/イチオク

5-1.ポートワシントン

 世の老夫婦は2文字で会話していると主張するネタです。
 使える文字の数や種類を制限するネタ自体はチラホラございますけれども、それらの中ではストーリー性がかなり重視されているように見受けられました。そして、自らが制定したルールを自分で破ってしまうところが何気に新しいかもしれません。少なくとも盲点であり、それゆえにかなりウケた可能性は充分に考えられます。

5-2.釈迦虎

 自動車免許の更新時にする講習のネタです。
 違反者教習なのにやたら意識の高い生徒と、やたらと意識が低い講師という構造を維持したまま、話が進んでいきます。教習所の身も蓋もない内情をぶっちゃけるところが、王道とはいえかなりウケておりまして、実際にバイトしたことがあると冒頭で言った点も少なからず影響を与えていると思われます。

5-3.イチオク

 的屋のくじ引きをするネタです。
 当たりを引こうと頑張るも、的屋のおじさんとのキスばかり引いてしまう話となっています。オチを固定してそれまでの経緯を変化させるという、珍しい形式のネタとも言えます。

6.もも/黒帯/チューリップフィクサー

6-1.もも

 描いた漫画を様々な雑誌に送るネタです。
 描いた作品の雰囲気と送る雑誌のイメージにおけるミスマッチを笑ってもらう形式となっています。雑誌の一般的なイメージの把握や描いた漫画の作風がズレてしまうと全然笑えなくなる危険性がございますけれども、適切な具体例を持ってくることにより、うまく笑いに繋げています。

6-2.黒帯

 様々な長寿番組の1回目を紹介するネタです。
 当たり前すぎるものを敢えて出す形のものはこれまでもございましたけれども、それに「長寿番組の1回目」を加えて新しい見せ方を開発しております。ナイトスクープ1回目になると「当たり前」の解釈を変え、本当の探偵を持ってくることで話に変化をもたらしております。同じことを繰り返しているはずなのに大きく変わっているように見え、こういうことができる方がこれまであまりいらっしゃらなかったように思います。

6-3.チューリップフィクサー

 ボケがひたすらギャグを繰り返すも、その合間に本当の自分が助けを求めるネタです。
 何かの合間に全く別のことを言い、その「別のこと」をメインに話を進めていく、割と珍しい形となっています。ボケのキャラクターがかなり出来上がっており、それを「呪い」と称することで「本当の自分」感に現実性が増し、笑いどころが限られる形式でも一発一発が強めに決まっているものと考えられます。

7.ハイカロリーズ/ドーナツ・ピーナツ/軍艦

7-1.ハイカロリーズ

 電車の英語アナウンスやプロレスのリングアナウンサーをやるネタです。
 本物が本気で悪ふざけをするという、いわゆる「プロの犯行」を真正面からやっております。ネタ自体はもともとあるアナウンスをもじったり改変したりすることがメインの、王道寄りの形式となっております。

7-2.ドーナツ・ピーナツ

 バーベキューが好きな人と嫌いな人が言い争うネタです。
 喧嘩をしながら話題を進めていく形は非常によく見られますけれども、相手の言葉尻を捕らえて笑いに繋げる手法がかなり決まっていたように思われます。本来は常識的な発言が求められるツッコミ側がちょっとおかしな主張するわけですが、何気にまず見ない視点だったことも効いていると考えられます。

7-3.軍艦

 おせち嫌いがおせちのチェーン店を考えるネタです。
 おせち嫌いが徐々にちゃんとしたアイデアを思いついていくのが主な流れであり、途端におかしなアイデアになることで話を変化させています。序盤のおせちに対する批判やいじりが、後半のおせちチェーン店の良さを際立たせる役割を果しています。

 今回の感想は以上になります。ではまた。

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