笑いに関する名言集――必要な笑い
いろんな人がいろんな名言を残し、それをいろんな人が見聞きしているほど、世の中は名言に溢れていると思うんです。名言集も山ほどある。でも、その割に笑いに関する名言集が少ない。そう感じた私、笑いに関する名言だけをかき集めてはまとめ、こうやって公開しています。
ここでは笑いの名言を以下のみっつのどれかに当てはまるものとしました。
今回は必要な笑いについて触れている名言をいくつかご紹介します。
笑いと一言で言っても様々なものがございます。嬉しさの余り込み上げる笑顔もあれば、誰かを馬鹿にする笑いもある。中には、なくてもいい笑いだってあるでしょう。同時に、必要な笑いもある。
少なくとも、そう思っている人はいるようで、「笑いは必要だよ」と遠回しに言っている名言がそれなりにございます。今回はその一部をご紹介いたします。
まずはこちら。
マイクロソフトの創業者であり、人類有数の富豪としても知られるビル・ゲイツの名言でございます。
そもそも独創的なアイデアとは世の中に全く出回っていない考えですから、理解してもらうのも難しい場合がある。時には世の常識から外れすぎて、思わず笑ってしまうものもあるでしょう。だから、笑われるというのは逆に独創的なんだとゲイツは勇気づけるわけです。他人の嘲笑を独創性の裏付けにしてしまえということですね。
別の見方から述べるならば、独創的なアイデアというのは笑われがちなのだから、仮に笑われても落ち込むことはないと言いたかったのかもしれません。笑われたアイデアだって形にしてゆけば、周囲の反応も次第に感心へと変わるかもしれないんです。
ただし、自分のアイデアを笑う人間は他人とは限らないようです。
イギリスで生まれ育ったバートンは人類学者や作家、「千夜一夜物語」の翻訳など様々な活動で知られていますが、最も有名な活動は冒険家でございまして、アフリカでナイル川の源流を探す旅に出たりしています。
いわゆる「深夜のテンションで思いついたアイデアはロクでもない」の法則ですね。朝になってから冷静に考えろというわけです。
ゲイツの主張が間違っているとは思いませんが、他人に笑われるものの全てが独創的とも限らないでしょう。単純に問題のあるアイデアの可能性もある。じゃあ、どうするか。朝になって自分で見て、「何だこれは」と鼻で笑えるようになる冷静さくらい持っておけということでしょう。
このように「自分を嘲笑する」行為の必要性を説く名言は他にもございます。
ジョンソンはアメリカの医師でございまして、1998年に発売した自己啓発本「チーズはどこへ消えた?」がベストセラーになったことで知られます。
自分はダメな人間だと思うことが良くないとされる考え方もあるようですが、ジョンソンの場合は逆に自らの愚かさを嘲笑うことで今までの自分に見切りをつけ、新しい自分に向かって歩みを進めることができると主張します。
自分をダメだと思うな、と言われてもつい思ってしまう。ひょっとしたら、人間はそういう風にできているのかもしれない。だったら、それをうまいこと使ってみよう。そういう考えに基づいているのかもしれません。
切り口の違う「必要な笑い」の名言もございます。
「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」は、いわゆる映画「男はつらいよ」シリーズの32作目でございまして、1983年公開でございます。上記セリフを言っているのは渥美清さんが扮する主人公、車寅次郎でございまして、同作の脚本は監督も兼業している山田洋次さんと、脚本家の朝間義隆さんでございます。
レントゲンのように笑う必要はないけれども、別に笑っても構わないようなところでは、笑った方がいい、との主張でございますね。確かに、笑顔は自分も周囲も明るくさせる効用がございます。
ただし、それだけではないということを教えてくれる名言もございます。
野際陽子さんは昭和から平成にかけて活躍した役者です。最初はNHKに入局してアナウンサーとして活動、その後、役者としてデビューし、代表作に「浅見光彦シリーズ」や「TRICKシリーズ」が知られています。
不機嫌な表情をしていると、普段の顔にまでそれが染みついてしまうから、笑った方がいいですよ、という考えでございます。言われてみれば確かに、ずっと眉間にしわが入ったままの方をたまに見かけます。生まれた時からしわついていたならばまだしも、生まれた時の眉間が平らだったのだとしたら、やっぱり笑顔を多くしておいたほうがいいのかもしれないなと思います。
こんな名言もあります。
佐藤一斎は江戸時代の儒学者でございまして、代表作「言志四録」は指導者のための本として現在でも知られています。
上記名言を現代語訳しますと、「呼吸は自然の音楽、談笑も人の心を和らげる音楽である。手をあげ足を動かす礼である」となるようです。ザックリ略してしまえば「談笑っていいよね」ってことでしょうか。
なんか疲れていたリ、ちょっと思い悩んでいても、何の生産性もない談笑を軽くするだけで心身が楽になる場合は意外と多いのではないでしょうか。そんな不思議な談笑の力を、佐藤一斎もまた知っていたのだと思います。
なんか健康法みたいな話になってきたので、最後はもっと健康法っぽい名言で締めたいと思います。
横井也有は江戸時代の国学者であり、俳人としても知られています。
中でも、横井が提唱したとされる「健康十訓」、つまり健康になるための10のアドバイスが知られています。原文でも何となく意味が分かるでしょうけれども、もうちょっと柔らかな言葉で書くとこんな感じでしょうか。
肉は少なく、野菜は多く。塩は少なく、酢は多く。砂糖は少なく、果物は多く。食べる量は少なく、噛む回数は多く。着衣は少なく、入浴は多く。車移動は少なく、徒歩移動は多く。思い煩うのは少なく、睡眠時間は多く。怒るのは少なく、笑うのは多く。発言は少なく、行動は多く。欲するのは少なく、与えるのは多く。
ちなみに、横井のものとされる健康十訓はいくつかのバージョンがございまして、それぞれ細かな点が異なっていますが、おおよそ似たようなものにまとまっています。
こんな健康法を提唱した横井は健康的な人生を送れたのでしょうか。ウィキペディアを見る限り、少なくとも一度は病気になってはいるようですが、82歳まで生きています。ちなみに、江戸時代の寿命をネットで検索したらおおむね30代から40代程度だと考えられているようです。
もちろん、本人が生まれ持った性質も影響しているとは思いますけれども、健康十訓が長寿の一因になっているのかもしれません。つまり、健康のためには怒るのを少なくし、笑いは多くした方がいい可能性が高いのだと考えられます。
◆ 今回の名言が載っていた書籍
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