著書で癖をさらしていくスタイル

 学校で先生が読めと勧めるから本って大層なものだと思い込んでいましたが、実際にいろいろ読んでみると「なんでわざわざこんなことを書いてんの」という内容のものが結構あるんです。もちろん、ここもまたその一群に入っています。

 さすがにそんなことを書いた本は学校の図書館ではあまり見られないでしょうが、書店でちょっと探せばまあ出てくるんです。家族の誰かが買ってきて本棚に突っ込み、それを別の人が手に取るといった出会いもあるでしょう。今回取り上げる本もまた、そういう経緯によって私の手に渡って来た本でした。ただし、どんなタイトルで誰が書いたのか、全く覚えておりません。覚えているのは本の内容、それもごく一部だけです。

 内容の一部だけを覚えているのにはわけがありまして、それまで普通に真面目な内容のエッセイが続いていたのに、いきなりセクシーな映像作品の話に移ったからなんです。それだけでもビビったんですが、著者は更にこんなようなことを書いていたと記憶しています。

 最近のセクシーな映像作品は女性が自分から積極的に楽しんでいるものが多くて大変にけしからん。昔は困窮した家庭の娘が生活のために仕方なくしているところが作品にもよく出ていて、それを罪悪感の中で見ていたから良かったのに、やけに楽しそうにやっていたらそれを見た若者がそっち方面に乱れてしまうんじゃなかろうか。

 いわゆる「最近の若者は」的な主張なんですが、「最近の若者は」主張にもいろいろあるんだなあとなんだか感心してしまいました。

 ただ、気になる点もあります。この著者は何気に自分の性癖をばらしちゃってる気がするんですが、大丈夫なんでしょうか。これじゃ自分はそういう類のセクシーな映像作品が好きですと書いてるようなものです。

 そもそもセクシーな映像作品というのは作品ごとにテーマがあるわけで、女性が楽しんでいるような作品もあれば、借金のかたで嫌々やっているような作品もある。それはあくまで作風の違いであり、作品中で楽しんでいたり嫌々やっていたりするのが事実とは限りません。演技や演出の可能性もございます。しかし、著者の主張を読む限り、作品内で起きていることをマジのものとして受け止めているように考えられる。「どんだけピュアなんですか、男子中学生じゃないんだから」というツッコミを禁じ得ません。

 「最近の若者は」という論調で書いていることからも、著者は本を書いた時点で結構な年齢だったと予想されます。そんな年齢になって、いつどこでどうやって最近のセクシーな映像作品と出会い、文章にまとめられるほどじっくり鑑賞したのかも気になるところです。

 いずれにしろ、人生のベテランが思わぬところで最近のセクシー映像作品をじっくり鑑賞してしまい、そのあまりのジェネレーションギャップにうっかり変な「最近の若者は」論を書いてしまったということでしょう。その本を読んだ当時はそう思っていました。

 しかし、今になって考えると改めて「どうしてわざわざこんな文章を本に載せたんだ」との疑問にぶち当たります。別に他の内容でページを埋めてもいいはずだし、やろうと思えばできたはずなんです。

 ひょっとすると著者は自分の性癖を世間の人に読んでもらうことに喜びを感じていたのかもしれません。何しろ著者は人生のベテランです。セクシーな映像作品なんてもうすっかり楽しみ尽くしていた可能性がありますし、なんならもっといろんなことを楽しみ尽くしていたかもしれない。結果として、生半可な楽しみでは満足できなくなった。じゃあ、どうすれば新たな境地に達せられるか、著者はきっと考えたことでしょう。そして、自分の性癖を本にして出版し、広く見てもらったどうだと思いついた。そして行動に起こした結果が1冊の本に結実し、紆余曲折あって私の手に渡った。

 なるほど、それはおみそれしました。思ったより全然レベルの高い方だったんですね。男子中学生とか言ってすいませんでした。

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