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犬の部下でも気にしない

 20年くらい前に「犬を飼い主の前に歩かせてはいけない」という主張があると知りました。その理由は、犬が「自分は飼い主より偉い」と勘違いするから、みたいな感じでした。

 犬は社会的な動物だから周囲のものに順位をつけ、見た目や行動などで自分より上か下かを判断している。散歩の時、自分より後ろを歩いているものは自分より下だと判断しがちである。だから、飼い主は散歩の際、犬より前に出るべきだという結論のようです。

 やけに根拠が具体的で、まるで犬だった経験があるかのような断言っぷりです。不思議なもんで、どんな主張でもピシッと断言するとやっぱり正しく聞こえそうになるんです。だから、当時は事実として受け入れている人が多く、どうにかして犬の前に歩こうと悪戦苦闘している飼い主を見かけたこともあります。

 この文章を書くにあたり、改めてネットで軽く検索してみましたところ、「そんなことはない」という意見が多く引っかかってきました。「そんなの性格による」とか「犬に序列をつける能力はない」とか、主張は違えど、やっぱり犬経験者みたいな断言っぷりのページがそこそこ出てきます。

 誰かが何かを主張すれば「いや、それおかしいでしょ」と反論が飛んでくるのは何も珍しい話ではありません。ひょっとしたら散歩業界の中で激しい論争があったのかもしれない。ただ、今のところは犬の考えていることはまだよく分かっていないようで、推測の域を出ていない印象です。

 仮に間違っていたとしても、どこかで誰かが「こうすべきだ」と主張するとなんか言うことを聞いてしまうもんです。その傾向が強い私は、変な口出しをしてくる人物に気をつけなければならないんですが、この「犬を前に歩かせるな」派の主張には全然従いませんでした。理由はそもそも犬が従わないからです。どうやったって散歩が始まれば尻尾を振り回しながらいつもの道を全力疾走し、私はグイグイ引っ張られるだけです。いくら犬の前に出ようとしても、本気を出した犬に人が追いつけるはずもありません。

 もちろん、「犬に『自分より序列が下』と思われるよ」などとやんわり忠告する人はいました。でも、私は組織が問題なく回るんでしたらトップが犬でも全然構わない人間でございますので、気にしていませんでした。当然ながら、組織が問題なく回るんでしたらトップが犬じゃなくても全然構わない人間でございますから、現在のように「犬が序列を決めてる説」が否定され気味の世の中でも、特に変わらず全力疾走する犬を後から追いかける散歩をしています。

 情報に振り回されないためには無頓着が最強ってことなんでしょうか。なんか違う気がします。

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