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お笑い芸人が向こうからやってくる

 現在のお笑い芸人はバラエティはもちろん、ドラマや情報番組など様々なところに進出しているため、テレビをつければ簡単に見られるようになりました。もちろん、ネットでも広く進出していますから、そこまでこちらから積極的に向かっていかなくても見られるようになってきた。

 しかし、直に見るとなると、今でもこちらから積極的に向かっていく必要があると思うんです。直に見られる場としては、例えばライブだったりイベントだったり撮影の観覧だったりになると思うんですが、いずれにしろこちらから向かっていかないと参加できないものばかりです。他に出会うとなると、道端で偶然見かけるくらいがせいぜいで、普通に生活しているだけでお笑い芸人からネタを見せてくれるなんて、よっぽと特殊な立場の人に限られます。そう思ってたんです。

 私の知人、ここでは仮に石原さんとしておきますけれども、石原さんもまた特殊な立場の人ではございませんので、仕事やプライベートでお笑い芸人と出会うような生活を送ってはおりません。ただし、住んでいる場所が若干独特でございまして、周辺に教育施設が多い。いわゆる文教地区と呼ばれる場所なんです。

 石原さんが出社のために駅へ向かうと、いつも小から大に至るまで大量の学生とすれ違うそうで、「日本が少子高齢化社会なんて信じられなくなる」とのこと。文教地区ならではのエピソードなんでしょう。

 そんな石原さんなんですが、とある一時期だけ、特にゴリゴリ動かなくても近所で芸人が見られるそうなんです。その時期とは、学園祭の時期でございます。

 お笑い芸人の方々がしばしばトークで紹介することからもお分かりの通り、学園祭への営業が珍しくないと申しますか、現在ではむしろお笑い芸人を呼ばない学校の方が少ないのではないかと思えるほどになっております。学園祭シーズンになりますと、あっちの大学でもこっちの大学でもお笑いライブが開催される。しかも、ある程度の条件を満たせば無料で見られるところも結構ある。

 ですから、文教地区に住んでいる石原さんは、学園祭シーズンの時に限っては、気軽にお笑い芸人のネタを見に行ける立場へと変貌を遂げるわけです。私が「向こうからお笑い芸人がやって来てるじゃないっすか」と羨ましがったら、石原さんは笑っていました。

 というわけで、向こうからお笑い芸人が来てほしい方が取れる現実的な選択肢として、「文教地区に住む」がかなり有力なんじゃないかというお話でした。多分、今頃の石原さんはまた向こうからお笑い芸人がやってくる立場に変貌していると思います。

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