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洗濯過剰生活

 大きなマンションをぼんやり眺めているだけでも、家は住む人の個性が出るもんだなと思うわけです。分かりやすいのが洗濯物ですね。割と毎日のようにバンバン洗濯物を干している家があれば、日曜の晴れた昼下がりでも全く干していない家がある。

 干していない家をよく見ると、窓には綺麗なカーテンがかかっていますから人が住んでいるはずなのに、ベランダには物干しざお一本ない。不気味なまでのスッキリさです。

 こういう家の方は、洗濯物をどうしているのでしょうか。前々から気にしていたお陰で、今ではいくつかの仮説を思いつくに至っています。仮説の本命は「部屋干ししまくってる説」、対抗は「コインランドリーを使いまくってる説」、大穴は「着た服から捨てまくってる説」でございます。実際に合っているのかどうかは分かりません。

 他にも、ベランダに大量の植木鉢を置いて疑似樹海を作ろうとしているお宅ですとか、はしごとかタイヤとか謎なものを前衛芸術作品みたいに積み上げているお宅ですとか、家の外側からでも住民の不思議な生活習慣の一端を垣間見えるものです。逆を言うと、熱心に家を覗かなくても自分の生活習慣が何となく外にバレてしまう可能性があるわけで、なかなか恐ろしい話でもあります。

 さて、近所にございますとある集合住宅にも、住民の不思議な生活習慣が漏れ出しているベランダがございます。こちらも洗濯物がらみではあるんですが、逆に多いんです。建物の大きさ的にどう考えても間取りはひとり暮らし用のワンルームなんですけれども、ベランダ中にわんさか干してあるんです。カーテンを閉めなくても洗濯物で室内が見えません。

 もちろん、ひとり暮らしだってわんさか干す日はあるでしょうけれども、このお宅は毎日のように異なる洗濯物を干しているんです。屋根があるベランダなのをいいことに、晴れの日も雨の日も、台風の日だってかまわず干している。しかも、アウターばかりです。恐らくインナーは部屋干しなんでしょうけれども、だとすると見た目以上に大量の洗濯物を日々干していることになる。

 洗濯物を全く干さないお宅も不思議ではございましたけれども、干しまくっているお宅もまた不思議でございます。一度、干されているアウターの量から計算してみたんですけれども、ワンルームにコッソリ4~5人住んでいるか、4時間に1回のペースで着替えているかしないとあんな量の洗濯物は毎日出せないんです。あれだけ大量のアウターを、洗濯が必要になるまで汗まみれにできるなんて、どんな生き方をすれば可能になるんでしょうか。地味に難易度の高い生活です。

 他の人ともこの不思議さを共有し、場合によってはそんなに洗濯物が出る理由を予想してもらいたいなあとも思ったのですけれども、こんな話を友人知人にしたところで、私が「他人の洗濯物ばかり気にするキモいやつ」にされるに決まっているので、せめて気味悪がられるのはネットの中だけにしておこうと思い、こうやって書いてみました。

 個人的には、あの量じゃあ気になって仕方がないと今でも思っています。

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