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そんなもの集めてどうするつもり

 ジャガイモが好きなんです。なので、知人から「うちの実家から大量のジャガイモが届いてさ、よければ要る?」と聞かれた時は、食い気味に「要る要る」と答えました。本当のジャガイモ好きをアピールするために、その昔、通販で北海道からジャガイモを30キロ購入してひと冬の間にひとりで食いきった話をいたしました。

 知人は「そんなに好きなら」と、わざわざ車で家まで届けに来てくれました。30キロの時もデカい段ボールに入っておりましたが、今回もなかなかの大物でした。私は聞きました。

「どれくらいあるの?」
「15キロくらいだと思う」

 何だ前回の半分か、と思いかけてすぐにやめました。以前に30キロのジャガイモを食いつくしているから「前回の半分」なんて思ってしまうわけで、普通に考えたら15キロのジャガイモは充分に大量です。実際、15キロのジャガイモは手で運ぶのもちょっと大変な重さです。30キロ食べて感覚がおかしくなっている。私はその自覚を持つべきなんです。

 とりあえず、私が取った戦法は30キロの時と同じでした。ひと冬かけてゆっくり消費してゆく長期戦です。つまり、最後に食べるジャガイモは届けられてから数か月先になる。

 ジャガイモをもらって数週間が経った頃です。今日もジャガイモを食べようと段ボールを開けると、早くも芽を出し始めていました。確認すると、全てのジャガイモが一斉に芽を出している。さすがに、これにはビックリしました。ちゃんとジャガイモの保存に適した、暗くて涼しい場所に置いておいたのにどういうことでしょうか。

 恐らくは室温が関係していたのだと思います。30キロの時に住んでいた家は冬になると室内でも平気で息が白くなる仕組みが出来上がっておりまして、油断すると慣れ親しんだ我が家でも低体温症になりかねない過酷な環境でございました。しかし、15キロの時の家は冬でも外の空気をそれなりにシャットアウトしてくれるのか、そこまで寒くならない。

 人にとって暮らしやすい家は、ジャガイモにとっても暮らしやすいようで、「なんかポカポカしてんな、芽でも出すか」と判断してしまったようなんです。ジャガイモを育てたいのだったら問題ないんですが、食べたい場合はかなり困ります。ジャガイモの芽には毒があるからです。発芽に栄養を持っていかれるのも問題です。

 仕方ないと思った私、ジャガイモの芽を一つひとつ切除することにしました。切除した目は要らない小箱に入れて、ジャガイモのそばに放置しておきました。なぜそんなことをしたのか。どうせ食べきる前にまた芽を出すに決まってると思ったからです。

 かくして、私の推測は当たりました。毎日毎日、少しずつジャガイモを消費していると、そのうちジャガイモの表面から白い突起物がチラホラと確認できるようになりました。数週間前に切除したばかりだというのに、なんという生命力でしょうか。早速、再切除でございます。2回目ともなると慣れたもので、スムーズに切除できました。

 3度目も同様でした。ただ、ふと要らない小箱を見ますと、結構な数の芽が溜まっております。ジャガイモの芽は先ほども書きました通り、毒がございます。口に入れると吐き気や腹痛に見舞われ、大量に摂取すると命に係わる場合もあるそうです。

 私の状況を客観的に見ると、大量にジャガイモを仕入れて暖かいところに保管し、せっせと芽を集めているようにも見えます。そんなもんを集めて何をしているのか。良からぬことに使うつもりではないのか。そんな疑いをかけられかねない。そう思った私、サッサと芽をゴミ箱に捨てた次第です。

 ちなみに、ジャガイモは年を越す前に全て食べてしまいました。やっぱり15キロは30キロの半分だったということでしょう。当たり前の話すぎて馬鹿みたいな結論に至ってますが。

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