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おじいさんは敢えておじいさんっぽくしているのか

 私が選挙権を持つ前から「若者は選挙に行かない」と言われていました。若年層ほど投票率が低く、そういうことを取り上げるニュースに出てくる「若者」は、七色の髪をしていたリ、それどう考えてもグーは無理だろみたいなネイルをしていたりと、いかにも選挙に行かなそうな、逆にそれで選挙に行くとかどういうつもりだみたいな、そんな外見の人が選挙に行かない理由を語っていた気がします。

 以降も選挙があるたびに「若者は選挙に行かない」とか「政治に感心がない」とか言われてきました。もうずっとです。でも、その間にも時は確実に流れています。そうすると、若者に属していた人も気づけば若者ではなくなっていきます。それは当たり前の話なので別にいいんですが、なぜか世間の扱いが「選挙に行かない」状態でもなくなってしまってるようなんです。

 私は選挙にこそ毎回行ってますが、じゃあ政治に詳しいかというと全然そんなことはない。誰がどんな政策を主張しているのかはおろか、地元の候補者が選挙ポスターを見て初めて存在を知る人ばかりだったりします。そして、そんな激ゆるの状態がずっと続いている。なのに、年齢が「若者」から遠ざかっていくにつれて勝手に「ちゃんと選挙に行ってる世代」「しっかり政治に興味を持ってる世代」みたいな扱いになっていくんです。

 もちろん、年齢による変化は誰しもあると思うんです。年齢を重ねるにつれて、七色の髪も強烈なネイルもしなくなっていき、みんな落ち着いた外見になってゆく。しかし、変わらない部分もあると思うんです。昔からの癖だったり趣味だったり好みだったりをずっと引っ張っている人は少なくない。そのはずなのに、年齢を重ねると何でもかんでも全部変わっていると見なされている気がするんです。

 年齢を重ねると選挙へ行く傾向があるのは事実なのかもしれません。しかし、世代で区切るとどうしてもザックリとした傾向ばかりが目について、各個人の特徴は無視されるようになります。酷い場合には分析する側が各世代のイメージに引っ張られてしまい、現実とズレた調査結果を発表してしまう場合もあるでしょう。

 逆に、各個人がそれぞれ世代のイメージに合わせてしまってる可能性もございます。つまり、「もういい年なんだし、選挙くらい行かなきゃな」と思って投票所に足を運ぶ、みたいな感じです。よくよく考えたら、いい年と選挙は関係なくて、選挙権があって投票所に行けるんだったら行っといたほうがいいものだと思うんですが、なんか年齢を理由にしてしまう。そんな人もいるかもしれない。

 そう考えると、みんながやっている振る舞いはご自身が本当にやりたくてやっているのか怪しくなってきます。「もういい年だし、こう振る舞っとくか」としている人が意外と多いのかもしれない。おじいさんがおじいさんのような言動をしているのは、ご本人が「もう年齢的にはおじいさんだし、あんまり世代に合わないことしてるとしてると周りがうるさいからおじいさんっぽくしとくか」と考えた結果かもしれない。だから、外では一人称を「わし」にしちゃったり背中を曲げて歩いちゃったりしているけど、自宅に戻った途端、姿勢がよくなって一人称も「俺」とかになってるかもしれない。何なら、薄い髪は実はカツラで、下から七色のフサフサヘアーが出てくるかもしれない。居間で人知れずキラキラなネイルを楽しんでいるかもしれないんです。

 世間は思ったよりも奥深いのかもしれません。

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