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R-1グランプリ2023復活ステージの感想

 R-1グランプリ2023の決勝前日、復活ステージと称されたいわゆる敗者復活戦が行われまして、公式YouTubeチャンネルにも動画が上がっています。それで、簡単な感想を書いてみたんですが、せっかくなのでnoteに載せて見ました。大体いつもの流れです。

 今回は公式YouTubeチャンネルに動画がアップされた順番に書いてあります。芸人の名前は敬称略となっています。では、早速参ります。

1.真輝志

 コント。距離的に無理があるのに痴漢に間違われるネタです。
 「距離的に無理がある痴漢」一本でずっと行き、行為や距離を徐々に大きくしていくことで発展を目指す形式となっています。一定の方向に一定のペースで変化していく、線形的なネタです。

2.本多スイミングスクール

 コント。市民プールに現れたひったくりを捕まえる場面のコントを進行しつつ、敢えてプールにおける間違った行動をし、それを指摘してゆくネタです。
 とある一場面を切り取ったコントを進めながら、様々な間違いを指摘するわけですが、みんなが知ってるようなあるあるだったり、みんながあまり知らないあるあるだったり、真っすぐにボケたと、切り口や見せ方が多彩です。構成自体はコント中に間違いを指摘し続けるという、ひとつのシステムを貫く形になっているため、その分、間違い指摘のところでかなり変化をつけているのだと考えられます。

3.ヨネダ2000 誠

 コント。鼻毛催眠術師が帰省するネタです。
 変な人が変なことをする。そういう意味では意外と王道なのかもしれません。ずっとおかしなポイント、ここでは鼻毛をつかっていろいろやり続けるところも王道な感じです。鼻声になっているのはわざとなのか不可抗力なのか気になります。ご自身が全く触れていないので不可抗力な気もしますが、芸風が芸風なのでわざとの可能性も充分に考えられます。

4.9番街レトロ 京極風斗

 フリップ芸。突然、観客にキレ始め、「舐めてるとこんなことするぞ」と言ってフリップで「こんなこと」を次々見せてゆくネタです。
 「こんなことしてやるぞ」と言って見せているものは、基本的には日常のちょっとしたトラブルを見せてゆく「あるある」となっています。キレ方や動きなど、フリップ以外にも楽しみどころを作ろうとする工夫が見られます。

5.トンツカタン お抹茶

 コント。コートを着た露出狂みたいな感じでプラネタリウムを見せる人のネタです。
 妙な歌詞の歌を披露しつつ、合間にお便りコーナーをしたり、母親から仕送りをもらったりして変化をつける形となっています。全体の流れは起承転結をきっちりつけるかなりの王道寄りです。妙に自信なさげなのは、そういうキャラクターを演じているのでしょうか。

6.清川雄司

 大道芸と言っていいのか。鍵盤ハーモニカを演奏しながら紙を切るネタです。
 鍵盤ハーモニカのペース配分がうまくいかず、曲の終わりと紙切りの終わりが全く合わなかったり、そもそも紙の切り方がなんか変で鍵盤ハーモニカの演奏もたどたどしいなど、あんまりうまくできてなさそうなところをメインに笑ってもらう形になっています。「紙切りの作品は演奏している曲名と微妙にズレている」というものがオチになっていますけれども、今のところはメインの笑いどころにはなっていません。まだなんか面白い見せ方がありそうな感じがします。

7.もりせいじゅ

 歌ネタ。ナタデココやアボカド、パクチーの歌を披露するネタです。
 歌に合わせてリズミカルにダジャレを言っている。これで全て説明できる感じです。途中で違う曲にシフトして変化をつけてはいます。

8.シモタ

 コント。巨大なクリスタルを見つけて独り占めしようとするも、岩塩だったネタです。
 クリスタルかと思ったら岩塩だったり、改心した人に岩塩が何かあげそうな雰囲気を見せたと思ったら笑ってるだけだったり、中から今度こそクリスタル的なものが出てきたかと思ったら金平糖だったりと、短い時間でもどんでん返しをいくつも仕込んでおり、それをいいテンポで披露できています。そのため、最初の格好が出オチに終わらず済んでいます。

9.蛙亭 イワクラ

 コント。彼女が帰って来たからと外に締め出された浮気相手が、ベランダでいろいろ独白するネタです。
 1本の話として最初から最後までちゃんと繋がっており、出てくる小道具も無理のない感じで次々に使っています。突然、ワクチンについて言及しても、すぐに必然性のある設定を独白で入れてフォローしたりと、細かなところまでケアしているのが分かります。笑える悲しさかどうかがこのネタ最大のポイントでしょう。リアリティを出すには悲しさをいれなければいけませんし、あんまり悲しすぎると笑いが消えてしまう。そもそも、悲しさを笑いの適切な比率は人によって異なる。難しいところです。

10.鈴木ジェロニモ

 モニターを用いた芸。ボイスパーカッションをしながらモニターで絵などを見せて、その後、ボイスパーカッションの空耳を誘う文章を出すネタです。
 ボイスパーカッションを用いたお笑いの見せ方としては非常に新しいことをしていると思われます。図柄とボイスパーカッションをフリにし、空耳をオチにする形は面白いです。余計なトークを入れない判断もいいのではないでしょうか。内容も、最初は単語の羅列から、文章っぽいもの、最後は大会をいじるなど、いろんな切り口のものを織り交ぜています。こっち方面のネタをもっと突き詰めて、すごいより笑えるが勝るようなものをかき集めれば、もっと上にいきそうです。

11.やまぐちたけし

 フリップ芸。ではあるんですが、途中からフリップを忘れて漫談に入り、あとから漫談に追いつこうとするかのようにフリップをめくっていくネタです。
 冒頭の「ホテルの部屋番号」のくだりで分かる通り、もともと面白い切り口を見つけるのが得意な方で、なおかつ話もうまいんです。単純に漫談をやっても勝負できそうですが、更に独自性のあるフリップの使い方でネタをもう一段階上に持ち上げようとした格好です。謎のワードをいくつかばらまいておいて、それを後からフリップで伏線回収するなど、いくつかの仕掛けが施されてはいるのですが、話術に比べてここは発展途上な印象を受けました。つまり、まだレベルアップできます。

12.ハマノとヘンミ へんみ亮介

 コント。浮気した友人の元カレにビンタなどいろいろするんですが、それらが大体誰かのモノマネというネタです。
 割と王道ストーリーのコントに細かいモノマネをドンドン挟んでいく形式なんですが、馬鹿馬鹿しいミスマッチで単純に笑えます。有名なスポーツ選手から細かすぎて伝わらないもの、世相をいじったものまでモノマネの範囲も幅広く、モノマネを受けてのコメントもちゃんと聞いています。一般人の話としては滅茶苦茶なんですが、お笑いとしては必然性がある流れになっています。

13.徳原旅行

 コント。彼女のご両親に結婚の挨拶に行って断られるも、理屈でねじ伏せるネタです。
 冒頭の「自分は結婚したのに?」が非常に効いているネタです。理屈で説き伏せてゆくネタが得意なんだろうなと思わせる、スムーズな論理が特徴的ではあります。難しいのは、笑える嫌なやつになるか、ただ嫌なやつになるかの見極めでして、そういう意味ではお父さんに謝罪して拒否するところなど、危ない点が個人的には見られました。

14.ケビンス 山口コンボイ

 ショートコントということにはなってます。非常によく動くショートコントを披露はするんですが、すぐに体調を気遣うような行為に走ったりと、ネタが成立するかどうか危うい感じを敢えて見せるネタでした。
 いわゆる「『ネタをちゃんとやらない』というネタ」の典型です。わざと散らかしている感を出してはいるんですが、本当に散らかっているんじゃないかと思えるところもチラホラ見られます。笑いに繋がればそれもいいのではないかとは思います。

15.森本サイダー

 コント。コンビニの店員が小銭入れを使わない客ばかりなのにキレるネタです。
 序盤を除けば大体怒鳴っているネタで、怒鳴りつつも奇妙なアクションや言葉遣いでウケを狙っていく形になっています。怒り方は最高潮だと思うんですけれども、コンビニ店員のキャラクター上、理不尽にキレるタイプでもなさそうなので、さすがにそれだとちゃんとした必然性が必要になってくると思うんです。その必然性がネタの中にどれだけ仕組めていたかが、ネタのクオリティに直結しそうに見えました。

16.村民代表南川

 コント。熱血高校教師が馬鹿高校にFランク大学を物凄い熱量で勧めるネタです。
 「熱血教師が妥協しまくった進学先をしっかり提供する」という意外性をベースに話を展開していきます。その教師もまた馬鹿であることをちょっとずつ出していくことで、生徒に妙なことばかり勧める行為に必然性を持たせると共に、単純に馬鹿さでウケを狙うという一石二鳥の効果が出ています。

17.二代目ちくわぶ

 コント。重い机をどうにか運ぶために応援を頼むも、引きずる音に合わせてコーラスが始まるネタです。
 参加者が増えるたびにコーラスが重層になっていき、きちんと机を運びきれたと思いきや、運びすぎてしまうという流れはちゃんとしてます。展開のさせ方としては非常に王道的とも言えます。

18.ソマオ・ミートボール

 コント。サンタの代わりに妙なおじさんがリズムに合わせてクリスマスと反することばかり言っていくネタです。
 リズム芸の範囲内なのかもしれませんが、とにかく敢えてサンタらしからぬ言動をリズムの合わせてやっていくことに終始しています。変な人が変なことをするという王道コントにリズムを乗せた感じです。

19.赤木裕

 コント。卒業生代表の言葉に挑むも、台本を忘れアドリブで何とかしようとしていろいろ失敗するネタです。
 たどたどしいしゃべりが本当に上手な方で、このネタでもそれを遺憾なく発揮できています。オドオドしつつも、ウケを取れる言葉選びにも長けておりまして、それがキャラクターとしっかり合っているのが本当に不思議です。自身のキャラクターを把握していなければ到底不可能な芸当だと思います。

20.きしたかの たかのピエロ

 コント。客として占ってもらい、いろいろ正確に当てるんですが、どれも昔の嫌な思い出ばかりでキレるネタです。
 占い師に見てもらうという体で自分の恥ずかしい思い出をキレながら話す形式となっています。もともとキレ芸に定評のある方で、それを有効に活用していった形です。サラリーマン風の格好で仕事運を見てもらいに来ているのに、バイト先の居酒屋の話をするなど一見すると整合性に難のある個所がございますが、この流れでしたら「サラリーマンの体でやってる」と観客に思ってもらいやすいので、問題ないかと存じます。

21.まりんか

 大道芸メインの一言ネタ。大道芸をしながら「普段思っていること」と称していろいろ言っていくネタです。
 大道芸のすごさと言ってることのくだらなさの落差を楽しむシステムだと勝手に思っています。大道芸と一言ネタの関連性がほとんどないか全くないかのどちらかで、ふたつのネタが分離している構成と言えなくもないです。ちゃんと関連付けたものを入れても別に問題ないとは思います。

22.エルフ 荒川

 フリップ芸。偉人の名言をギャルっぽい言葉に変換していくネタです。
 ギャルキャラのため、言動が全般的にギャルで貫かれています。キャラクターとしてキッチリ仕上がっています。それだけに、もたついて素が出かかったりとか、「哲学者」なんて全然ギャルっぽくない言葉に全く触れなかったりとか、細かい点が浮き上がってしまうとも言えます。キャラが仕上がっているからこそ目につくとも言えます。

 今回の感想は以上です。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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