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ルートマップとのび太の宝の地図

 先日、たまたま気象学を研究している大学院生とお話したんです。と申しましても、向こうが専門家の卵なのに対し、私はほとんど何も知らない卵以下の存在です。なので、こちらから一方的に質問しまくるという、偏ったコミュニケーションを展開しておりました。

 気象学の何たるかを分かっていない人間が聞くわけですから、質問内容も「台風同士がぶつかったらどうなるんですか」みたいな幼稚なものばかりです。「ドラえもんにそんな話ありましたけど」と、補足説明に至るまで会話の幼さが止まりません。だが、しかしです。

「実は僕もドラえもんは好きでして、その話もよく知ってます」

 大学院生は普通に興味を持ってくれました。あまりに嬉しくて、大学院生がなんて答えたのかは忘れてしまいましたが、幅広い世代に親しまれているドラえもんの偉大さを実感した次第です。

 地質学を専門にしている大学院生とも話をする機会がありました。この方は山で地質調査をしているらしく、ボーリング調査などの本格的なものはもちろん、山を歩いてどこがどんな地質か書き記すルートマップなるものを書いてもいるそうです。

 一言でルートマップと言っても何をどれだけ書くかは、人によってかなり特徴が出るようです。地質ばかり記入する人もいれば、植生、すなわち、どこにどんな植物が生えてるかまで書く人もいるそうです。生えてる植物によって地質が推測できる場合もあるようで、植生まで書いてあるものは丁寧なルートマップなんだそうです。

 ただ、当然ながら山で見かけたものを何でも書けばいいわけではありません。大学院生は言いました。

「前に一度、ここでマムシを見たとかあそこでイノシシが走っていたとか、そんなことまで書かれたルートマップを見ましたよ」

 これを聞いて頭をよぎったのは先ほどのドラえもんトークです。素性がよく分かっていない相手でも通じるのがドラえもん。もう一般常識と言ってもいいレベルです。私は言いました。

「のび太が作った、のら犬・空き缶・紙くずを目印にした宝の地図みたいですね」

 大学院生は「ドラえもんにそんな話があるんですね」と笑っていました。ウケたのは結構なんですが、あるあるを共有するまでには至らなかったようです。

 ドラえもんくらいシリーズの多い作品ですと、覚えてるエピソードが人によって異なり、場合によっては通じないことがあるようです。「のび太」だけでいろいろ通じるのは、「ドラえもん」の偉大なところではございますけれども、そんな「ドラえもん」でも通じないものは通じない。

 便利なひみつ道具を過信しすぎて酷い目に遭う人みたいになってしまいました。

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