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みんなどこかで言い間違い

 日本語はどれくらいの単語があるのか軽く検索したら、日常生活だと数万語、難しいものも含めると数十万語という情報が出てきました。とにかくたくさんなのは確かなようです。

 これだけたくさんあればいくらネイティブスピーカーだろうと、間違って覚えている言葉がどうしても出てくるというものです。その昔、小論文の書き方を教わったことがあるんですけれども、その先生は言葉の意味を間違えないよう気をつけなさいと何度も何度も注意して来たんですが、その直後に「各々」を「かくかく」と読んだんです。もちろん、みんな誰も指摘できませんでした。それからも先生は「各々」を「かくかく」と言い続ける。立場上、先生は「実はこれは『おのおの』と読むのが正解で……」と指摘されづらいでしょうから、その先生は今もどこかで誰かに小論文の書き方を教えながら「各々」を「かくかく」と読んでいるはずです。

 友人と話をしている時にも言葉の間違いに気づくことがあります。友人は仕事でちょっと嫌なことがあったらしく、いささか愚痴っぽくなっていました。もともとちょっと気が短めなその友人は、他人の失礼な言動を見てイラっとしたそうです。その気持ちをこう言い表しました。

「手足が出そうになった」

 「手が出そうになった」なら分かるんです。「ひっぱたきそうになった」みたいな意味ですね。「足が出そうになった」だと「キックをかましそうになった」みたいな意味かと思ったら、「足が出る」だと「赤字になる」とか「ボロが出る」みたいな意味になるそうです。

 それでもまあ、まだ意味が通じる。「手足が出そうになる」はいよいよ意味が分かりません。そもそも攻撃するにしたって手と足を同時に出すのはどうやってもなんか格好悪くなるんです。皆さんもやってみてください。私は壁に小指をぶつけた後、だらしない格好で床に転倒し、大いに自己嫌悪に陥りました。

 当然ながら仕事中にも他人の言い間違いと遭遇することがあります。打ち合わせ中、相手の方が仕事に対する真剣さを出そうとしたのか、こんなようなことを言いました。

「我々は血のこもった支援を目指しています」

 「心のこもった支援」とか「気持ちのこもった支援」なら分かるんです。もしくは「血の通った支援」ですね。そのふたつを合体させるから何だかおかしなことになるわけです。これでは支援に血豆ができたかのようです。

 そう言えば、私の母はヨットパーカーを見てジェットシーバーと言いました。これに関しては母の中で似ていると錯覚している単語を適当に持ってきただけで、理屈も何もあったもんじゃありません。いや本当に、適当な発言にも程があります。

 こんなことを書いている私も絶対にnoteのどこかで恥ずかしい間違いをしているはずですので、よかったら探してみてください。

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