見出し画像

M-1グランプリ予選動画感想 予選1回戦1通過コンビまとめ後半戦【8/27~10/5】

 M-1グランプリのYouTubeチャンネルにて、8月27日から10月5日の間に行われた予選1回戦でそれぞれ1位通過した全33組を続けて見れる動画が公開されました。8月1日から8月25日の動画と同様に、その動画と、それからこれまでに書いてきた1位通過組の感想を改めて載せてみました。ちなみに、前半戦は以下のリンク先にございます。

 後半戦の感想も前半戦同様、需要がないのに供給している感じですが、よろしければご覧ください。

1.ヨッフィー

 スカパー!のプロデューサーとディレクターのコンビのようで、検索するとYouTubeチャンネルが出てきます。プロデューサーの川原崎さんはNSC在学経験もあるとのこと。ディレクターの岡田さんもそっち方面の経験がありそうでした。
 スターウォーズの話をするも節々がおかしいネタです。
 自信満々に説明するボケと、それを平坦なトーンで淡々と指摘してゆくツッコミが対照的なコンビです。特にツッコミの相槌の打ち方がうまく、その上手な相槌のリズムで短いツッコミをポンと入れているのが聞きやすかったです。

2.さすらいラビー

 太田プロダクション所属の凸凹コンビ。大学生時代に学生お笑い大会で知り合いコンビを結成し、そのままプロへ。昨年のM-1では初めて準々決勝に出場しています。
 林間学校で好きな子と山登りをしてテンションが上がってしまいキモいことをたくさんするネタです。
 最初の笑いどころ、いわゆるツカミの部分でキチンとウケると同時に、どういうネタをするのかを観客に察知させているところがよく考えられています。背が高くてそれなりにちゃんとした格好なのにキモいキャラなのは珍しい特徴ではないかと思います。

3.コマンダンテ

 結成14年目。ふたり揃って静かなしゃべりが持ち味のコンビです。
 カップラーメンの食べ方がおかしいと互いに指摘し合うも、どっちも間違ってるネタです。
 言い合う間にボケとツッコミが細かく入れ替わってゆく形式です。静かな言い争いが自然で、「え?」「は?」みたいな細かなセリフがポンポン飛び交うんですが、同じトーンで出てくる笑いどころはちゃんと分かるようにできています。

4.TOKYO COOL

 元「赤いタンバリン」「浜風キット」のカンカンさんと元「こんらんチョップ」「グーとパー」の前すすむさんのコンビ。結成は2015年ですが、年齢は40代後半。ここへ来てじわじわと注目されつつあります。
 ボケとツッコミは一応決まっているようですが、このネタに関して言えば、細かくボケとツッコミの立場が入れ替わります。また、ふたりでやる一発ギャグの直後にふたりでツッコむことも多く、同時にボケ、同時にツッコむような形も見られます。非常に独特な形式と言えます。

5.サルベース

 元「ポテンヒット」のふたりに元「オールドパー」のともやっぷさんが加入したトリオです。
 高校野球の監督が推薦入試の学生を選ぼうとするも異なるタイプの天才がふたりやってくるネタです。
 コントメインの漫才であり、ふたりの天才の対照的な部分をいじっていく形式でした。

6.スクランブル

 札幌吉本所属のコンビです。養成所ではなくオーディションで入った模様。
 彼女と遊園地デートに行くネタです。
 元気でハキハキしゃべり、いろんな動きがあり、モノマネがあり、もちろんボケとツッコミがありと、なんか久々にこんな真っすぐな若手漫才師感のある若手漫才を見た気がします。変にひねるだけがお笑いだけではないと痛感させられます。

7.土佐兄弟

 兄弟コンビです。TikTokやYouTubeの映像で話題になりました。
 修学旅行の話になるも、修学旅行で絶対にやらないような言動の人ばかり出てくるネタです。
 高校生のあるあるネタで名をはせたふたりが、学校でありえないようなことばかりするという点がネタの肝になっています。よくよく考えれば、ありえないことをやるのは本来のボケなんですけれども、自分たちがあるあるネタで有名になったところを逆手に取ることで本来のボケに少々異なる意味合いを持たせています。

8.太鵬

 こちらも今年結成。元「ナミダバシ」の太朗さんと元「バガリア」のがえちゃんさんのコンビです。
 美容院に行くも美容師がいろいろと間違っているネタです。
 基本的にはオーソドックスなコント漫才です。時々、長めのセンテンスを一気にしゃべるツッコミが見られます。

9.ウエストランド

 2020年のM-1では決勝進出経験があります。
 生活している中で腹の立つことを言い合っているうちに、だんだんおかしなことになっていくネタです。
 ボケの「腹立つこと」が初回から明らかにおかしいのですが、2回は泳がせます。この2回が重要で、ボケのおかしさが人によっては1回では気づきづらいわけです。事実、笑い声がそこまでない。そこで2回泳がせることで観客に何となく変な点を認識させ、3回目に分かりやすくおかしなことを言い、そこで初めてツッコミを入れます。このツッコミも絶妙で、まずボケの言ってる腹が立つことがただの犯罪であるという、明らかにおかしな点をハッキリと指摘します。しかし、「犯罪だって腹が立つでしょ」という反論が飛んできて、ツッコミはおかしな点をニュアンスで理解してもらうような、抽象的なことを言うんです。論理的には正しくないかもしれないけど、気持ちとしてはよく分かる言い回しとでも申しますか。最初に明確なツッコミを入れたあとで、ニュアンスのツッコミを弱々しく入れるところが非常にうまいです。
 後半はボケの「腹立つこと」が明らかに変化し、そこからいわゆるコンプライアンスや多様性をいじるネタへ移行します。それらを明確に攻撃するようなことはせず、むしろ理解を示すような話に持って行ったと見せかけて、コンプライアンスや多様性の盲点をバシッと突くわけです。しかも、みんな薄っすらと思ってたんだけどなかなか言わなかったことを、そんなに過激でない表現で言ってのける。もちろん、本人たちのキャラクターを熟知し、自分たちならこのような言い方が一番いいと検討した結果だと思われます。短いネタ時間の中でかなりの要素を詰め込み、だからと言って詰め込んだ感のないネタに仕上げているのも注目です。

10.TCクラクション

 キングオブコントでは準決勝の常連、M-1でも昨年は初めて準々決勝に進出しました。
 音階だけ言って曲名を当てる「音階クイズ」を展開するも、出題者の不備を突かれるネタです。
 観客に何となく違和感を感じさせるようなクイズを続け、しばらくしてからバシッとツッコむところがうまくいった時点で勝ったも同然でしょう。最初のツッコミまでの過程でうまいのは、違和感を抱いていた観客はもちろん、特に違和感を感じていなかった観客にも「あ、そう言えば」という笑いを生むところでしょう。また、自然な流れで別の話題へと移行し、それを伏線として最後にうまく回収するなど構成がしっかりしています。無駄な説明じみたセリフもなく、スッキリしている点も大きいです。

11.センチネル

 太田プロエンタテイメントカレッジ11期(2017年4月入学)同士のコンビ。ボケのトミサットさんは両親が日本人とウガンダ人です。
 不良に絡まれている息子を助ける父親というネタです。
 いわゆるハーフと呼ばれている芸人が増えてきており、それでも自身の外見を使ったボケは全然通用するわけです。ただ、それだけではもうM-1を勝ち抜けはせず、漫才そのもののクオリティが求められる時代に入っています。
 センチネルはまずボケは他のキャラクターにも慣れていますし、しゃべりも動きも達者で、使い分けもできており、ハーフネタはアクセントで用いていますが、なくても勝負できるようなネタになっています。ツッコミは相槌の打ち方が小気味よく、分かりやすくも端的で非常に的確なツッコミを安定してできており、相方のボケを全く邪魔せずに面白さを増幅させています。無駄な説明もありません。コンビとして見ても「トー横キッズ」という単語が分からなくても面白さが理解できるような話にしているところからも単語の知名度に対する感覚がよく、単純に掛け合いが上手です。

12.リニア

 一度解散するも再結成、コンビ歴は14年目です。
 ビジュアル系バンドをやりたいという相方にいろいろダメ出ししていくネタです。
 ツッコミが最初はビジュアル系を否定するだけだったのに、徐々に的確なアドバイスに変わり、いつの間にかものすごくやる気になっているかのようなところまで行く流れが秀逸です。ツッコミに熱がこもればこもるほどビジュアル系へ前向きになっていくのがうまくいった印象です。最後のオチもいい感じだったように思います。

13.コウテイ

 ボケの動きとツッコミしゃべり方が特徴的なコンビです。ABCお笑いグランプリ優勝経験があります。
 ナンパのやり方を披露するネタです。
 背の高い女性にナンパするというオチを2回繰り返すわけなんですが、1回目は最初の声掛けの際、妙に視線が上だったり、手を握る位置が高かったりと何気ない動作が伏線のように作用していて、芸が細かいんです。バカバカしいことを適当にしているようで、細部までちゃんとしています。だから評価されているのでしょう。

14.デルマパンゲ

 出身地である北九州弁を操るコンビ。ここ数年は準々決勝の常連です。
 500円硬貨が5円硬貨や50円硬貨のように穴がないのはおかしいと言って穴を開けようとするネタです。
 硬貨の加工や印刷などの犯罪行為をテーマにした攻めたネタです。ただお金を加工するだけでなく、他の硬貨と合体させ、硬貨を紙幣にして更に硬貨へ戻すなどの発想が光っています。内容がギリギリなため、評価が大きく分かれそうではあります。

15.大乱ポゥ!ボマッシュブラ坊主!

 関西で活動するピン芸人3名によるユニットです。今回で4回目の出場です。
 電車でおならが出そうな人のそばに行って騒ぎ、音をかき消してあげるというネタです。
 本日の組の中で最も優れている点は情報整理であり、笑えるところ笑うべきところを明確に観客へ伝えている点にあります。舞台への入り方で自分たちがどういう芸風なのかを観客に伝えた上で、導入部ではこれから何をするのかキチンと説明し、舞台上で何が起きて、どこがどう失敗したのかが簡単に分かるようになっている。言うべきところで言い、言わないところは言わないというメリハリが効いています。それでいて、あれだけ騒がしいネタをしていながらひとりのセリフが実はゼロという、ツッコまれて初めて観客におかしさが伝わるような笑いも分かりやすく入れています。

16.祇󠄀園

 M-1では数少ない準決勝進出経験のあるコンビです。
 思いやりのある大人になるため、思いやりのある丁寧な言動をするも、それ以外が大体思いやりのないことになっているネタです。
 ヤバい人のヤバい感じがよく出ているのが、トップ通過の大きな要因となっているのは間違いないでしょう。それゆえに思いやりのある丁寧な言動が自動的にオチとして働く形になっています。もちろん、同じ形式を繰り返し使わず、明確に変化をつけていった点も大きいと思われます。

17.リップサービス

 かつてはオリジンコーポレーションに所属し、現在はフリーで活動されているコンビです。
 探偵が主役のドラマをやるネタです。
 犯人役はやりたくないというも、代わりに提示される役が全部犯人っぽいという、様々な推理もので散々やりつくされた「意外な犯人」をうまく利用したネタです。ツッコミまでの間隔がだんだん狭くなって最後にひっくり返して終わる形式をしっかりやってのけています。

18.しらんやつら

 NSC大阪28期(2005年入学)のコンビです。しらんやつさんとみおぼえがないやつさんのコンビで、みおぼえがないやつさんの旧芸名は「完全にイカれてるやつ」です。
 事故らないよう漫才で安全確認するもそれが作動せず事故るネタです。
 変形型すべり芸とでも申しましょうか。最初に「漫才で安全確認する」というシステムを提示し、事故る、すなわちすべることを前提としたやりとりを披露、その直後に再び安全確認をし、「事故ってるじゃないか」と言うまでが1セットです。
 すべったあとのやり取りで笑いを取る「すべり芸」は、当然フリとしてつまらないことをするわけです。そして、多くはダジャレだったりベタなボケだったり、もちろんリアルにすべったものだったりするんですが、この組の場合はシュールすぎてついていけないものばかりを提示してスベるわけです。要は「つまらない」というよりは「意味が分からない」が原因ですべる感じです。
 あと目新しかったのは、安全確認する過程で自分たちのボケとツッコミの意図を毎回バラしてしまうところです。「こういう意図でやって失敗した」みたいな意味合いがあるでしょうから、広い意味では自虐ネタに入ると思います。ボケやツッコミの意図を敢えてバラすやり取りがこれまでになかったわけではありませんが、ここまで毎度毎度、安全確認と称してバラしていくネタは見たことがありません。

19.べじぽた

 トリオ「GAG」から福井さんと坂本さんがコンビとなってM-1に帰ってきました。GAGが結成15年を超えてしまったため、このような形で参加したのだと考えられます。
 節分にやってくる鬼だけ追い払い、福だけを招き入れるよう、仕訳けていくネタです。
 初回からひねった鬼を持ってくるのはベテランならではの判断です。とは言いつつも、基本的には「あるある」の範囲内であり、それゆえにひねってはいるけど初めて見る観客にも伝わりやすいようにしてあると言えます。

20.カミナリ

 大振りで強く叩くツッコミで知られるコンビ。2016年と2017年のM-1では決勝進出経験があります。
 観客の前でする話じゃないことばかり話すネタです。
 カミナリの特徴であるツッコミは既に広く知られているため、「どこでどうツッコむのか」と身構えている観客もいるわけです。それゆえ、意外性を出したい場合は観客の裏をかく必要があります。過去のネタはツッコミの切り口に意外性を出し、ツッコミのタイミングに関しては意外性を意識していないように思えました。
 今回のネタは冒頭からボケが可愛らしい話し方をするなど妙な言動を交え、観客の前でするべきじゃない話を展開します。つまり、「話し方」と「会話の内容」で妙な感じを出し、どっちに対してツッコミが飛んでいくのか、観客が予測しづらい状況を作り上げています。実際、ボケの可愛らしい話し方はすぐにツッコまず、泳がせるという選択を取っており、観客に「いつあの特徴的なツッコミが来るか」という予測を困難なものにし、意外性を保つことに成功しています。

21.ミキ

 兄弟コンビ。M-1では2017年と2018年に決勝進出を決めています。
 記憶力を試すために円周率などを言うも、どさくさに紛れて個人情報をバラすネタです。
 本当に自然な会話がスムーズに続くコンビだと思います。大体は揉めるネタなんですが、リアルな揉めてる感を出す技術に秀でています。そうかと思えば、円周率などを適当に言っていると見抜く方式として相方の個人情報を入れ込むという発想も光ります。個人情報ならば適当だということが観客にも瞬時に分かりますし、笑いも取りやすい。見せ方も卓越しています。

22.ピカソ

 名古屋にあるお笑い芸人の事務所、どっかんプロに所属するトリオです。
 ハンバーガーショップのハンバーガーを自分でカスタマイズするネタです。
 ボケふたりがそれぞれオリジナルのバーガーを作り、それを受けてツッコミが発言をするという形式がメインとなっています。トリオ漫才ですと往々にしてボケひとりを遊ばせてしまう現象が見受けられ、この組でもそれが確認できるのですが、余ったボケがツッコミと同じタイミング、同じ動きでツッコむことで、人あまりを若干解消できています。

23.シュリンプ大統領(仮)

 所属はアマチュアになっていますが、ツッコミの伊藤さんは太田プロエンタテイメント学院名古屋校の3期(2014年入学)のようです。
 全身ピンクのおじさんについてリズミカルに話すネタです。
 名前も所属もネタも変則的なコンビです。ボケはひたすら独自のリズムでただただ全身ピンクのおじさんについて語り、ツッコミはそれに戸惑ったり驚いたりツッコんだりするという形式です。誰でもすぐに分かるレベルで特殊な漫才ですが、基本的にリズムは一定ですし、話はちょっとずつ進むようにしてますし、ブリッジのようなパートを定期的に設けているなど、観客を置いていかないよう、ネタを分かりやすく見せる工夫が随所に確認できます。ツッコミのしゃべり方もボケのリズムを邪魔しないように気を遣っています。

24.モンスターエンジン

 結成15年目。M-1では2度の決勝進出経験があります。
 公園で幽霊を見るも、それがティラノサウルスの霊だったというネタです。
 あんまり人とかぶらなそうなテーマをさらっと選んでいます。一貫していわゆるベタな状況からちょっとずらしており、例えば公園で出会った幽霊がティラノサウルスだったりとか、ツッコミも単にうるさいというツッコミからちょっとずらした「嘘の癖にうるさい」というワードを用いています。

25.さかもとと苺ちゃん

 ピン芸人のさかもとさんと苺ちゃんさんのコンビです。
 野球をしていたら近所の怖いおじさんの家のガラスを割り、謝りに行くネタです。
 今回の4組の中では最もストーリー性があり、ハートフルな面もあるネタです。いくつかの種類の笑いを狙っているものと思われます。「微笑ましい」とか。

26.アキナ

 M-1では2度、キングオブコントでは3度の決勝進出を決めたことのあるコンビです。
 地元の後輩の夢を諦めさせたくないという相談をするも、いつの間にか説教に切り替わるネタです。
 まず、相談をしているはずが気づけば相談相手に説教をかましているというシステムを観客に見せます。最初は一言だけキレて、徐々に説教の時間が長くなります。そして、観客に「相談から説教へ切り替わる」というシステムを理解してもらったとみるや、自分が出した案を相談相手にしゃべらせ、それを改めて自分が否定してゆくという、いわばシステムの応用を見せてゆきます。それが起承転結の形式にうまく組み込んでいるため、観客もシステムの複雑さの割にどこがどうおかしいのか簡単に理解し、笑うことができる。過不足ない漫才です。

27.おもち

 ピン芸人のほりおさんとさかもとさんのユニットです。
 大事な舞台に立つ日は朝に何をしているのかを見せてもらうネタです。
 縁起の悪い現象に出会うとカツ丼を食べて中和するというシステムを提示して、あとはそのシステムで遊ぶ構成です。縁起がいいのか悪いのか分からないもののチョイスはよかったと思います。ボケの独り言の多さをツッコむことでネタに厚みを持たせています。

28.鉛筆ドリル

 WCS33期(2020年入学)のトリオです。ひとりはギターを持っています。
 やりたいコントをやろうとするも、思うようにやらせてもらえないネタです。
 ネタに入らせてもらえないことを笑ってもらう形式です。邪魔する手法としてラップを含む音楽を用いたネタは珍しいと思いました。

29.宮下草薙

 独創的なネガティブ発言がネタでも平場でも強い草薙さんと、何気にこっちもいろいろと特徴的な宮下さんのコンビです。
 今更になってタピオカ屋を始めようとする地元の先輩に大金をねだられてあたふたするネタです。
 妄想じみたネガティブ発言が相変わらず独特で他の追随を許さず、またちょうどいいタイミングで急に理にかなったことを言い出すといった緩急をうまく使っており、相変わらず面白いです。この形式の漫才をやらせたらピカ一です。

30.カワタとざわお

 元「ブラットピーク」のモンキー・DH・カワタさんと元「アントワネット」のざわおオンザマイクさんのユニットです。
 元ソフトボール部ということを隠してデートでバッティングセンターにいくネタです。
 隠そうとしていることが言動の節々に出てしまうという笑いはもちろんこれまでにもありましたけれども、本当に元ソフト部だったのか、さりげなく出すのが非常にうまいです。ツッコミも説明しすぎず、かと言って言葉が足りないわけでもいい、ちょうどいいツッコミとなっており、何より会話のテンポが心地よいです。よくできています。

31.きみがすきだよ

 トゥインクルコーポレーション所属の越田Youさんとニュースタッフエージェンシー所属の早川パパさんのユニットです。
 スーパーの陳列が分かりづらいということで、独特の陳列にしたスーパーをするネタです。
 「発想の勝利」という言葉がふさわしいネタです。商品の陳列を商品名の五十音順にすることで起きる混乱を、うまくおかしい部分のみ切り取った格好です。もちろん、単に陳列の妙だけでどうにかするだけでなく、変な陳列のお陰でたまたま探しやすくなったり、クレーマーを商品扱いしたり、名称がいくつもある商品はオリジナルの名前をつけたりと、観客を飽きさせないよう様々な視点で奇妙な陳列のスーパーで起きる面白い場面を切り取っていっています。

32.さんぽ

 ビクターミュージックアーツに所属するコンビです。
 スパイ映画にありがちな、敵が2択を迫ってくる場面を用いたネタです。
 「2択を迫るも片方の選択肢が明らかに間違っている」というシステムをベースに、それを繰り返しつつ徐々に見せ方を変えてゆく形となっています。あとは演技で観客をネタに集中してもらえるように気を配っているように感じられます。

33.コロコロチキチキペッパーズ

 キングオブコント2015の優勝者。ナダルさんを中心に売れている芸人です。
 聞いた単語を全てお金関係の単語に変換してしまうネタです。
 独特なシステムを編み出すことも重要ではありますが、それをどう見せていくかも重要になります。この組の場合はナダルさんのキャラクターと組み合わせ、「売れてるアーティストの曲を聴くと(売れてるから)カネがちらつく」という導入部を設けることで観客が独特なシステムのネタへ入っていきやすいようにしています。

34.おわりに

 いかがでしたでしょうか。個人的には初めて知った組もいましたし、名前は聞いたことあるけどネタを見たことがなかった組もいて、いろいろ楽しませてもらっています。
 個人的に特によかったのは、音階クイズの穴を的確のツッコんだ「TCクラクション」、漫才に安全確認を取り込んだ特殊なネタを披露した「しらんやつら」、円周率を活用して相方の個人情報をバラそうとした「ミキ」、ソフト部の経歴をうまく漫才に練り込んだ「カワタとざわお」、陳列のおかしさをネタへと昇華させた「きみがすきだよ」です。「さすらいラビー」「ウエストランド」「センチネル」「宮下草薙」「コマンダンテ」「アキナ」などのネタも楽しませていただきました。当然ながら、あくまでも個人の感想です。

 今回の感想は以上です。ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?