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ストロングスタイル天日干し

 本当はいけないことだと、やってる本人も分かっているとは思うんです。ただ、事実として、私が昔、暮らしていた家のそばにある公園の低い生垣には、しばしば布団やマットが干されていました。恐らく、近所に住むどなたかのものなんでしょうけれども、「持ってかれたらどうしよう」なんて不安を微塵も感じさせない、ストロングスタイルの天日干しです。

 その公園はジョギングコースになっていたこともあり、ストロングスタイル天日干しは日常的に見られました。よくよく見ると、枕や上着、バスタオルなんかも干してある。ここまでくると思うんです。これ飛ばされてきたものと区別がつかないな、と。

 実際、公園の生垣には他にも手袋とか靴下とかが引っかかってたりするんです。でも、それらは何週間も回収されませんし、何より片方しかありません。どう考えても、落ちてたものを誰かが忍びなくなってそばの生垣に引っかけておいたに違いありません。それが結果的にストロング天日干しっぽくなってしまった。

 落とし物はたまにしか見られませんでしたが、ストロング天日は天気がよければ週に一度は目撃できました。10年くらいはその公園でジョギングしてましたが、頑なにストロン天でした。近隣住民から苦情が寄せられたこともあったでしょうし、病気や怪我に見舞われて気軽にストロングできない時だってあったに違いない。でも、挫けずにストロングを続けていた。

 誰が何を理由にそこまで継続したのかは知りませんし、本来やってはいけないわけですから、手放しに尊敬はできませんが、一種の凄さがあるのは確かです。

 いま私が住んでいるところには、スト天を貫く猛者はいらっしゃらないようです。ただ、落とし物はあるんです。片方だけの手袋に靴下、一度だけパーカーという大物に出くわしたこともあります。

 もう反射的に「うおっ、ス天だ」と思ってしまうんです。10年とは、それだけの時間なんです。スのある公園から離れて結構な年月が経ちましたが、未だに癖が直らない。

 特殊な行為は、赤の他人に特殊な癖を植えつける場合があるようです。皆様も特殊に手を染める際は、是非、頭の隅にでも置いていただければ幸いです。

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