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M-1グランプリ予選動画感想 予選1回戦 2022年8月19日開催分

 面白い芸人を収集して記録をしているという点では昆虫採集に近い気がしましたが、気がした時点で反論が5個くらい出てきたのでそういうことなんだと思います。少なくとも、M-1予選動画を見て何かを書いているのは間違いありません。

 今回はM-1グランプリ2022の予選1回戦、8月19日開催分の動画2本に登場した組のネタを見て感想のようなものを書きました。手短ではございますが、皆さんも宜しければどうぞご覧ください。

1.ナイスアマチュア賞 おかめと犬

 設定の可能性もあるため、自称という表現がつきますが、付き合っている男女のコンビです。M-1は3年連続3回目の挑戦です。
 喧嘩をしてまだ仲直りしていないという設定のもと、ひたすら漫談する男性を女性がひたすら無言で攻撃するネタです。
 ひとりが真面目にネタをし、残りがひたすら何らかの妨害をするシステムの漫才となっております。妨害する側が体格的に細く小さいため、ここは笑いやすい条件となっていると思われます。あとは、どのような攻撃をするかで笑いの量が変わることでしょう。最も判断に困るのは、股間を殴る際、明らかにファールカップっぽい音がしたことです。「ファールカップがあるから安心して笑えるね」になるのか、「ファールカップがあるなんてリアルじゃなくて笑えない」となるのか。時代背景はもちろん、会場や客層によっても変わりそうです。

2.予選1回戦TOP3

2-1.ワールドヲーター

 太田プロダクションのピン芸人4人によるユニットです。更にアイドル鳥越さんとパーマ大佐さんと組んだ「ホーリーオーギー」で歌ネタ王決定戦の決勝進出経験もあります。
 4人全員がいわゆるオタクのキャラクターになっており、基本的には4人中2人のキャラクターの濃さを競うネタです。
 漫才だとなぜか小道具を嫌がられる傾向にあるのですが、女性キャラがプリントされた枕を「娘」として登場させ、持ち主が「娘」も入れて5人で漫才をすると言い張ることで小道具を用いる必然性を得ています。
 また、漫才は3人以上だとどうしても1人を余らせてしまうことが多く、トリオ漫才は人余りをどう解消する必要が出てくるものです。ワールドヲーターの場合は、まず役割分担を明確にしています。「ツッコミ」「キャラが薄いほうの人(いわゆる小ボケ)」「キャラがヤバいほうの人(いわゆる大ボケ)」、ここまではトリオ漫才でもよく見られる形式ですが、更にもう1人を「ほぼネタの外側からダジャレを言うだけの人」にしています。他の3人がやっているネタを外からダジャレを放り込むわけですから、一応はネタにかかわってはいるのですが、立場としては「ほぼメタ視点」と言っていいでしょう。
 4人もいるんでトリオより「人余り感」を出す危険性は高く、実際、舞台上にもかかわらず棒立ちで待機する時間の長い人がいます。特に多いのは「大ボケ」と「ほぼメタ視点」、5人漫才として見るなら「娘」もそれに入ります。しかし、彼らにそれほど人余り感がありません。
 「ツッコミ」は発言数が多い役回りな上、この組では話の進行という役割も担っているので余る心配はありません。「小ボケ」はボケの中では最も常識人寄りのポジションなので、発言していない時にもリアクションを絶やさず、役目を終えたら舞台から去ってゆきます。「大ボケ」は登場時から「ヤバいやつ」だと観客も理解し、ただ枕を持って立っているだけでも「ヤバいやつだからそうしてるんだ」という、よく分からない必然性によって余ってる感がなくなります。「ほぼメタ視点」は最初の一言やツッコミで「ネタの外側からダジャレを言うだけの役割だ」「今後も彼はそういうことしかしない人だ」と観客に認識させ、しゃべらない時は直立不動でも許される立場にしています。「娘」に至ってはネタの核なわけで、「大ボケ」の腕に抱かれていれば動かずとも存在が許されます。以上の通り、4人または5人それぞれが別のやり方で人余り感を解消しています。
 多人数漫才の可能性を感じさせるネタでした。

2-2.怪奇!YesどんぐりRPG

 サンミュージックプロダクション所属のYes!アキトさんとケイダッシュステージ所属のどんぐりたけしさん、サツマカワRPGというピン芸人3人によるユニットです。M-1に出場しているユニットの中でも有数の知名度を誇り、ユニットでの仕事も多くございます。
 お辞儀をして頭を上げようとするも、3人の上げるタイミングがとにかく合わないネタです。
 一発ギャグなどを原材料にして独特なやり取りを構築し、それを使い倒す形式のネタが知られていますけれども、今回は「おじぎのタイミングが合わない」だけで2分半もたせました。もちろん、手を変え品を変え、おじぎを使いつくし、ラストはタイムオーバーの報せである爆発音を使ってひと盛り上がりさせるというダメ押しもあるなど、様々なものをつぎ込んだ結果です。

2-3.ストレッチーズ

 高校の同級生であり、大学のお笑いサークルで本格的にコンビとしての活動を開始、学生の大会での優勝したのちプロへ。最近ではツギクル芸人グランプリで優勝しています。
 女の子を紹介してもらおうとするも、「ふたりの芸能人を足して2で割る」紹介方法をぶっ壊したような説明ばかりするネタです。
 「計算式を括弧でくくらないため、おかしな表現になる」という理屈の要素が強いネタのためか、前半は笑いどころを減らしてでもゆっくり丁寧に説明する構成が印象的でした。ややこしい計算を一生懸命に説明し、理屈を組み立てたところで和田アキ子さんをドーンと持ってきて全部ひっくり返す。それにより「散々緻密にやっておいて最後これかよ」という笑いが爆発して終わることができました。

 今回の感想は以上です。ではまた。

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