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お笑い悪食の遺伝子

 遺伝に関する研究はもうここ何十年もの間ずっと盛んですが、両親からどんな子が生まれるか正確に予測できたという話を聞きませんので、まだまだ研究の余地があるのだと思います。ただ、やっぱり親とどこか似るというのは確からしい。

 母方の祖母はよく笑う方でした。そして、笑えるものが大好きでした。とにかく笑えるものは何でも笑っておきたい。そういう信条すら感じられました。彼女はよく私に最近面白かったことを教えてくれました。

「テレビを見てたら、アントニオ猪木じゃなくて、アントニオ小猪木って人がいたのよ。あと、アントキの猪木ってのもいてね」

 よっぽどツボだったのか、話してるそばから笑ってたんですが、当時既に70代だったはずです。もちろん調査したわけじゃないんで断言はできませんけれども、お笑いを好んで見る人ってやはり限られてきますし、昔から知ってるものに親しみを覚える人は多いですから、相当特殊な好みを持った70代だと思います。何だったら、私が誰かとアントニオ小猪木&アントキの猪木について話したのって下手したらこれが唯一ですし。

 母もお笑いが好きな人間です。普通の母親なら子供に見せるのをためらうレベルのバラエティすら子供と一緒に楽しむような人間ですし、何なら子供より笑ってました。猪木ズを語っていた頃の祖母の年齢へ徐々に近づきつつも、まだまだお笑いは好きなようです。

 先日、ちょうど帰省してたんで、M-1グランプリ2021決勝の動画を一緒に見ていました。母は決勝を見ていなかったそうなので、私、誰のネタが好きなのか反応をチェックしていました。

 一番笑っていたのはランジャタイでした。漫才としては傍流も傍流、いや傍流どころか、漫才かどうか論争する気力を根こそぎ持っていく濁流のようなお笑いです。母は「くだらない」「小学生より小学生」「見てるだけで疲れる」とか言いながら腹を抱えて笑ってました。

 「笑えるなら何でもいい」みたいな、うまければ土でも平気で食うレベルのお笑い悪食人間になるのは生まれた時から決まっていたのだと私は理解しました。

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