役所の書類に記入例がある場合がございます。名前の欄にはその自治体名を名字に持ってきて、名前を太郎または花子にするパターンが最も一般的だと思われます。
特定の名字を例に使うとなると、どの名字を使うかで小一時間会議する羽目にもなりかねませんし、なんでこの名字を使ったのかという市民からの問い合わせにも対応せねばならない。地元自治体の名前を丸々使えば、会議はいらないし問い合わせはない。だから、選ばれているのでしょう。
しかし、世の中にはいろんな名字があるものです。自治体の名前を名字に持つ人がいてもおかしくはない。じゃあ、どの自治体の名字が存在するのか。こういうのは気になった者の負けなので、敗者の私は素直に調べました。
というわけで、都道府県と市区町村、ついでに郡と同じ名字を調べました。読み方が違っても字が同じならばよしとしてあります。
名字の存在確認は名字由来netというサイトを使いまして、出てきた順位と人数を載せました。東京23区以外の区は市名も併記しました。
たまに順位と人数が「調査中」となるものもありましたが、その名字は今回のところは存在が確認できなかったとして、集計しておりません。
ひらがな表記の自治体につきましては、名前の元となった漢字に変換して調査しました。その場合、漢字変換したものをカッコ書きで表記しています。
また、全自治体&郡の合計数と、そのうち名字の存在が確認できたものの数とその割合、更には100人未満の激レア名字の割合も各都道府県ごとに、以下のような形でまとめてあります。
数が膨大になってしまったため、地方によって分けました。今回は中部地方です。では、参ります。
1.新潟県
新潟県は全都道府県の中で5番目に広いですが、それに比べると自治体や郡の数は少ないです。名字ありの割合が特に少なく、これは蒲原関係と魚沼関係に大きな原因がありそうです。蒲原の頭に東西南北がくっついた郡が4つ存在し、いずれも名字なし。魚沼は単独なら激レアながら名字の存在が確認できましたが、頭に南とか中とかがつくと、途端に名字なしとなります。
最高順位は村上の37位です。南や西がそれに続きます。ちなみに、区に比較的多い東西南北ですけれども、いずれも名字が存在し、比較的高い順位になっています。新潟市の区は東西南北がコンプリートされていますが、今一度ここでまとめてみます。
多い順に東、南、西、北となっています。
東西南北の他に中区を設けているところもあります。ついでなんで上中下それぞれの名字を確認してみました。
こちらは中、上、下の順です。ちなみに、「中央」は名字の存在が確認できておりません。
2.富山県
富山県は郡と自治体の数が全国で最も少ないです。面積としては33位で、小さいほうではありますが、極端に小さいわけではありません。激レア名字はふたつのみですが、そもそも母数が少ないため、激レア率はちょい少なめくらいのポジションです。一方で、名字ありの割合は高めです。郡に存在する新川一門がなければもっと順位を上げられたでしょう。ちなみに、中新川、下新川の他に上新川もあったのですが、こちらは2005年に消滅しています。
最高順位は高岡の578位ですが、これは全都道府県の中で最も低い記録です。最高順位が最も低いってよく分からない表現ですが、事実ですから仕方ありません。人数の多い名字はそこまでないけど、人数の少ない名字もそんなにないという特徴になっています。
小矢部のようにもともと存在する名字の頭に大中小がつくパターンもしばしば見られます。大小がくっつくと人数が減る傾向にあります。小矢部さんを例にするとこんな感じです。
3.石川県
石川県も富山県と同様、自治体と郡の数は低調ですが名字ありの割合が高く、激レア率は母数の少なさが影響してそこそこ、という感じになっています。ちなみに面積も富山県33位に対して石川県は35位と似たような位置にいます。
最高順位は石川の26位です。県がトップを張るところは少なく、更に石川県の場合は県内に同名の市区町村と郡が存在しない点で特殊ではあります。ちなみに、石川県外で石川を冠した郡や自治体として福島県の石川郡石川町があり、また現在は合併により消滅していますが沖縄県には石川市が存在していました。
ちなみに、宝達志水は宝達山から取った宝達と、合併前の町名「志雄」「押水」を合わせた志水を組み合わせた、やや複雑な生まれを持つ名前であり、名字の存在は確認できませんでしたが、宝達と志水に分けるとどちらも名字が確認できます。
ついでに合併前の町名も調べてみました。
4.福井県
福井県は名字ありの割合が際立って高いという特徴があります。自治体と郡の数が少ないこともあり、名字の存在が確認できなかった自治体と郡は3つしかありません。
最高順位は吉田の11位です。他にも池田の23位、大野の71位、福井の195位など、少ないながらも上位勢が揃っています。
ちなみに、丹生は今回の調査で登場した名字の中で異なる読み方が最も多いです。ちなみに、以下の通りです。
ざっと28種類の存在が確認できています。福井県に存在するのは「にゅう」読みです。
5.山梨県
激レア率以外は概ね低調なのが山梨県です。面積も32位で人口は42位のためか自治体と郡の数が少なく、更にふたつの単語が組み合わさったパターンと、もともとある名前の頭に東西南北や中がつくパターンを乱れ打っているのが大きな原因と思われます。
最高順位は早川の170位です。こちらも最高順位としてはあまり高くありません。ちなみに激レア率は比較的多めで、中でも西桂はもとある単語に頭に東西南北がついているような形をしているのに名字が存在しています。町の名前は「にしかつら」、名字として確認できている読み方は「にしけい」のみのようです。
6.長野県
長野県は自治体と郡の合計数が北海道に次ぐ2位となっています。都道府県でも面積が4番目と広く、何よりもたくさんの村が存在している点が特徴となっています。ただし、郡を中心にもともとある名前の頭に東西南北や上下のつくパターンが多いため、名字ありの割合は低くなっています。激レア名字の数自体は多いですが、母数の多いため激レア率も低いです。
最高順位は松本の15位です。他にも池田(23位)、小川(30位)、青木(39位)、中野(49位)、中川(52位)、上田(61位)、原(62位)と上位陣が充実しています。激レア率は低いものの、先ほども述べた通り数はあり、軽井沢のような有名どころから天龍のような「名字あるんだ!」と驚けるもの、更には喬木のような難読まで揃っています。
野沢温泉はさすがに名字として存在していませんが、野沢はもちろん、温泉も名字が確認できています。
7.岐阜県
岐阜県は広さが都道府県の中で7番目と広いため、自治体と郡の数は多いほうですが、名字ありの割合は低く、激レア率も低調です。名字なしの大きな理由である「頭に東西南北または上中下がつく」や「ふたつの単語が合体している」などのパターンは少なく、純粋に名字の存在しない名前になっているものが多いのが特徴です。瑞浪さんとか八百津さんとかいそうなんですけど、存在が確認できていない。何度か書いてますが、名字は本当に分かりません。
最高順位は池田の23位です。池田は全国にひとつの市とみっつの町が存在しており、重複の度合いとしてはかなり激しいほうです。区にありがちな東西南北を除けば、池田以外に重複が激しいのは中川(区1、郡2、町1、村1)や日高(市1、郡2、町2、村1)などごくわずかです。
ちなみに、岐阜さんも激レアながら存在しています。都道府県と同じ表記の名字としては東京に続いて2番目にレアとなっています。
8.静岡県
静岡県は物凄く多いとか非常に少ないとかいう特徴がなく、真ん中よりちょっと多かったりちょっと少なかったりしています。ちなみに面積は13番目に広く、人口は10番目に多いです。やっぱり真ん中よりちょっと多いくらいです。
最高順位は吉田の11位です。清水の20位、森の22位がそれに続きます。ちなみに、浜松市は区の名前に東西南北が全て揃ってますが、静岡市は東西南北が全くありません。なかなか興味深い違いです。
長野県の天龍に対し、浜松には天竜がございます。どちらも激レア名字の存在が確認されています。
9.愛知県
中部地方で最も人口の多い愛知県は区の多さも手伝ってか自治体と郡の数が多く存在しています。名字ありの割合はそこそこ、激レア率は真ん中あたりです。
最高順位は中村の8位です。これは全体でも2番目に高く、区の最高順位でもあります。中川の52位がそれに続きます。
ちなみに設楽は丹生ほどではないにしても読み方が多い名字です。具体的には以下の読み方が確認されています。
ざっと15種類です。愛知県に存在するのは「したら」です。
10.終わりに
いかがでしたでしょうか。思ったよりも多くの自治体が名字として存在していたと思います。日本には本当に多彩な名字が存在するんだなあと驚きました。
それでは、今回はこんなところで終わります。次回は近畿地方の自治体名字をご紹介します。