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長生きすると相続がややこしくなるようです

 大きな書店に行ったら、なんか不思議な単語が並んでいる本を見かけたんです。

 代襲相続、再転相続、数次相続。不思議すぎて、つい調べてしまいました。

 代襲相続は、もともと相続する人が亡くなってしまった場合、亡くなった人の子供が代わりに相続する状況とのことです。

 再転相続は、相続する人が遺産などを相続するかどうか決めないまま亡くなってしまった場合の相続を指すようです。

 数字相続は、いくつもの相続が立て続けに起こり、ひとつの相続が終わらないうちに次の相続が始まるケースみたいです。

 確かに、親の遺産を素直に相続するよりも明らかにややこしそうな事例ばかりです。そりゃあそれ専門の本もでますわな、なんて思ったんですが、調べてみたところ最近になってそういう本がチラホラ出るようになったみたいなんです。どうしてなのか詳しい人に聞いてみたら、単純明快な答えが返ってきました。人が長生きするようになったからだそうです。

 人が長生きするようになると、どうしても親より先に子が亡くなる可能性が高くなります。そんなバカなと思いましたが、冷静になって計算してみますと、親が100歳を越えれば、子供だって70歳とか80歳とかになる。日本人の平均寿命は男性が81.05年、女性が87.0年と考えると、確かにあり得る状況です。

 「お母さんが生きてるから自分も頑張ろう」と思ったって、寿命はなかなかどうにもなりません。結果として、親の遺産を相続する前に亡くなる場合が出てきますし、時には相続するかどうか決める前に亡くなる場合もあるでしょう。父の後に祖母が亡くなって孫に相続が連続することがあってもおかしくない。

 どんなものだっていい側面とそうでない側面があるでしょうけれども、長寿という一般的にはおめでたいイメージのあるものだって、おめでたいでは片づけられない側面が出てくるものだなあと実感いたしました。

 現在起きているレベルの高齢化でもこれです。人類がうっかり不老技術を習得してしまった暁には、もっとややこしくなるに違いありません。不老になったって事故はありますから、不死は免れない。でも、亡くなる率はグッと減りますから、相続となると現在の比ではないレベルでややこしくなります。

 そもそも続柄からして大変です。大抵は祖父母、父母、子、孫くらいで何とかなっていたのが、それじゃ収まらなくなります。ウィキペディアの「続柄」を見ると、祖父母の上は曽祖父母そうそふぼ、更に上は高祖父母こうそふぼというものがあり、孫の下には順に曽孫ひまご玄孫やしゃご来孫らいそん昆孫こんそん仍孫じょうそん雲孫うんそんがあるようです。見慣れない単語のせいか、三国志に出てくる武将みたいな続柄です。でも、人類が不老になれば、それじゃ収まらなくなる。

 そこに相続の話が来るから訳が分かりません。「15代上の男性が事故で亡くなったけど、11代上の女性と7代上の男性が既に亡くなっている」みたいな現象が当たり前のように起きる。

 じゃあ不老不死になればいいじゃない、という話ですが、そもそも亡くならないとなると相続の仕事自体なくなってしまいます。不老不死は特定の業界を潰すことになりかねず、それはそれで問題です。

 確か、水木しげるさん辺りが「今の人は昔から考えたら極楽みたいな世界に住んでいるけど、でもみんな悩んでる」みたいなことをおっしゃっていたような気もしますし勘違いな気もしますが、少なくとも人類の見果てぬ夢である不老不死が実現したとしても、それはそれで面倒な事態になりそうですね。

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