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何の味を共有しているのかと

 自分が感じた味を誰かと共有できるシステムを開発したというニュースがございました。

 誰かが食べたおいしい高級肉の味を自分も味わえる。随分と夢のようなお話でございまして、未来が着実にやってきていることを実感するニュースです。

 しかし、同時に我々は新しい技術でいらんことをする人がいると知っています。インターネットが世に広まり始めた頃には怪しいサイトや怪しいメールが大量発生していましたし、生成AIが話題になるのとほぼ同時にAIを使って嘘をつきまくる人が現れ、今も問題視されている最中です。

 その昔、「フューチャー・クライム」という本を読んだんです。

 印象的だったのは、悪いことする人の中にも、新しもの好きで、なおかつ能力のある方がいらっしゃる点です。新しもの好きだから、常に新しいものがないか世界中チェックしていますし、「これは」と思うものを見つければすぐに取り寄せる。そして、能力があるもんだから、新しいものを手にしたら「これでどんな悪いことができるだろう」と考え、悪いアイデアを思いつき、実行に移してしまう。そんな先駆者を見て、後続の人間も日々の活動に新しい技術を取り入れていき、新しい犯罪が徐々に広がってゆくみたいなんです。

 つまり、新しい技術が世に出た時点で、新しい犯罪が生まれてしまう可能性がある。それはもう、自然現象のように必然な話のようです。

 冒頭で紹介した、誰かが食べた味を共有できるシステムも、そのうち誰かがいらんことを考えるはずなんです。こんなことを書いている間にも「うんこの味を共有させたらどうだろう」とか、アホなアイデアが生まれている最中かもしれません。嫌がらせのために自ら食糞する人が世にどれだけいるのかは知りませんが、味を共有するシステムなんですから、そういうことを敢えてする特殊な人類もいらっしゃるに違いない。

 うんこを口にする最大の問題点は桁外れの汚さにございます。身体に悪いものが大量に詰まっておりますから、口に入れたら体調不良は必至です。世の中にはそんなリスクを背負ってでもパクつく猛者がいるらしいと聞いておりますけれども、やっぱり体調不良になったりならなかったりしていると思うんです。でも、このシステムを用いれば、ひとりを除いた多くの人間が、リスクを背負わずに味わえる。つまり、非常に特殊な趣味の方々の身体を労わることにも繋がるわけです。

 味覚共有システムをフューチャーなクライムに使われたらどうなるんだ、みたいな話を書いているつもりが、より安全に特殊な趣味を楽しめる方向に話題がそれてしまいました。またうんこでテンションが上がるあまり話の筋をバキバキに折ってしまったようです。

 私の精神年齢はなかなか大人になってくれません。誰か助けてください。

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