見出し画像

M-1グランプリ2023予選動画感想 3回戦11月8日その3

 M-1予選の時期になると、備忘録的な感じで感想を書き、書いたら書いたで勿体なくなってネットに載せるという癖が毎年蘇ります。そして、今年も蘇らせてしまいました。よろしくお願いいたします。

 今回はM-1グランプリ2023年の11月8日に開催された予選3回戦動画に登場した芸人の感想となります。なかなかのボリュームとなっておりますが、よろしければどうぞご覧ください。


1.素敵じゃないか/チュランペット/マテンロウ

1-1.素敵じゃないか

 賢いクラスメイトの話をするネタです。
 非常にストーリー性があって分かりやすく、更に話の流れで自然と出てきた「乱」と「変」の違いを効果的に使っています。例えば、冒頭ではネタに興味を引く役割と共に登場人物の賢さを端的に示すという、複数の役割を果して効率をよくしています。当然ながら「乱」本来の意味を観客に教えることで、中盤以降に「乱」という短い言葉で効率的にウケを狙う布石にもしていますし、「らん」を異なる意味で用いて笑わせる下地も作っています。

1-2.チュランペット

 活気のある居酒屋をやってみるネタです。
 注文を受けた時の掛け声をひたすらやっていく独特な形となっています。後半は、やたら長いひとつの掛け声の合間に細かい掛け声を混ぜてやり過ごす姿で楽しんでもらう形となっています。

1-3.マテンロウ

 ハーフ芸人の卒業式をやってみるネタです。
 自分を含めたハーフ芸人をひたすらいじり続ける形となっていますが、狭いジャンルと思いきや手数が多く、全く外していません。ベテランハーフ芸人という立場をうまく使っています。

2.おとぎばなし/なにわプラッチック/ナイチンゲールダンス

2-1.おとぎばなし

 合コンで一人ぼっちにならないよう練習してみるネタです。
 合コンでネタを披露して微妙な空気にするも、そのネタに応じて女性といい雰囲気になるという、独特なシステムを繰り返す形になっています。終始、ほのぼのとしたしゃべりではありますが、突如としてお笑いのマジな仕組みをポツリこぼしたりとなかなか油断できないネタでもあります。

2-2.なにわプラッチック

 いわゆる「メンヘラ」について語るネタです。
 上記動画ではほとんどがカットされておりますが、すかさずYouTubeがお勧めしてくれた動画が代わりに使えそうなので、以下動画を参考に致します。

 「メンヘラ」についてよく言われている事柄をいじりつつ、徐々に自身が「メンヘラ」っぽくなっていく形となっています。テーマはやや際どいですけれども、形式としては王道寄りであり、それによってバランスを取っているものと思われます。

2-3.ナイチンゲールダンス

 居酒屋の店員をやってみるネタです。
 オーソドックスなテーマで、構成も王道寄りではございますが、ボケがアホっぽく、ツッコミがしっかりという位置が基本ではございますが、それがしばしばひっくり返ることで変化をつけているという特徴がございます。ボケの声質が、急に変な言動をしても自然に聞こえる点も強いと思われます。

3.モグライダー/オズワルド

3-1.モグライダー

 マイケル・ジャクソンの動きを用いた「マイケルじゃんけん」をやるネタです。
 自分で考えたオリジナルゲームのはずなのに自分がまず理解しておらず、ごちゃついている様子を笑ってもらう形になっている。どこまで本当にごちゃついているのか分からないため、敢えておかしなことをやろうとする時にどうしても出がちなあざとさが見られない特徴がございます。人はあざとさを察すると無意識のうちに笑いづらくなる傾向にあるので、あざとさが出にくいのはかなりの利点です。

3-2.オズワルド

 死んだら自分の骨をチャーハンに混ぜてほしいとお願いするネタです。
 海への散骨をお願いするツッコミをフリにして、チャーハンに混ぜてほしいとお願いし、話がこじれていく形になっています。ボケが明らかにヤバい考え方ではあるんですが、決して取り乱さない穏やかな話しぶりが「ヤバい人はヤバい人なりの理屈がある」を体現しており、妙な真実味がございます。その真実味だけでも笑いには繋がるんですが、ツッコミがおかしいところを独特な切り口で指摘し、下手すると引かれてしまうテーマでも無事に笑いへ変えていっています。

4.キュウ/ひつじねいり/令和ロマン

4-1.キュウ

 キャンディーのおいしい食べ方を考えるネタです。
 擬音のニュアンスに焦点を当てた形となっていて、説明を最大限省いている点が非常に特徴的です。表現がかなり縛られるシステムではございますが、そんな中でも至極当然のツッコミを場面変化で用いると共に大きなウケに繋げるなど、笑いを取れるようキチンと動き回っています。

4-2.ひつじねいり

 ラグビー日本代表を目指す相方を止めるネタです。
 冷静におかしなことを言うボケとそれを熱く止めるツッコミのスタイルとなっています。ただ、割と序盤から冷静なボケが熱くなり、熱いボケが冷静に止める、といったねじれた関係性が現れていきます。それが、終盤の取っ組み合いに必然性を生み出しており、観客もネタに入り込みやすくなっています。

4-3.令和ロマン

 オリンピックの100メートル走をやってみるネタです。
 明らかにヤバいドーピングしている選手がいる形となっております。冒頭、敢えて不自然な形でコントへ入ることで、ひとつ笑いを取りながらすんなりとコントへ入ることに成功しています。本編ではドーピングしている人の明らかなヤバさと裏腹に、他のランナーが概ね緊張感に欠けるという落差が笑いを生んでいます。

5.大仰天/まんぷくユナイテッド/スーパーニュウニュウ

5-1.大仰天

 街の消防団に入ってみるネタです。
 掛け合いをしながらストーリーが進む王道的な構成となっています。火の用心と似たようなことをバレずに言うところで勝負をかける動きが特に独自性の高いポイントだと思われます。

5-2.まんぷくユナイテッド

 女の子になってメンズ地下アイドルにハマってみるネタです。
 特定の世界に絞ったあるあるを中心として話を進めていく形でございまして、よく騒ぐ一般のファンと妙に落ち着いた古参ファンの対比を効果的に見せています。

5-3.スーパーニュウニュウ

 本当にやりたいことをやってみるネタです。
 本当にやりたいからと風俗をテーマにしたネタを始めてしまうという、ギリギリを狙ったものになっています。テーマはギリギリではありますが、実際の見せ方は確実に安全な範囲で動き、観客に安心して笑ってもらう形になっています。

6.ダニエルズ/ダイヤモンド/わらふぢなるお

6-1.ダニエルズ

 新しいキャラクターでやっていこうとするネタです。
 特定のキャラクターになりきって自己紹介をし、途中からは相方も別のキャラクターになることにより話に変化をつけています。

6-2.ダイヤモンド

 様々な物事の順番を略語で言っていくネタです。
 略語で行為の順番を言い終えた後、ツッコミが解説を交えながらツッコんでいくスタイルとなっています。観客はもちろん、ツッコミも一旦ミスリードさせておいて、その直後に予想を裏切るボケを披露することで、通常よりもひとつ多く、そしてより大きな笑いを起こしています。

6-3.わらふぢなるお

 電車の中でマナーの悪い人をやるネタです。
 電車内で音声認識による検索を試みるという、新しいタイプの「マナーの悪い人」とそのそばにいる人の風景をネタにしています。音声認識ならではの独特な形式を用いてはいますが、全体的に「どの検索ワードをどういう順番にするか」が重要となる構成で、検索内容の多彩さで単調になるのを防いでいます。

7.シャトーMK/セッツァー/かけるとぼん

7-1.シャトーMK

 ホストをやってみるネタです。
 両脇が交互にボケていき、それを真ん中がツッコんでいくスタイルで、ストーリーを進行していく形です。構成はオーソドックスなものとなっています。

7-2.セッツァー

 舞妓さんとお座敷遊びをするネタです。
 変わった舞妓さんに客が振り回される、オーソドックスな形となっております。原付が割と重要な位置にあるという特徴がございます。

7-3.かけるとぼん

 久々に動物園に行ってみた話をするネタです。
 「動物の本来楽しむべきポイントを全く見ない」というシステムで最後まで行くネタとなっています。見ているポイントが序盤は玄人目線だったのが、最終的にはただ女性が好きな人に変化しています。

8.マイアミバスケットボールクラブ/狛犬/バベコンブ

8-1.マイアミバスケットボールクラブ

 先輩に可愛がられるため、言葉遣いを矯正するネタです。
 ひとりが残りふたりの言葉遣いを次々に直していくわけですけれども、誰をどのタイミングで直すかに加えて、どういう方針で直すかに変化をつけて、話の単調さを防いでいます。各変化は限られたパターンを採用していますが、それを組み合せることで掛け算的にパターンが増えていく形を利用しているものと考えられます。

8-2.狛犬

 ジブリで一番好きなキャラクターがマイナーキャラというネタです。
 同じオチに繰り返し着地する形となっていますが、そこへ至るまでにいくつかのものに連続して言及していく独自システムを採用しています。オチに至る直前、様々なものに言及しておくことで、一度オチがあった後に振り替えってツッコむこともできるようになっています。

8-3.バベコンブ

 梅干しの種飛ばし大会に参加するネタです。
 ストーリを進めながら、予想を裏切るような言動を積み重ねていくスタイルとなっています。予想を裏切りつつも、話の筋から外れすぎない、ちょうどいいポイントを突いていっています。

 今回の感想は以上になります。ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?