パロディ書籍名収集記 「本当は恐ろしい〇〇」編
世の中、毎日のように膨大な本が出ていますけれども、中にはしっかりパロディしているタイトルがあるんです。確かに「二匹目のドジョウ」を狙ってはいますけれども、「これをパロディにしたらいい感じになるじゃないっすか」と見抜く力は認めるべきところでございます。
ただ、それにしたってドジョウを狙う人が多いんです。二匹目に留まらず、三匹目、四匹目と狙う人が後を絶たない。当然、その分だけパロディ書籍名は生み出されるんです。どんなものがネタにされ、どんなパロディが生まれているのか。単純に気になりました。
というわけで、暇な時間にネットで適当に調べていたんですが、それなりの数が集まったので、個人的に印象深かった書籍名を中心にnoteでご紹介しております。
調査には主にアマゾンの検索を使っています。ただし、電子書籍は個人による販売も多く、販売が終了するとサイトから消えてしまう場合があるなどの点を考慮し、基本的には紙で出版されているものを選んでいます。雑な調査かとは存じますが、軽い気持ちでお楽しみくだされば幸いです。よろしくお願いします。
今回、選んだタイトルは「本当は恐ろしい〇〇」です。というわけで、早速、「本当は恐ろしい」で検索したところ、最初に出てきたのは1998年に発売された「本当は恐ろしいグリム童話」でした。これがいわゆる本家だと考えられます。アマゾンでは2001年に発売された文庫版しか出てきませんけれども、サイトによっては初版のデータが残っています。
著者のウィキペディアによると、この書籍は250万部以上も売り上げたとのこと。
そのためか、以降、似たようなタイトルの書籍が出てくることとなります。確認出来た限り、最初の登場は雑誌「新潮45」の特集名であります「本当は恐ろしい日本国憲法」です。
ビートたけしさんの名前が併記されていることから、書いた方はたけしさんだと思われます。前出通り、2001年には文庫版が刊行、この頃からチラホラとパロディが確認され始めます。具体的には「サンタクロース」と「ハリー・ポッター」で、子供も親しんでいるものが実は、みたいな形のタイトルとなっています。
転機が訪れるのは2005年です。4月1日に「本当は怖い家庭の医学」が発売されます。
本家は「恐ろしい」ですが、こちらは「怖い」です。これ以降、「本当は怖い」のタイトルが増えていきます。ちなみに、「家庭の医学」はもともとテレビ番組でございまして、「たけし」はもちろんビートたけしさんです。「恐ろしい」「怖い」共に大事なところでビートたけしさんが関わっているわけです。
では、「怖い」勢力はどれくらい出てきたのか。ザックリとした調査ではございますが、グラフにしてみました。
このように、2009年から「怖い」の書籍がかなり出版されるようになり、2019年頃から落ち着きを見せています。一方、本家の「恐ろしい」は毎年0~2冊ずつ発売されています。とりあえず、以降は「恐ろしい」も「怖い」も一緒くたにしてご紹介して参ります。
具体的にはどんなものを「恐ろしいですね、怖いですね」と紹介しているのでしょう。ザッと見た限りですが、主にいくつかの種類に分かれます。
まず、本家のように「意外と怖いんですよ」となっているタイトルです。前出の「本当は恐ろしいサンタクロース物語」を始め、「本当は怖い世界の名画」「本当は怖い 星座占い」など、世間ではあまり怖いイメージのないものを取り上げるパターンです。
続いて、「本当は怖い家庭の医学」から脈々と受け継がれる医学・健康系です。「糖質制限」「人工甘味料」「下肢静脈瘤」「高齢出産」「ドライアイ」「めまい・耳鳴り」「不妊治療」「外反母趾」「低血圧」など多岐にわたり、「健康診断&人間ドック」なんてものもございます。誰しもが一度はよぎる不安、健康に関するものと「本当は恐ろしい(怖い)」は相性がいいのでしょう。
「本当は恐ろしい(怖い)」だけで、充分に恐怖感または不安感を宿らせたタイトルになるのに、更にダメ押しするパターンもございます。例えば、これです。
「本当は怖い」で恐怖をあおり、「殺人」でダメ押す形です。「生物」だけでも充分に意味は通じるはずなのですが、より分かりやすさを追求したかったのか、はたまた恐怖に恐怖を重ねる作風にしたかったのか、「殺人」まで追加しています。
こんな感じで恐怖を盛り付けるタイトルは他にもございます。
「怨霊」「怪奇手帖」「臓器解剖変異」「廃人レシピ」「血みどろのローマ帝国」などなど、単品でも充分に恐ろしい言葉ばかりです。「本当は恐ろしい」なんて強調する必要はなさそうですけれども、より目立つために「いやいや、もっとだもっと」との判断をされたのかもしれません。
恐怖の重ねがけパターンの中でも個人的に良かったのはこちらです。「本当は恐ろしい! こわい切手」。
「恐ろしい」派と「怖い」派が真っ二つの分かれる中、両方を取り入れたタイトルは調べた限り、これだけです。「恐ろしい」の直後に「こわい」を入れ込むとは。「分かった分かった、とにかく恐怖だったんすね」という畏敬の念を禁じ得ません。「なぜ切手」との疑問を挟む余地があるのもポイントが高いです。
ちなみに、今回のパロディは雑学とも相性がいいのか、とある出版社がシリーズとして長らく出版されていました。以下、発売年月日順に並べてみます。
タイトルの細かい変遷を見ていくと、なかなか興味深いです。
基本的には読み物が多いですが、「臓器解剖変異」のように専門家や実務家に向けたものでも使われる場合があり、シリーズになっているものもあります。それが「失敗から学ぶ実務講座シリーズ」です。
こちらは全12巻のようです。1巻から順に並べてみます。
タイトルを一部、端折ったんですが、それでも情報量の多さにいろいろ見失いそうです。ちなみに、11巻目は発売されていないのか、今のところ欠番状態になっています。
今回は以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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