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おびただしい曖昧な名前

 特に興味があって調べているわけでもないのに名前をチラホラ見るような人が、本当にブレイクしているんだろうなと思い込んでいるんです。ヨシタケシンスケさんもそのひとりだと思います。

 ヨシタケシンスケさんはイラストレーターであり、絵本作家としても知られています。私はイラストにも絵本にも詳しくなく、興味もそこまで持っていないんですけれども、ぼんやり生活をしていると、チラッチラッとヨシタケさんの姿なりイラストなりを見かけるんです。絵本やイラストに詳しい人から何度か名前を聞いてもいました。だから、本当に売れてる人なんだろうと思って調べてみたら、2022年の時点で累計発行部が約600万部、海外でも翻訳版が出版されているというわけで、やっぱりちゃんと売れていました。

 ただ、何となく見聞きしているんで、頭の中に入っている情報が曖昧なんです。ヨシタケさんに関する情報は全て平等にうろ覚えと言っていい。でも、困らないんです。なぜなら、接点がないからです。出会ってガッツリ話す予定も機会もない。そっち方面に詳しい人とヨシタケさんについて熱く語り合うわけでもない。だから、あやふやな情報しか持ってないまま放置しても特に問題は起きませんし、そもそもあやふやな情報しか持っていないことに気づいていないわけです。

 とは言え、ヨシタケさんは売れっ子です。だから、「ヨシタケさんの本を機会があったら読んでみてください」と言われる時があるんです。特に仕事と関係のないところで言われたんで、読まなくても大丈夫と言えば大丈夫なんですが、一応はお名前と作品名をメモしていたんです。そして、「読まなくても大丈夫」という事実に甘え、読むことなくメモだけ残る。それを2回3回と繰り返していました。

 もちろん、繰り返しているという自覚はあるので、申し訳ないなあとの気持ちは徐々に膨らんでいきます。3回目にしてようやく読もうと思い立ちました私、早速、メモを頼りに大きめの書店へ行きまして、備え付けの検索機で在庫を確認しました。しかし、いくら著者名で検索しても出てこないんです。

 何度やってもダメだったので、書籍名を検索してようやく目的の作品を見つけました。そこで気づいたんです。私、「ヨシタニケンスケ」という、架空の誰かの名前で検索していたと。メモを見間違えたのかと思ったら、メモはしっかり「ヨシタニケンスケ」でした。肝心の著者名を聞き間違えていたみたいです。

 ヨシタニさん、じゃない、ヨシタケさんの作品は無事に読めまして、普通に楽しめたのは良かったんですが、嫌な予感がして過去のメモを調べました。調査結果は以下の通りです。

1回目のメモ:ヨシタニシンスケ
2回目のメモ:ヨシタケシンスケ
3回目のメモ:ヨシタニケンスケ

 まさかそれぞれ異なる名前をメモってるとは思いませんでした。仮に私の腰がもっと重くって、4回目のメモでようやく読もうと思い立ったとしたら、4回目のメモは絶対に「ヨシタケケンスケ」になっていたに違いありません。そんな将来性を感じさせるメモ具合でございました。

 大体こういうことをやらかすと、「年のせいで記憶力が」みたいな自己嫌悪に陥りがちなんですが、私の場合は年齢どうこう以前に、本来の実力で記憶力が死んでるので、「まあそんなもんだよな」で済ませています。だから今も惨憺たる状況なんだと思います。

 ちなみに、今回のnoteを書くにあたってヨシタケシンスケさんについて軽く検索してみたのですが、ウィキペディアにおけるヨシタケさんの項目にこんなことが書いてありました。

キュウソネコカミのメンバー「ヨコタシンノスケ」とは異なります。

 そういう情報を新規にツッコまれると、新たなの記憶違いを編み出してしまうんですよ。こうした行為を繰り返し経た結果、私の脳内ではおびただしい数の曖昧な名前が日々大渦を巻いているのだと思います。

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